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先生は元オリンピック選手! 廃校になった小学校で開かれた、“世界でいちばん住みたいまち”の一日体験会「大東ピクニック」

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日本相撲協会から力士を招き「相撲健康体操」をする子どもたち。四股を踏むだけでも体のバランスが必要なのです。

大阪に「大東市」というまちがあるのはご存知ですか?

大阪城にも近いJR京橋駅から電車でわずか15分。浄瑠璃、歌舞伎、そして落語にも登場する「野崎参り」で有名な野崎観音(慈眼寺)があるまち。そして中世には三好長慶が城を築き、現在は人気のハイキングコースとして知られる飯盛山もあります。

自然がいっぱいでほどよく都会、とても住みやすいまちなのですが、大阪府下でさえその良さはあまり知られていません。

そこで、「大東をもっとアピールする方法はないものか」と企画されたイベントが「大東ピクニック」です。2015年11月7日(土)に、2013年度から廃校になった旧深野(ふこの)北小学校にて開催されました。今回はその様子をお伝えします!

まちをもっとハッピーにするプログラムをつくろう

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大東市長・東坂浩一氏の挨拶の様子。大東市は、大阪府下で初めて「手話言語条例」を制定したばかり。手話による同時通訳が行われていました。

「大東ピクニック」を主催したのは、まちづくり団体「大東倶楽部」。“健康になれるまち・幸せを感じるまち”をコンセプトに、「健康・スポーツ」「歴史・文化」「食・ガストロノミー」に関わるアクティビティ・プログラムを企画しています。

大東倶楽部による初めてのイベントとなった大東ピクニックでは、一般社団法人アスリートネットワークや大阪ガスによる「大東ピクニック実行委員会」も企画・運営に参加し、多彩なプログラムを準備しました。

舞台となったのは、2013年度で閉校した旧深野北小学校です。なつかしい昭和の雰囲気を残す校舎には朝から多くの老若男女が集まり、ひさしぶりの活気に包まれました。一番最初のイベントは体育館で行われる開会式。

大東倶楽部代表・大木久美さん、大東市長東坂浩一氏の挨拶、そして各プログラムの講師陣の紹介が行われました。
 
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大東倶楽部代表・大木久美さん。すべてのプログラムを巡り、参加者に親しく声を掛けておられました。

大木さん 大東にしかないもの・ことを体験してもらうために企画したのが、大東ピクニックです。本格稼働のときには、みなさんにもぜひ、私たちと一緒にオモロい企画を考えてほしいと思っています。

と、大木さんが言うとおり、大東ピクニックは大東倶楽部のキックオフイベントという位置付け。しかし、なんと18種類ものプログラムが用意されており、校舎もグラウンドも参加した老若男女で大賑わいの一日になりました。

それでは、主なプログラムのようすをご紹介しましょう。

トップアスリートに教えてもらえる!「健康・スポーツプログラム」

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まちづくりの基本はひとづくり。大東倶楽部では、4回のオリンピックを経験した陸上選手・朝原宣治氏が監修する「体幹強化トレーニング」や、全日本女子バレーボールを復活させた名監督・柳本晶一氏による「バレーボールプログラム」など、子どもから高齢者までが無理なく参加できるプログラムを開発しています。

「コオーディネーション理論」を提唱する荒木秀夫・徳島大学教授など、スポーツの専門家やトップアスリートの力を借りることで、市民の身体力のレベルアップと脳の活性化を見込んでいるのです。

今回の大東ピクニックではその体験版として、「朝原宣治氏の陸上教室」「義足のパラリンピアン山本篤氏と走ろう」「柳本晶一氏のバレーボール教室」、そして日本相撲協会から招いた力士による「相撲教室」などを開催。もちろん、子どもたちは大喜びでグランドに集まってきていました!
 
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朝原選手と一緒に走る子どもたち。

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山本選手からフォーム指導を受ける子どもたち。この後、全員参加のリレー競技が行われ、山本選手、朝原選手が走る姿にみんな大興奮!

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「どすこーい!」子どもたちが束になってかかっても、お相撲さんはびくともしません。ほんとに強い!

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リレーに参加する人たちを応援する人たち。グラウンドに笑顔が広がります。

また、スポーツはともに体を動かす人々の交流も生みます。子どもたちを応援していたおじいさんに話を聞くと、「うちの孫は学年で一番走るのが速くて、朝原選手に教えてもらえるのを楽しみにしていたんです」とのこと。お孫さんが走る姿に目を細めておられました。
 
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「トスは指一本でもできる。そっとやさしくボールに触れること」と実演する柳本氏。オリンピックにも出場した名セッターの実演に大きな拍手が沸きました。

荒木教授はこう言われています。「健康とは、たんに身体が健康というだけでなく、well-being (心身そして、頭脳ともに健全)な状態。人の傷みを知り、自ら歩き出せる人(創造性を持つ人)を健康な人という」。

これこそ、大東倶楽部が目指している「スポーツによる健康なまちづくり」の核となる考え方なのです。

大東はかつて日本の“首都”だった!?「歴史・文化プログラム」

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「蘆州のひと―大東は、かつて日本の<首都>であった」。大阪ガス提供により、関西に実在した知られざる偉人のドラマを朗読劇として公演する「イストワール」も上演。

大東市の東側に横たわる、なだらかな飯盛山。かつては飯盛城という大規模な山城が築かれ、16世紀半ばごろからは阿波の国の戦国大名・三好長慶の拠点でした。

三好長慶は武将として優れていただけでなく、城下においてキリスト教の布教を許し、経済都市としての堺に注目するなど、広い視野を持って政策を展開。「織田信長に先駆けた人物」とも言われています。
 
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歴史講座「飯盛城の楽しみかた―三好長慶が選んだ飯盛城の秘密」。飯盛城の鳥瞰図を再現した山本ゾンビ氏が城跡の見どころを解説していました。

でも、大東市民でさえこの歴史的事実を知らないのが現状……。そこで、大東倶楽部では歴史講座や演劇講座を企画。史実をなぞるだけの“お勉強”ではなく、それぞれの時代を生きた人の物語を、自らの想像力で紡ぎなおす場をつくろうとしています。

大東ピクニックでは、三好長慶とその三人の弟たちを描く朗読劇を上演し、歴史講座「飯盛城の楽しみ方」「三好長慶が生きた時代」も開講しました。

参加者からは、「飯盛山には登ったことがあるけれど、そんな歴史があったなんて!」と驚く声も。歴史の再認識は、新たなシビックプライドの構築にも一役を買いそうでした。

おいしさで笑顔をつなぐ「食・ガストロノミープログラム」

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“大阪もん”のおいしい野菜は奥さまたちに大人気!どの野菜も新鮮でおいしそう。

おいしい料理をつくって食べるだけでなく、そのプロセスや食事をする空間を含む食文化そのものを考察することを、ガストロノミーと言います。食べることは人を元気にし、「同じ釜の飯を食べる」とも言うようにともに、食卓を囲む人を打ち解けさせます。

大東倶楽部では、「世界でいちばん住みたいまち」を目指すうえで、食・ガストロノミーを重視。大東市民によるコミュニティキッチンや、大阪産の食材を使ったレストランなども検討しています。

今回の大東ピクニックでは、グラウンドの周囲にキッチンカーや、約200席ものロングテーブルを用意。元相撲力士たちがつくる本格的なちゃんこ鍋なども出店していました。
 
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色鮮やかなキッチンカーで買った食べ物を持って、ロングテーブルを囲む人の姿も多く見られました。

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「お店をやってみたかった」というお子さんたちと参加したご家族。

また、同じくグラウンドの周辺を取り囲んでいたのがリュックサックひとつで参加できる「リュックサック・マーケット」。出店料無料で、リュックサックにつめた「もう使わなくなったもの」「あげたいもの」を広げるだけという手軽さが魅力のフリーマーケットです。

「子どもたちのためにも、こういうイベントがあるのはとても嬉しいですね」と、ピクニック気分で参加する家族も多かったよう。どこか懐かしい、ほのぼのした雰囲気が広がっていました。
 
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「さといもは冷やすと傷むというのは本当?(本当です!)」など食に関するクイズに全部正解するママに「ママすごい!ママすごい!」と子どもたちも大興奮。

一方、校舎内で開かれていたのが「食育講座」。地元食材を使った特製ランチボックスが用意された「シェフとパティシエールのちょっとおしゃれな食育セミナー(「あまから手帖」提供)」は、ママさんたちに大人気でした。

講師は、地元の実力派シェフとパティエールが担当。大阪産の里芋や春菊を用いたサンドイッチやデザートに舌鼓を打ちながら、食材の知識や調理方法を学べる講座に、お母さんたちも大喜びでした。

これから「大東スタイル」を提案するために

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ロングテーブルでグラウンドを眺める参加者さんは近所の団地から。お目当ては「スポーツ・健康クリニック」で健康診断すること、そして大阪産のお野菜でした。

朝10時の開会式から始まった大東ピクニック。プログラムをはしごしていると、あっという間に終了時刻が迫ってきました。大東倶楽部代表・大木さんと大東市の東坂市長は、最後まで会場にいてプログラムを見守っておられました。

大木さん 一年以上前から「こういうことができたらいいね」という構想はありましたが、大阪ガスのみなさんやアスリートネットワークのみなさんのご協力をいただくことで一気に具体化。

本当に一流のアスリートの方たち、日本相撲協会から本物の力士の方たちが来てくださっているので、大阪府や奈良県から来ていただけるようにもっと早くに告知できたらよかった…というのが反省点です。

今後、地域のコミュニティ倶楽部として大東倶楽部設立に向けて、魅力あるプログラム開発と継続的な事業性を持たせられるかを検討していきたいと考えています。

大東がもっとステキに、もっと輝く「世界でいちばん住みたいまち」を目指して、私たち大東倶楽部はどこにもない大東でしか体験できないモノ・コト・トキがある「大東スタイル」を提供したいと考えています。

大東ピクニックは、まさに私たち思いを凝縮した第一歩です。その思いが少しでも皆さんに伝わったのならうれしいですね。

大東で始まっているのは、市民と地元企業、そして地域の課題解決に貢献する企業である大阪ガスと、健康・スポーツ、歴史・文化、食・ガストロノミーのトップパフォーマーが力を合わせて取り組むまちづくり。今後、地域創生の先進事例としても注目される可能性もありそうです。

人が暮らしている場所には、必ずそのまち・村を育んだ先人たちの物語があるもの。これから旅するまちのことを調べるように、自分のまちのことをもっと知ってみませんか? 大東の人たちのように「このまちに住む価値」を見つけられるかもしれません。

(撮影:苗代健志)