みなさんは“バタフライ・エフェクト”、という言葉を知っていますか?
元々は「チョウの羽ばたきが遠くの気象に変化を及ぼす」という気象学の用語で、今では「ほんの些細な出来事が、徐々に大きな現象の引き金になる」という意味合いで使われています。
今日はそんな、まさしく文字通りの”バタフライ・エフェクト”を世界中に巻き起こしているアートプロジェクト「White Butterflies」をご紹介します。
このプロジェクトを始めたのは、ネパールのアーティスト、Milan Raiさん(以下、ミランさん)。
ミランさんは、これまで「埃っぽく汚れて混沌としていた、ネパールのカトマンズの街を美しくしたい」と思っていたそう。そこで、白い紙を切り抜いて蝶の形をつくり、街の木やランプ、または荒れはてた家や壁に貼っていく活動を始めます。
突然現れた、群れをなして飛んでいるかのような蝶たちの姿は、あっという間に街の景色を美しく変えることに。口コミやソーシャルメディアを通して瞬く間に広まりました。
カトマンズの街に突然発生した蝶の群れ
「White Butterflies」は、その美しさとシンプルさで、今では世界40ヶ国で愛と平和のシンボルとしても用いられるように。たとえばネパールで起きた女性への暴力に反対するデモでは、人々は髪やコートに蝶を留めて、この抗議活動に参加しました。
「White Butterflies」を髪やコートに留めてデモに参加する人々
またスコットランドのある村では、人々は大切な人を失ったときにこの蝶に名前を書いて、一つの木にピンで留めています。これは娘を失くしたひとりの女性が始めたことでしたが、今では村の儀式となり、この木はメモリアルツリーとして村のシンボルになっています。
スコットランドのメモリアルツリー
このように「White Butterflies」は個人のストーリーと結びついて、それぞれの場所で独自に進化を遂げています。
限界という壁を壊すきっかけに
ところでミランさんは、なぜこのアートのモチーフを白い蝶にしたのでしょうか。そこには「ただ、美しいから」というだけではない、こんな理由があったといいます。
イモ虫がサナギになり、やがて殻を破って蝶になる。その姿に私は、自分自身が夢に向かって葛藤する姿を重ね合わせたのです。
私はこの蝶が人々の情熱に火をつけて、自分でつくった“限界”という壁を壊すきっかけになってくれたらと思っています。そして“限界”を越えたとき、サナギが殻を破って羽ばたく蝶になるように、人は変化するはずです。こうした個人の変化は、ときに更に大きな素晴らしい変化を世の中にもたらすのです。
このプロジェクトは私の個人的な思いから始まったにも関わらず、たくさんの人に広がりました。今後も、それぞれのやり方で「White Butterflies」を続けてほしいと思います。
ミランさん
「自分自身の限界から解き放たれ、蝶のように羽ばたいてほしい」そんなミランさんの願いが人々へ伝わり、やがて「White Butterflies」はそれぞれの人が未来へ進む一歩を後押ししてくれています。
またひとりひとりのそうした小さな羽ばたきが世界を動かすということを、ミランさん自身の活動が証明してくれているようですね。
もしかしたら私たちの「ほしい未来」に近づく一歩は、自分自身の可能性を信じるところから始まるのかもしれません。みなさんも願いを「White Butterflies」に託してみませんか?
[via huffingtonpost, Milan Rai, WHITE Butterflies, NEPALI Times, Bidhata Rai, MELD, You Tube]
(Text: 高橋尚子)