フランス、イギリス、ドイツ、アメリカ、そして中国。各国の本屋さんに、「saji」は並んでいます。
さあ目をとじて、10年後の自分を思い浮かべてみてください。
こういわれて具体的にイメージできる人は多くないかもしれません。それでは、こういわれたらどうですか?
いま食べているものでつくられる10年後のあなたは?
グリーンズでも過去に何度かご紹介しているフードフォトグラファーmihoさんが、食とアートのコラボレーションマガジン「saji」の出版プロジェクトを立ち上げました。
「今たべているものが10年後のカラダをつくる」のテーマはそのままに、「saji5.0」をもっと大勢のひとたちと一緒につくってみたい、そんなふうに思ったからです。
ある秋晴れの日曜日。新宿のカフェでお話を伺いました。
アートで食を表現するその理由とは?
「saji」は、食に興味のない人に向けてつくられています。食とアートのマガジンなのになんだか不思議。それはmihoさんの体験が元になっていました。
不規則な生活で体を壊してしまった20代のころ、お医者さんに食生活の指摘をうけ「食」がどれほど大切かを知ったのです。
自分と同じようにファッションやイラストが好きな子たちは、おしゃれに夢中で生活のなかで、「食」は後回しになりがち。
それを知っているからこそ、ファッションから、イラストから、そして自分で料理してみることで、「食」をとおして自分の体にすこしでも目をむけてもらいたい。そう願って、世界各国のアーティストとコラボレーションし「食」を表現しているのです。
ベルリンのトレードショウ「Bread&Butter」で。トマトのゼリーと写真の展示。
「お料理なんてしたことないよ、苦手だもん」という未来のパパママ予備軍のためにも、sajiがあります。
先日、東京医科歯科大学の研究グループから興味深い調査結果が発表されました。「甘み」「苦み」など基本となる4つの味覚のいずれかを認識できなかった子どもは調査対象の3割にものぼった、というものです。
同グループによると、味覚を認識できなかった子どもは、ほかの子どもに比べ加工食品やそのほか味の濃い食品を好む傾向にありました。
手間や時間をかけることはできなくても、パパママの手によってつくられる家庭料理であれば、味付けのコントロールがカンタンです。「あ、そういえばsajiにレシピ載ってたなー」そんな感覚で手にとってもらいたいのです。
mihoさんが暮らすフランスにくらべ、種類が豊富でカンタン便利なものであふれている日本の食事情。そうしたものばかりを利用していたら、素晴らしい日本の食文化を知ることなく子どもたちが育ってしまう、それはとてももったいないこと。
「なにかひとつでもその家庭だけの味、お母さんの味を残してほしい、そうでなければ日本全国みんな同じお母さんの味になってしまわない?」とsajiは語りかけています。
お団子をつくる、おにぎりをにぎる、五感を使って体験する
マガジンと交差して参加型のワークショップが企画されるのも、この出版プロジェクトの大きな特徴です。
昨年5月には、フランス パリの老舗セレクトショップ「COLETTE(コレット)」で、母の日に子ども向けワークショップが開催されました。ワークショップへは子どもだけでの参加がOK。
この日ママたちは子どもをおいてショッピングへ。子どもたちは自身の手で食素材にふれ、ママにプレゼントするお団子をつくりました。と同時に、短い時間であっても親から自立するきっかけとなったのです。
パリのcoletteでのワークショップの様子。はじめての「お団子づくり」のワクワク!
来年3月には、日本でも同様のワークショップが予定されています。TOKYO CULTUART by BEAMSにて開催される20名限定「団子のワークショップ(仮)」です。親子でも、子どものみでの参加可能です。(campfireにてご支援される方は20名限定で参加費無料に)
私たちの体はその一部。5.0のテーマは「宇宙」
星は常に輝いているのに昼間は見えない、だけど確実にそこにある。そして夜になると宇宙をより近くに感じることになる。私たちは宇宙の一部で、自分が生きていることそのものがミラクルであることに気づきます。
こんなふうにいつも宇宙に思いを馳せているというmihoさん。
「どうしてこのテーマを選んだんですか?」ときいてみました。すると、
「どうしてこのテーマをピックアップしたんだろう?」と想像をかき立ててほしいです。
地球上に人間しかいないわけじゃない、常にほかの生物と共存しているということに目をむけてみる、もしかしたら宇宙の向こう側に何かあるんじゃないかってドキドキする、こんなふうに。
なんとなく生きていてはだめだと思う。みんな役目があるし、ひとつひとつの出会いにも意味がある。
ただの出会いと思うのかミラクルと思うのか、自分の捉え方次第、感じ方ひとつで人生はいくらでも輝いてくる。
宇宙に思いをよせながら、自分のいる場所、そして体のことをあらためて考えてもらえる1冊にしたい。それが「saji5.0」の実現に寄せる思いでした。
「saji 5.0」の表紙をこっそりご紹介。
考え過ぎでイメージしすぎ。日本人はもっと自由に
「何かしたいけど何をしたらいいのか分からない、自分には何もできない、そんなふうに感じている人がいるとしたら、campfireでサポートすることがよいきっかけになりますね」と投げかけると、こんな言葉が返ってきました。
みんな何でもできると思いますよ。フランス人はとてもシンプルだけど、日本人は考えすぎでイメージしすぎ。
こうなったらどうしよう、ああなったらどうしよう、英語ができないから、海外に行ったことがないから、と、勝手につくりあげている気がします。
もっと自由に!まずは自分のイメージから解放されることですよね。
想像やドキドキをもっと楽しんだらいい。「すごいね」とよく言われるけれど、やりたいからやってるだけ。だからみんなもやればいい、やりたくなければやらなければいい、幸せの価値観はひとそれぞれだし、とてもシンプル。
つまらないことで頭をいっぱいにせず、単純に考える。そう意識することがやりたいことを実現するための最初の一歩になるかもしれません。
フランスでの暮らしは大変だと思うことも、実はしばしば。そんなときは、”little by little” “step by step”ということばを思い出すというmihoさん。
急激に変わるのも怖い、社会ががらっと変わるのもそう。なぜなら急な変化は戻るのも早いから。ちょっとずつちょっとずつ、その積み重ねだから。
代官山蔦屋書店での「sajiフェア」は大成功!たくさんの人がtweetして拡散してくれたそう。
スタッフとして参加したい方はぜひコンタクトを
「sajiに参加させて!何かやらせて!」と連絡してくるのは、海外のイラストレーターが多いそう。日本人は直接言ってくることは少なく、人づてに聞くのだそうです。
みんなに伝えたいのは「恐れないで」ということ。
「sajiで表現してみたいけどきっとダメだろう。外国人ばかりだから」と思うのではなくて、すぐにはお仕事につながらないことももちろんあると思うけれど、いつか一緒にやれることがきっとある。
連絡をくれればsajiフォルダに必ずいれておくので、sajiで自分を表現したいと思うクリエイターの方はぜひ連絡を。
sajiじゃなくてもやりたいクライアントがあれば、今すぐ連絡したほうがいいですよ!
たくさんの魅力がつまったsajiプロジェクト。10年後の自分を描きながら、あなたはどんな方法で参加してみたいですか?
(Text: 梶原上記子)