greenz.jpの連載「暮らしの変人」をともにつくりませんか→

greenz people ロゴ

惑星ケーキを食べながら宇宙を感じよう!食べることに五感を取り入れる”FOODING”って知ってる?

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

みなさんは「FOODING」という言葉をご存知ですか?食べることにもっと五感を取り入れてみよう、という食への新しい向き合い方です。

今年7月、東京・伊勢丹新宿店でそんなFOODINGを体験するイベントが開催されました。「COOL&COOL! SWEETS COLLECTION 涼とモードの“クール”スウィーツ」の中で行われた「5つの惑星ケーキ」。

一年に一度だけ逢うことを許されたおり姫とひこ星のように、大切な誰かを思い、惑星のケーキを食べながら遠い宇宙を感じてみませんか?この呼びかけに応じるお客さんの列は、イベント終了まで途切れることがありませんでした。

惑星を食べる?

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
左から、水星、金星、地球、火星、木星のケーキ

スイーツの売れ行きが落ちる夏場。COOL(カッコイイとひんやり)をお菓子で味わってもらおうと企画された催しのなかで「5つの惑星ケーキ」がふるまわれました。用意されたのは、水星・金星・地球・火星・木星・土星の5つの星。このために作られたオリジナル作品です。

それぞれの星の特徴が見事に表現されている惑星ケーキ。表面に雲が流れるためにできる木星の縞模様は、栗とチョコレートのヌガームースで。火星に吹き荒れる砂嵐は、トマトのすあまでできた土台に、ちりばめられたきな粉と白ごまで。3層からなる地球の、地殻・マントルはチョコレート、内核はラズベリーとアセロラのゼリーで。

表面温度が470度にもなる灼熱の星、金星はパッションフルーツのムースでさわやかに。その名のもつイメージとは裏腹に地殻が鉄とニッケルでできた水星は、ずっしりとしたブラウニーとあんこで。お客さんは希望する2種類のケーキを伝えるのですが、「木と火でおねがいします」「わたしは、水と金で」と会場には不思議なオーダーが飛び交っていました。

食+人をとりまくすべてのこと

もっと自由に料理し、もっと自由に感じて食べる。こうした食へのアプローチは、私たちが持ちうるすべての事柄を使うことでもあるんだ。

こう語るのは、FOODINGの生みの親、フランスのフードジャーナリストAlexandre Cammas(アレクサンドル・カマス)氏。FoodをFeelingで包み込むという発想から生まれたこの言葉は反響を呼び、瞬く間に広まりました。

“料理はもっと自由でいい”。それは伝統や形式を重んじ、格式ばったスタイルを重視するパリのレストランに対する挑戦を意味するものでもあります。

fooding1

最近のフランスでは、FOODINGにかわり「Food Design」という言葉が一般的になっています。より芸術的、文化的活動として料理を考えようという新しい食との関わり方です。フードデザインを一緒に考えようというサイト「thinking food desing」では、評論家、哲学者、シェフ、デザイナー、アーティスト、心理学者、経済学者、歴史家、教育従事者、そのほか食への情熱をもつすべてのひとに呼びかけがなされています。

「これはフードデザインだけどあれはちがう」というようになんでもカテゴライズしたがる日本人と比べ、フランス人の感覚はとても自由。その自由さは、thinking food design でみられるように、人間を取り巻くすべてのことと食を関連づけて考えてみようということにまで広がっているのです。

パリでは、週末になると必ずどこかでフードデザインイベントが開催されています。例えば、有名シェフによるデモンストレーションに、つながりのある他分野のクリエイター、映画監督、俳優、画家、グラフィックデザイナー、建築家、ミュージシャンなどがともにステージにたつなど。

ステージを見るだけではありません。盛りつけやデコレーション、器で感性を試してみたり、食べる空間をデザインしてみたりと参加型のものも。今やパリッ子にとって、とても自然な時間の過ごし方になっているようです。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
地球の構造までお菓子で表現。とてもリアル。

日本とフランスでは”カンタンな食事”の捉え方が違う

宇宙がなければ、自分もそして大切な誰かも存在しないから、日本、世界、地球を飛び出し、宇宙にまで感覚をひろげてみよう。七夕にちなんで、冒頭でとりあげたFOODINGを企画したのは、以前「まっくらごはん」の記事でみなさんにご紹介した、フードフォトグラファーのMIHOさんです。

FOODING発祥の地フランス・パリにも活動の拠点をおく彼女に、フランス人の食への意識をきいてみました。

フランス人は、毎日の暮らしのなかで「食」をきちんととらえているんです。”食事をカンタンに”というと日本人は出来合いのものを買ってきたりしますよね。彼らは、カンタンな食事でもきちんとしています。忙しくたって新鮮な野菜を買ってきて、手製のドレッシングでさっとあえてサラダにする。”カンタンな食事”の捉え方がずいぶんと違う気がします。

日本には、米や麺類など手軽に調理できる素晴らしい食材があるのに、それらを使わない人が多いですよね。もったいないと思います。

MIHOさんが手がけるフードマガジン「saji」では、食をベースとして毎号異なるテーマと驚きの(時にはショッキングな)表現方法で、私たちを取り巻くあらゆる事柄への意識を呼び覚ましてくれます。今年6月に刊行された「saji 4.0」は水がテーマ。人間の体の約60%は水、生きていく上で欠かすことのできない資源。水をテーマにさまざまなアーティストがページを飾ります。

特集では、子どもたちに目が向けられました。両親共働きが珍しくない現代、いわゆる「鍵っ子」も自分で料理ができるようにと紹介されているスープ。ちょっとしたアレンジで”2日目は別のスープになるんだよ”というレシピは、子どもの遊び心をくすぐります。

赤ちゃんが、はじめて食を口にするときからその喜びを体験できるようにと考えられた「離乳食レシピ」は、それを作るお母さんもきっと何かを感じることでしょう。単なる料理本とはひと味もふた味もちがう、アーティスティックなのに実用的な提案が盛りだくさんです。

saji

お団子を通じて、日本という国を知ってもらう

今年5月には、昨年15周年を迎えた老舗セレクトショップ「コレット」で『母の日に「(日本の)お団子」をつくる』を開催。はじめて作る「お団子」にちょっぴりドキドキのフランスの子どもたち。

思い思いに作ったお団子を、白い紙や箱に自由に描かれた絵やメッセージと一緒に大好きなママンに贈りました。「米の粉」という食材に触れ、水と粉でできるそのカンタンな作り方にとてもおどろいていたそうです。

母の日にこのイベントを、と考えたのは、誰かを思いながら作る(料理する)ということを子どもたちに感じて欲しかったから。お料理って、誰かのためだと一生懸命になれるし、「美味しいね」って言ってもらえるのはすごく幸せなこと。

そして、日本という国を知ってもらいたかったから、彼らにとって未知の食材を使ってみました。子どものころから、食を通じて異文化に触れる体験ができるのって素敵ですよね。

9月、パリで開催される「Tokyo Crazy Kawaii Paris」でも、お団子のワークショップが予定されています。年末にはゴミ問題と食の関連を考えた本の出版も。「パリにお店を出したいし、未来をつくるそもたちのためにもっとできることを探したい」。sajiを通じてMIHOさんの活動は続きます。

miho-san
イベントでお客さん一人ひとりに声をかけるMIHOさん

点と点がつながって、やがて未来を変えていく

誰しもが何気ない日常のなかで得られる小さな気づきや驚きがあります。今まさに口に運ぼうとしているその食物にちょっと意識を落としてみる。食材はなんだろう?どこで作られたの?どんなふうに運ばれてきたんだろう?何を感じている?そこに何かしらの気づきがあるとしたら。

点と点がむすばれて線となるように、その小さな気づきがつながって行動を起こし、その行動は日々の暮らしのどこかに変化をもたらす。そして未来を変えていくかもしれない。MIHOさんが伝え続けるメッセージは、

いま食べているものが10年後のあなたのからだをつくる。

 

食べることで作り出されるあなたとあなたの大切な人の未来は今、どんなふうにみえていますか。