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市民風車暦13年!「北海道グリーンファンド」流“ミラクル旋風”の起こし方<後編:つくろう、グリーン電事連!>

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わたしたち電力」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

前編中編と、「不可能」が「可能」になっていくリアルストーリーをお伝えした、NPO法人「北海道グリーンファンド」代表、鈴木亨さんインタビュー。最終章の今回は、いま各地で盛り上がりをみせている「ご当地電力」の現状とヴィジョン、自然エネルギー事業を成功させるためのポイントなどをうかがいました。

前編中編をまだご覧になっていない方は、ぜひそちらからお楽しみください。

つながれ、自立エネルギー!

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「ご当地電力」の普及を目指し各地で先駆者として講演なども行ってきた、NPO法人北海道グリーンファンド理事長:鈴木亨さん

2001年9月、「はまかぜちゃん」から始まった日本の市民風車は、15年を経た今では計16基に増加。東日本大震災から1年が経過した2012年3月に誕生した「風民(ふ~みん)」と「夢風(ゆめかぜ)」の2基でつくられた電気は東北電力には売電せず、出資元である企業と生活クラブ生協の施設で使う、という画期的なトライアルも実行。

風車たちは今日も各地で、グリーンな電気を元気に生みだしています。
 
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全国の市民風車マップ2014年版

特に福島原発事故後はより多くの地方で市民が立ちあがり、“ご当地電力”の取り組みが次々と生まれています。「北海道グリーンファンド」は経験者としてアドバイスや支援をしつつ各地の仲間と交流しているんですが、中でも福島県の「会津電力」さんは元気がよくておもしろいんですよ。

鈴木さんはそう切り出して、うれしそうに話をつづけました。

ここの代表者は、1790年創業の老舗酒造店の9代目でね、福島原発事故のあと持ち前の熱い会津ダマシイに火がついて、「これまでの“電力幕藩体制”を変えていこう!」と立ちあがり、やる気いっぱいで燃えているんです。

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会津電力のHPより、しくみの説明図

今まで電気の素人だった人々が電力事業を興し持続させていくのは決して楽なことではありませんが、小さな力もあつまればできることが広がっていく。

だからまずその第一歩として、みんなで自然エネルギーによる“もう一つの電気事業連合”ともいえる「全国ご当地エネルギー協会」をつくろう!ということになって、今年の3月11日に設立総会を開いたところなんです。

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全国後統治エネルギー協会の設立総会にて(画像提供:環境エネルギー政策研究所)

衆議院第一議員会館で開かれたその総会の幹事は、かつて自らが原発研究者だったがゆえにいち早くその問題点を見抜き、自然エネルギーに方向転換してNPO法人「環境エネルギー政策研究所」を立ちあげた、飯田哲也さん。
 
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飯田哲也さん(画像提供:環境エネルギー政策研究所)

先日の総会では、以前から飯田さんと親交があった鈴木さんを筆頭に、北は北海道から南は九州まで全国各地から13グループが集合し、ご当地電力ネットワークによるもう一つの電事連が正式に立ちあがるのも、もはや秒読み!という感じです。

太陽、風、海や川…それぞれの土地にある自然を活かし、それらのエネルギーに知恵とチカラを合わせてご当地ビジネスの一つの材料にできれば、国の体制に依存するしかなかった今までの地方のあり方を、きっと変えていけると思うんです。

そう語る鈴木さんの目は、楽しそうに輝いていました。

覚悟を決めれば、動き出す。

今や人口3万人規模の町ひとつ分に相当する、約6000万kWhを発電するグリーン電力事業を市民みんなの力で成し遂げ、自然エネルギー100%の未来が決して夢物語ではないことを予期させてくれた鈴木さんに、「持続可能な経営に必要なものは何でしょう?」とたずねると、こんな答えが返ってきました。
 
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事業としてやっていくからにはまず、「リスクの責任は自分が取る」という覚悟は必要ですね。電気やビジネスの専門的な勉強ももちろん必要だし、失敗しないようにするには、素人のままではいらません。

でも、人間、覚悟さえ決まれば、あとは自ずとついてくるもんです。以前もいいましたが、大切なのは「謙虚さ」と「人とのつながり」。そして、「型にとらわれない柔軟さ」かな。

たとえ敵対する立場にいるような相手でも、心を開いて相手の話を聞いていれば、握手できるポイントが見つかることも多い。

「戦わずして、お互いに勝つ」。そのポイントを見つけようとする知恵と意識が、本物のコミュニティをつくっていくんじゃないですかね。

そして最後に鈴木さんは、こう付け加えました。

ウランや石油を海外から買いつづけるより、燃料を買わなくてすむ自然エネルギーで電気をつくって売る方が、ずっと儲かる。本当はそんなこと、電力会社がいちばんわかっているはずです。電事連や国の古い体制にがんじがらめになっていて、ハッキリ物申せないだけでね。

たとえ一人一人の力は小さくても、お金だけじゃない価値観で連携している市民のネットワークは、つながりの基盤がお金でしかない組織にはマネできない、思いもよらない可能性を秘めている。

そんな市民たちの力で外からどんどん働きかけて、自分たちでは身動きが取れずにいる電力会社が変わらざるを得ない状況をつくっていくのが、社会を変える早道じゃないかと思うんですよ。

立場や考えが違う相手と「戦って断絶する」のではなく、「生かしあって握手できるポイント」を探り、行動してみる。そんな「共生」の道を肩ヒジ張らずに切り拓いてきた鈴木さんの姿に、「グリーンエネルギーに満ちた社会は、一人一人のグリーンエネルギーが発揮されてこそ実現するんだよ」と教わったような気がしました。

3回シリーズでお届けしたこのインタビュー記事を通して、鈴木さんをはじめ、市民による電力づくりを実現してきた人々のグリーンエネルギーが、読んでくださったあなたの心にも吹き込むよう、願っています。