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シェアオフィスでの暮らし方は実際どう変わったの?クラウドファンディングでソーラー電力を手に入れた「みどり荘」に行ってみた。

ベランダに設置された4枚のパネル
ベランダに設置された200Wのパネル4枚

わたしたち電力」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

昨年、「ソーラーオフィス」を目指し、クラウドファンディングで資金を集めることに決めたコワーキングスペース「みどり荘」。

そのチャレンジの様子は2回にわたってお伝えしました。そして、65万円を目標にしたファンディングは見事成功。75万円の資金を獲得するに至りました。

それからはや5ヶ月、実際に運用が始まった「みどりソーラー」は果たしてうまくいっているのか、本当にソーラーオフィスのパッケージ化は可能なのか。そのあたりの現状を、みどり荘を運営する小柴美保さんに聞いてきました。

クラウドファンディングをやってみてわかったこと

まず、モーションギャラリーで実施されたファンディングは、締切1週間前にまだ半分にも満たない達成率で、小柴さんも諦めかけたとのこと。しかし、最後の1週間で一気に盛り返し、見事達成。

すごく面白かったけれど、反省点もあります。海外では新しい製品の予約販売のようなものが多くの資金を集めていて、クラウドファンディングに向いているものとそうでないものがあることがわかりました。でもこれからもみどり荘にかぎらず、クラウドファンディングには挑戦していきたいです。

コレクターになってくれた人の中には「新しい取り組みに賛同したい」という人や「自分たちのオフィスでも導入したい」という人もいたそうです。その資金で購入したソーラーパネルの設置は昨年12月にスタート、平行してコレクターなどを集めてのワークショップも開催しました。

このファンディングの目的は単に太陽光で電力をまかないたいというものではなく、エネルギーについての知識を広め、多くの人にエネルギーについて考えてほしいという目的も持っておこなったものです。なので、ワークショップもそんな観点から、電気のイロハから説明、電気を作る仕組み、使う仕組みを理解できるようにします。実際にやってみると、当たり前に使っている電気のことを私達がいかに知らないのかということを思い知らされます。

電気に対する「意識が変わる」ということ

デスク下に設置されたバッテリーやメーター
デスク下に設置されたバッテリーやメーター

完成したソーラー発電システムは、200Wのパネルが4枚で、最大出力が800W、一日の最大発電量は3200Wh。バッテリーは100Ah×12Vのものが4個で、蓄電能力は4800Wh、最大使用可能電力は2400Whというものになりました。このバッテリーからデスクへケーブルを引っ張り、OAタップに電力を供給します。みどり荘メンバーの寺田さんがデザインしたコンセントボックスの中には、発電した直流(DC)12Vをそのまま使えるコンセントと、USBジャック、インバーターによって交流(AC)1500Wに変換したコンセントがついています。

と、ここまで細かい数字を説明しましたが、これで「なるほど」と思う人がどれくらいるでしょうか。多くの人にとっては、そもそもこの「Wh」や「A」「V」「DC」「インバーター」などという用語がそもそもわからないというのが素直なところなのではないでしょうか。実際に、みどり荘のメンバーでもそういう人が多いようで、「そういう人たちの意識を変えることがまず大切」と小柴さんはいいます。

そして「これでソーラーデスク分の電力は十分まかなえるはずなんですが、一度、電源が落ちてしまったことがあったんです。原因はメンバーが使っていたハロゲンヒーターだとわかりました。1000Wもの出力があるので、電気をものすごく消費するんです」というのです。そのメンバーはハロゲンヒーターを家に持って帰ったそうで、それが「意識が変わる」ということなのでしょう。
 
ソーラーデスクのコンセントボックス。DC12V電源は自動車のシガーソケット用の機器に利用できる
ソーラーデスクのコンセントボックス。DC12V電源は自動車のシガーソケット用の機器に利用できる

さらに「私達が使っているノートパソコンなんかは直流の電気を使っているので、発電したものを直接利用したほうが効率がいいんだけれど、そこに不安を覚える人もいる」ともいいます。

確かに、ノートパソコンなどACアダプタを使う機器は交流を直流に変換して使っているので、電圧さえ合えば直流の電気を直接使ったほうが変換によるロスがない分、効率的です。そのようなことも1つずつ学んでいくことで、エネルギーとうまくやっていくことができるはずなのです。

ソーラー電力からわかったシェアの本質

その意識変化の表れとして、今年から主な暖房に石油ストーブを使用、キッチンにあったコーヒーメーカーもなくし、その都度カセットコンロでお湯を沸かし、珈琲をドリップするようにもしたそうです。そのおかげで今年の冬は一度もブレーカーが落ちることなく乗り切れそうだといいます。

ソーラー導入の理由の一つとしてオフィスとしての信頼性につながる電気の安定化ということがあったので、少なくとも目標の一つは果たせたわけです。
 
メインの暖房は石油ストーブ
メインの暖房は石油ストーブ

ソーラーでまかなえる電気は一部に過ぎませんし、すべてをまかなうにはパネルの設置場所が不足しているというのが現状ではありますが、ソーラーでオフィスの電気をまかなうというみどり荘の目標の一部は達成されています。みどり荘そのものがもっとたくさん電気を作れるようになることももちろんですが、これを見て同じようにソーラーを導入するオフィスが出てきてくれることを小柴さんたちみどり荘のメンバーは望んでいるのです。

そして、シェアオフィスというそのままでは単に空間を共有しているだけの人たちの関係が、同じ電気を分けあって使っているという意識を持つことによって少し密なものになっているように私には思えました。シェアする事の本質は、何かを分け合うことによって意識とか目に見えない何かを共有することなのかもしれませんね。

さて、そのみどり荘でこのプロジェクトの締めくくりとして、コレクターなどを招いての「ソーラナイトみどり荘」が今日3月20日に開催されます。ソーラデスクの見学と、「ソーラーのほうがノイズが少ない」とも言われる「音」の聴き比べ、映画「パワー・トゥ・ザ・ピープル」のソーラー電力を使っての上映会を開催します。コレクターになれなかった方も1000円で参加可能とのことなので、ソーラーオフィスを体験してみたい方はぜひ参加してみてください。

ソーラーナイト@みどり荘
日時:3月20日(木、休前日)19:00~21:00
会場:みどり荘ギャラリー

19:00~19:30 ソーラーデスク見学、ごあいさつ
19:30~20:00 ソーラー電気で音くらべ
20:00~21:00 ソーラー電気で映画上映

映画:『パワー・トゥー・ザ・ピープル』
音響:田口造型音響
食事:ソーラーポップコーン、ホットドッグ、チリコンカンとクラッカー
ドリンク:ビール、ワインなど

http://midori.so/