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地元の高校生が考える僕らのまちづくり。気仙沼から日本に火をつける「底上げ」 [マイプロSHOWCASE東北編]

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特集「a Piece of Social Innovation」は、日本中の”ソーシャルイノベーションのカケラたち”をご紹介するNPO法人ミラツクとの共同企画です。

日本が抱える様々な社会的な課題…誰かが画期的な解決策を考えてくれないかな、なんて思ってしまうことはありませんか?宮城県気仙沼市のNPO法人「底上げ」は、そんな人びとに対して、自分たちで課題を解決していく力を育てていく団体です。

「底上げ」の副理事長を務める斉藤祐輔さんは、震災直後から被災地を訪れ、そこで今のメンバーに出会います。2011年4月には任意団体「底上げJAPAN」を結成し、支援物資の配給や避難所の運営管理、宿泊所の手伝い、ボランティアの誘致など、さまざま活動を行なってきました。

現在は気仙沼を拠点に、地元の小学生から高校生までの子どもたちを対象にした自主学習の支援や、ボランティアに来る人たちのコーディネートなどに取り組んでいます。

「底上げ」との出会いがもたらした変化

震災が起こったことで、「底上げ」をはじめとするNPOやボランティアなど、多くの人が気仙沼に出入りするようになりました。みんな今までの気仙沼にはいなかったタイプの人たちばかり。そういった外部の人たちと触れ合ううちに、気仙沼の子どもたちにも少しずつ変化が起こり始めました。

最初に反応したのは、受験を控え、学習支援を受けることの多かった高校3年生。勉強を教わりながら、メンバーの生き方や活動自体に興味を持ち、「底上げ」が行うイベントに積極的に参加したり手伝いを買って出るようになったのです。

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活動をともにする中で、高校生の中にはある想いが生まれていました。それが表に出たのは卒業して気仙沼を出る間際の2012年3月のこと。

外から来た「底上げ」はこれだけ地元に密着して動いてるのに、私たちは自分が生まれ育ったこの町について、まだ何も考えられていない。気仙沼を離れる前に、考えるきっかけや、同じことを考えている仲間とのつながりをつくりたい。

高校生のその言葉から、「子ども会議」は始まりました。気仙沼に打ち上げられた大きな漁船「共徳丸」を今後の町のためには残すべきか否かや、気仙沼が魅力的な町になるには何が必要かについてワークショップ形式で話し合いをすることにしたのです。

子ども会議でつながりを深めた高校3年生たちは、卒業後「底上げYOUNG」という学生団体を立ち上げ、仙台沿岸のゴミ拾いや南三陸へのバスツアーなど、現在も精力的に活動しています。

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気仙沼の街。中央に見えるのが津波で流れてきた漁船「共徳丸」

「YOUNGがだめならYouthをやる!」

「底上げYOUNG」立ち上げまでの動きを見ていた斉藤さんは、子ども会議を継続したいと考えていました。そんな時、楽しそうに活動するYOUNGの姿に感化された当時の高校2年生たちが「私たちもやってみたい!」と言い始めたのだそう。そこで月に1・2回、テーマを決めて地域に必要なものを考えるワークショップを開いていたのですが、彼らには少し物足りなかったようです。

夏に高校生たちがアポを取って「YOUNGに入れてください!」と言いに行ったんです。でも、「大学生にならないとダメだよ」って断られて。振られた高校生たちは「もういい!私たちはYOUNGじゃなくてYouthやる!」となったんです(笑)

そうして、立ち上がった「底上げYouth」。メンバーは現在の高校2~3年生の、合わせて12名。子どもたちが町について考えることによって、外部からの関心を気仙沼へ集めることや、活動を通して同世代の子どもたちをエンパワーメントすることが目的です。

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底上げメンバーからのサポートを受けながら、子ども会議で何度も話し合いを重ねたYouthは、観光ツアーで気仙沼をアピールするという方針を決めました。

よくある復興ツアーにはしたくないと、近代短歌において初めて「恋人」という言葉を使った気仙沼の歌人・落合直文からアイデアを得て、高校生ならではの視点で「恋」をテーマに気仙沼の魅力を伝える「詩う幸せ恋人ツアー」を企画。

2013年3月には町の人たちに向けた活動報告会も行い、今後は首都圏の大学生にターゲットを絞り、ツアー参加者を募っていく予定です。

下のレイヤーにこそ火をつけたい

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子ども会議の目的は、子どもたちが問題意識を持ち能動的に動くようになること。しかし、みんながみんなアクティブにガツガツ動けるという訳ではないそうです。

Youthの中でもいくつかの層に分かれています。先頭切って走る子も、先頭で誰かが走ってくれるからついていく子もいる。それがだめってことじゃないけど、そこに留まっていないでどんどん上のレイヤーに上がっていってほしいし、その下のレイヤーにいる子も巻きこんでいかないといけないと思っています。

斉藤さんが指すその下のレイヤーとは、Youthの背中を見ている気仙沼の中学生のこと。具体的な活動内容までは理解できていなくても、楽しそうに活動するYouthに対して中学生の関心が高まっているそうです。これから中学生も巻き込んでいきたいと意気込む斉藤さん。

高校生のうちから問題意識を持ちツアーという形で成果物を出して、報告会を開きマスコミにも取り上げてもらって…という成功体験を繰り返した高校生たちは未来の日本を支えるような人材になる。そして東北からイノベーターを輩出することが、最終的に東北の底上げにつながる、斉藤さんはそう考えています。

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「底上げ」副理事長の斉藤祐輔さん

Youthの底上げをして、気仙沼の底上げをして、最終的には日本の底上げを見ています。気仙沼から問題だらけの日本に向けて、どうやって火をつけるか、が課題ですね。

底上げと出会ったことで、変化した気仙沼の若者「底上げYOUNG」。
その先輩たちに刺激を受けて、動き出した高校生「底上げYouth」。

彼らが巻き起こした小さな波は、私たちを巻き込んで少しずつ大きくなっていきます。気仙沼からあなたへ。一歩踏み出せば未来は変わるのです。

(Text:鈴木愛美)

鈴木愛美(すずきあみ)
福島県郡山市生まれ、盛岡市在住。情報デザインを専攻する岩手大学生。
コミュニケーションデザイン・コミュニティデザインなど人と人とのつながりをつくることに興味があり、勉強中。チーム岩大E_code(Twitter:@E_code1)として陸前高田を応援するフリーマガジン「いいことマップ」の制作・発行をしています。