創造的な人とそうでない人って、何が違うんだろう。そんなことを考えたことはありませんか?多くの研究者がこの疑問を解決しようとし、創造性を発揮するための方法論を生み出しています。
でも、本当は方法論で解決できるより前の段階が「創造」には必要なので…そんな想いから始まったのが、ニュージーランド人研究者による「Not-school」という取り組みです。
大人も子どもも泥だらけになって遊べる「親子別荘」などの活動
活動の一例。公園に椅子をつけてみる。
Not-schoolプロジェクトの活動の一例を挙げるとこんな感じです。
・空き地を歩き回って「ここに座れたらいいなあ」と誰かが思いつき、どんな方法で座れるようにするかを考えて、大人と子どもが一緒になって、実際に座れるように器具を取り付けてみる。
・タイヤを舐めてみたり、タイヤの中に入ってジェットコースターのように転がってみたりしてみる。
・ブロックを糸でくくって危うい均衡を楽しんでみる。
・街を徹底的に歩いて、宝物だと思える「何か」を探し、地図を作る。
・奥多摩にある「親子別荘」に親子で定期的に泊まりに行って、他の家族と交流したり、自然の中で遊んだりする。
これらの活動でNot-schoolが行なうのは、参加者を集めて場所を用意することと、活動の内容を記録し分析すること。しかし、自然発生的に集まったり場所が決まったりすることもあり、「これ」という明確な活動内容があるわけではありません。
タイヤも工夫次第でジェットコースターになっちゃいます。
街中で、宝物だと思える「何か」を探して地図を作る。
楽しそうではあるものの、単純に遊んでいるだけのように見えます。こういった整理されていない活動に、どんな意味があるのでしょうか。
Not-schoolを運営しているニュージーランド人でイノベーション研究者のChris Berthelsen(以下クリス)さんにお話を聞いてみました。
イノベーション研究者のChris Berthelsenさん
活動が整理されていない混沌とした状態で、何かを目的としていないことこそ、創造性を養うために必要なことだと考えています。
とクリスさんは言います。一体どういうことでしょうか?
創造性を発揮するために必要なもの
クリスさんは創造性を発揮する過程を次のように説明します。
多くの研究で、創造性を発揮する過程は「課題を発見してひらめき、それをうまく加工する」という段階を経るもののように語られています。しかし、創造性を発揮するためには、その「土壌」となるものが必要です。まっさらな脳みそに、方法論だけ当てはめても、何も出てこないはずですから。
その「土壌」となるものは、体験だったり、知識だったり、空想だったりと混沌としていて「これをやればOK」というものがあるわけがありません。でも、何かはできるはず。その「何か」をNot schoolではやろうとしています。
また、クリスさんは、創造性を発揮するために必要なものを次のように説明します。
新しく、価値のある創造的なアウトプットが生まれるためには、何か特定の知識をもった人が、頭をいろいろと使う必要があります。特定の知識や、アウトプットに至るまでの方法論は学校などで身に付く部分です。
しかし、そもそも「創造してみたい」という根源的なモチベーションがなければ、アウトプットは生まれません。そのモチベーションは大きな意味での「環境」によるものだと考えています。その環境をNot-schoolでは作りたいと考えています。
つまり、クリスさんは創造性を発揮するためのもっとも基本的な部分を養うためにNot-schoolのプロジェクトを行なっています。だからこそ、活動の内容をあえて「○○のため」などと整えず、混沌なままにしておいているのです。
知識を得たり、方法を知ったりすることばかりに慣れた頭だと、どうしても「それが何のためになるの?」「なぜそれをやるの?」「どのようにそれをやるの?」と考えてしまいますが、Not-schoolの取り組みの目的は、もっと深いところにあります。
大人と違い、子どもは自由な発想でやりたいことを見つけて取り組めます。そのため、子どもと一緒に活動をすると、大人は子どもの発想や行動からたくさんのことが学べるとクリスさんは言っていました。
もう一つの「近所」をつくろう
現在、Not-schoolでは大きく分けて3つの取り組みをしています。1つは東京・昭島市にある昭島幼稚園の園内で、園児とともに遊ぶこと。2つめは奥多摩にある「親子別荘」に遊びにいくこと。そして3つめは都内で不定期で行っている「手作り遊び会」。
昭島幼稚園の取り組みは参加ができませんが、幼稚園からの依頼であれば同様の取り組みを園内で行なうことができます。また、個人であれば「親子別荘」や「手作り遊び会」の取り組みには参加できます。
今まで参加したことのある活動とは、きっと方法も目的もまったく異なるNot-schoolの活動に、一度参加してみてはいかがでしょうか。