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自分らしい働き方と暮らしをつくる。米田智彦さんに聞く、ライフデザインのヒントとは?

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米田智彦さん

旅行したり、友達の家に遊びに行ったりすると、「こんなところで暮らしてみたい!」と思うことはありませんか?

好きなところで働けたらいいな。自由に住む場所を変えられたらいいな。
そんな夢のようなことを、東京という町で実験した人がいます。それが、米田智彦さんの「NOMAD TOKYO」というプロジェクトです。

都市をシェアしながら暮らしてみる

米田さんは2011年1月、「家と家財を捨てて、東京を旅するプロジェクトを始めます」とTwitterで宣言してから同年11月まで、東京都内を旅しながら働く生活実験「NOMAD TOKYO」を行いました。

「都市をシェアしながら暮らしてみよう!」をコンセプトに、昼間はカフェやコワーキングスペース、知人の会社などでフリーの編集者として仕事をし、夜はTwitterなどソーシャルメディアを活用してシェアハウスやゲストハウスなど、50箇所以上を泊まり歩きました。

時には長期出張している方の郵便を受け取る代わりに部屋を借りたり、オープン前のシェアハウスに泊まって感想をレポートする仕事をしたり、意外な出来事や偶然の出会いなど、予測できない日々だったようです。

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東京・日野市にある団地型シェアハウス「りえんと多摩平」のリビング

そうやって東京を遊動していくうちに、今まで見ていた町がちがったものに見えてきたと言います。例えば銀座や表参道にも銭湯があり、普段は見落としているものに気づくようになったそうです。「隣町や隣駅でも全く違う光景があり、遠い国に行かなくても、足元に面白いことはたくさんある」と米田さん。

都市の再発見だけでなく、日野市や奥多摩といった西東京では、同じ東京とは思えない大自然も味わうことができたと振り返ります。特に青梅市・御嶽では、ネイチャーガイドとして活動している土屋一昭さんの暮らす古民家に泊まり、一緒に釣りをしたり野菜をつくったりして、忘れかけていた自分が呼び覚まされたような感覚になったと言います。「NOMAD TOKYO」を終えた今でも、朝早く起きた日には東京近郊の山登りに思いつきで気軽に行くようになったそう。

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青梅市御嶽の渓流で川釣り

それにしても、なぜ「NOMAD TOKYO」を始めたのでしょうか?

米田流「旅しながら働く」

若い頃によく、バイトでお金を貯めてはバックパッカーとしてヨーロッパとかインドとか、海外を貧乏旅行してたんですよ。航空券だけ買って、当時はネットもないから、降り立った駅の近くで宿を探して泊まって。でも、お金がなくなると日本へ帰らなければいけない。それで「仕事があったらずっと旅をしていられるのにな」と漠然と思っていたんです。

それから何年も経って、フリーランスになったときに、これはどこでも仕事ができるワークスタイルだと気づいたんです。「なんだ、若い頃に自分がやりたかったことが今なら できるじゃないか!」とね。でも、海外で自由に働くことは、成功者とかセレブじゃないとできないんじゃないかという固定概念ってやっぱりあるわけです。

そこで、自分なりのオリジナルな旅ってなんだろう?と考えたときに、遠い国に行くんじゃなくて、自分の暮らしているこの東京って都市を旅してみようと思いついたんです。僕は福岡出身で入学のために上京したんですけど、東京を観光したことはなかった。地元になるとわざわざ旅をしようとか思わないじゃないですか。そこで、人生最後のバックパック旅行を東京にしたら面白いかも、と思ったんですね。

それがちょうど当時借りていた家の更新時期で、そのまま引越し先を探すのをやめてしまったそうです。

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http://nomadtokyo.com/

同時に、自分の人生をもう一度、デザインしたいという思いもありました。もともと出版社に勤めていた米田さんは、会社が倒産の危機に遭い、「どうせ会社にいてもいなくても不安な時代。だったら会社の都合に振り回されずに自分で人生を再構築しよう」という思いからフリーランスの編集者に。その頃から「仕事って何だろう?」と考えるようになったと言います。

人生は計画的に考えていても、何が起こるかわからないじゃないですか。最初からそう思っていれば柔軟に対応できるし、予測不可能な未来を有効活用したいと思ったんです。

固定観念から離れて、暮らしや仕事を自分の手で柔軟に自由につくっていきたい。「NOMAD TOKYO」では、まさにそれを実践している人たちとつながり、米田さんはそうした人たちを「ライフデザイナー」と呼んでいます。

「ライフデザイナー」との出会い

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渋谷のシェアードワークプレイス「co-ba」にて

「ライフデザイン」は自分の生活の中で、今あるアイデアとかリソースを使って自分のなりたい像をつくっていくイメージ。

例えば、好きな場所で働きたいという思いから日本とニューヨークを行き来している人、平日は東京で仕事をし、週末は千葉・房総の里山で子育てを楽しむ人、軽井沢から東京へ毎日通勤する人など。

「そんなことは自分には無理」と思う人もいるかもしれません。けれど、お金持ちでなくても、会社勤めをしていても、実際にやっている人はたくさんいます。そしてその生き方は千差万別。

彼らに共通するのは複数の視点を持っていること。米田さんはそれを「あいだを泳ぐ」と表現していました。都市と田舎のあいだを往復したり、リアルとネットのあいだを行き来したり、拠点を多く持つことで、それぞれの魅力に気づけるのだそう。

さらに、「自分」も複数持つことを勧めています。

会社員かフリーランス、起業っていう二択ではなくて、その「あいだ」になってみる。お金にならないナリワイも含めて複数の複業をしてみたり、会社員の「私」以外に、別の「私」を持ってみたり。多面体の自分をもっと肯定していいと思います。

僕もまだ会社勤めをしていた2005年に、「東京発未来を面白くする100人」をコンセプトにした「TOKYO SOURCE」というインタビューウェブマガジンを知人と始めました。マネタイズとか考える前に、自分たちが本当に惚れ込める才能に出会って話を訊いてみたい。それをやりたいからやっちゃおう!というノリで始めて、おかげで色んな人に出会うことができました。

あのときゴールは見ていなかったけれど、ゴールしたときにどんな景色が広がっているのかが楽しみだった。そういう風に、最初は何やってるか分からなくても、やっているうちに、だんだん形になっていく。「ライフデザイナー」も、やりながら見えてくるものだと思います。

米田さんの新著『僕らの時代のライフデザイン』には、「NOMAD TOKYO」の様子と、プロジェクトを通して出会ったライフデザイナーたちが紹介されています。「これは色見本のようなもの。自分が好きな色を選んで組み合わせてほしい」と米田さんが言うように、多様な生き方の選択肢が提案されています。

一度きりの人生。ときには少し立ち止まって、自分らしい働き方や暮らし方について考えてみませんか。

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『僕らの時代のライフデザイン
自分でつくる自由でしなやかな働き方・暮らし方』
米田智彦著 / ダイヤモンド社