福島第一原子力発電所事故の発生から、およそ2年が経過。
いまだ事態の収束にはほど遠い状況ながら、事故現場から離れた地で生活している私は、ともすると「過去のこと」のように感じてしまうのも、正直なところです。そんな自分にはっと気づかされたファッションブランドに、独ベルリンで出会いました。
「FUKUSHIMA」は、2012年末、ドイツで誕生したエシカルファッションブランドです。時間の経過とともに、福島第一原子力発電所事故の存在を忘れつつある世界の状況を憂いたデザイナーJaouad Bousboaさんは、ファッションを通じて「Don’t forget Fukushima(フクシマを忘れない!)」、「Let’s talk about Fukushima(フクシマについて語ろう!)」というストレートなメッセージを広く訴えるようと、このブランドを立ち上げました。オーガニックコットン素材から作られた衣類は、メンズ・ウィメンズ・キッズの3ラインで展開。バッグやアクセサリーも製作されています。
一般社団法人日本原子力産業協会の「世界の原子力発電開発の動向 2012」によると、2012年1月1日時点で、世界30カ国427基の原子力発電所が運転中。つまり、福島第一原子力発電所事故のような事故は、日本以外の国・地域でも起こりうることなのです。
Bousboaさんは、「FUKUSHIMA」に込めた思いを次のように語ってくれました。
福島第一原子力発電所事故のような出来事を繰り返さないためにも、世界はこの事実を忘れてはいけない。自分たちの問題として捉え、考え、語り合いを続けるべきだ。
私は、彼のこのような強い思いを聞き、日本にいながらこの事故をどこか”他人事”のように感じていた自分の気持ちに改めて気づかされましたが、それ以上に感銘を受けたのは、日本の人々、とりわけ被災者の方々への思いやりを忘れない、彼の謙虚さです。
僕は「日本のため、世界のために、何かしたい!」と思って、このブランドを立ち上げたんだけど、日本の人たちは、気に入ってくれるかなぁ。
少し心配そうな彼の横顔が、とても印象に残っています。
福島第一原子力発電所事故の問題のみならず、世界には様々な課題・問題が山積しています。私たち一人ひとりができることは限られているかもしれないけれど、まずは、自分ができることを精一杯やること。またその一方で、ときには自分の取り組みを客観視し、「自分がやっていることが、誰にどのように伝わるだろうか?」と思いめぐらすこと。このバランスの大切さを、「FUKUSHIMA」に教えてもらった気がします。