一人旅をする時、みなさんはどんなところを宿に選んでいますか?ビジネスホテルのシングルルーム、2段ベッドがずらっと並んで4人~6人の知らない人達と部屋をシェアするゲストハウスが日本国内では主流だと思います。
いま世界で注目されているのが、誰かのおうちのソファーを借りて眠らせてもらう「カウチサーフィン」というサービス。貸りたい人、貸してもいいよという人のコミュニティサイトの中で、お互い連絡を取り合い日取りや時間を決めていきます。
もちろんホテルでもなく、ゲストハウスでもないので、なんのサービスもありません。ただ、1人、宿でテレビを見たりインターネットをしたりして過ごすより、現地に暮らす人達とコミュニケーションを取る事ができ、ガイドブックには載っていない生の情報を聞けると考えると、とてもワクワクしますよね。
そんなアイデアを、世界を飛び回る起業家たち同士をつなぐという形に置き換えてみたらどうだろうと思いついたのが、今日ご紹介するフレッドです。彼の立ち上げた、起業家向けのグローバルトラベルコミュニティ「Startup Stay」(スタートアップステイ)では、もちろん「起業家同士をつなぐ」ということだけあって、「カウチサーフィン」とは大きな違いがあります。
「Startup Stay」を立ち上げたフレッド
起業家同士をつなぐトラベルコミュニティ!
まず一つ目に、フレッドによる承認、もしくは既存のメンバーの正体がないとこのコミュニティには入れないということ。ただ安く旅をするということが目的ではなく、起業家同士が現地で出会って新しいアイデアを交換したり、何か新しい事を一緒に始めたりするきっかけになればという彼の意向があるからです。
そして二つ目に、家に泊まらないにしてもカフェでお茶をしながらお話だけでもOKという選択肢もあるということ。お茶を一杯一緒に飲んでおしゃべりをするたけでも生まれる新しいアイデアはたくさんあるはずです。
そんな、サイト立ち上げ当時の状況をフレッドは興奮気味に話してくれました。
起業した当初ってお金もそんなにあるわけじゃないし、でもビジネスのために別の都市や国に行かなくちゃいけないことって結構あるよね?そんな時に、狭くて安いホテルに1人で泊まって、仕事以外はホテルの中に閉じこもるよりも、せっかくなら出張先の年の起業家の家に泊まらせてもらうってのはどうだろうって思ったんだ。
実際僕が、仕事の出張でヨーロッパ中を飛び回っていた時、最初はごく普通のビジネストリップをしていていたんだけど、孤独でつまらない。だから、途中からカウチサーフィンというサービスを利用し、現地の起業家の人達と会って話して色々な刺激や学びをもらったらんだ。そこで、このサービスの起業家だけのバージョンを作ってみたらどうだろうってひらめいたんだよ。
フレッドのサイトはまだ立ち上がって約6ヶ月ですが、すでに利用者が105カ国100以上の都市から、なんと6,000人以上のメンバーを抱える人気のコミュニティサイトになりました。たくさんの人たちが待ちわびていたこのサイトが出来るルーツはどのようなものだったのでしょうか。フレッドにインタビューしてみました。
Startup Stay Drinksでの一幕
とにかく海外に行ってみたかった
アルゼンチンに生まれ育ったフレッドは小さなころから、海外に出ることにとても興味を持っていました。そして21歳のとき、明確な「コレ!」というものがあったわけではないけれど、親戚や知り合いが多く住んでいたスペインに飛び立つことにしました。
スペインでの生活は楽しかったよ。でも、「ただ楽しかっただけ」。求めていたような刺激や、自分の将来やりたいことに答えをくれるようなものは見つけられなかったんだ。そして、アルゼンチンとスペインは言葉もスペイン語という共通言語で、世界を舞台にビジネスをしたいならやはり英語がしゃべれないとダメだなということも分かったんだ。
スペインで4ヶ月過ごした後、その当時父親が過ごしていたフロリダに行く事に決めたフレッド。英語を習得すると同時にアメリカで就職し数年、彼の中にまた新しい気持ちが生まれ始めました。アメリカでの生活は、快適で、給料も悪くない、でも…
この頃は正直、誰が見ても「いい仕事、いい生活」を送っている人のひとりだったと思う。だけど、ずっと同じ場所で働き続けることに疑問を持ったんだ。僕が本当にしたいことって、こういうこと?こういう人生?ってね。
一念発起!アイルランドへ
CNNに出演!
そこから、一念発起したフレッドは、アイルランドへ旅立つことにしました。現在のフレッドの会社「Startup Stay」の創設者の1人となった、昔からの友人がアイルランドにいたことも大きなきっかけでした。その友人とフレッドは常日頃から「何か一緒にしよう!」と話し合っていたのだそう。また、日常の全てに関しての疑問をぶつけあうこともしばしば。人生に一番大切なものは?「就職?」「お金?」「結婚?」などなど。
その疑問のぶつけ合いの中で、僕は「自由で」「独立し」「快適で」「自分自身で自信の持てる」人生にしたいと悟ったんだ。2006年の暮れの出来事だったかな。もやもやしていた気持ちがつながり、今僕がやらなければならないことが明確に分かった。そこからは、目標点をいろいろと決めて、がむしゃらに行動に移すことにしたんだよ。
人生の軸への肉付け
様々な起業家向けのイベントに参加し、自分のやりたいこと、自分の考える最良の人生の作り方についての軸を固めていくことにしたフレッド。そんな中、アイルランド出身の起業家であり数多くのビジネス書の著者として知られる「Yanky Fachler」というのトークイベントに参加して、フレッドは「起業家」にならなければならないと気づいたといいます。
「ウェブ関連で起業して、自由を手に入れるぞ!」と漠然と思いついたフレッドとパートナーでしたが、大きな問題が発生。なぜなら、フレッドとパートナーの両方ともがウェブ関係に関しては素人だったからです。しかし、ここでのフレッドの思いつきは私たちを驚かせるものでした。
ウェブ開発のエージェンシーを立ち上げ、さまざまなエンジニアにアウトソースしながら学べばいい!
こうして、エージェンシーとしてヨーロッパ中を出張することになったフレッド。この旅の中で出会ったのが、一番最初に紹介した、そう「カウチサーフィン」だったのです。フレッドが獲得したウェブのスキル、そして欲しかった「これだ!」というアイデアがマッチし、世界中の起業家同士をつなげるコミュニティサイト「Startup Stay」のアイデアが生まれたのです。
ドイツで行われたEuropean Pirate Summitではなんと15人の起業家が一緒に宿泊!
フレッドの本当のすごさは、「やりたい!」と思ったら、自分の持っているスキルや経験を顧みず、「足りないなら学べ」というスタンスで実際にやりきってしまうところ。現在はまだ始まったばかりのコミュニティサイトだけど、フレッドは「Startup Stay」にただならぬ思いを込めています。
僕は本気で世界中の起業家をつなげたいと思っているんだ!次の5年間で3億人のface to faceのつながりをつくりたい。とにかく人々の記憶に残るような事がしたいし、そして自分の好きな事を持続可能なビジネスにし、楽しく仕事をしていきたいね。
話しているだけでも、その熱意が見えるように伝わってくるフレッド。それは彼がラテン系出身だからという理由だけでなく、姿勢やアイデアすべてに魅力的だからでしょう。そんなフレッドにも会えるかもしれない、グローバルなチェンジメーカーのコミュニティ。グリーンズとも何か一緒にできないか、相談してみたいところです。
ご興味をもった方、招待状のリクエストは可能のようなので、ぜひサインアップしてみては?
[MYPRO LONDON] Fred Caballero – Startup Stay from Happiness Architect™ on Vimeo.
(Text:Chiori Katsuro)