トヨタの新型車AQUAのキャンペーンとしてスタートした「AQUA SOCIAL FES!!」。『みんなとだから、できること。』を合い言葉に、2012年3月より全国50箇所で各地のNPOと協力し、車名にちなんだ「水」にまつわる様々なアクションを繰り広げてきました。
カヌーやいかだ体験、ブラックバス釣り、ホタル鑑賞などなど、全国各地の環境に合わせたプログラムは、実にバラエティ豊か。子供からお年寄りまでたくさんの人が参加し、水に親しむことで、それぞれに大きな気付きを得たようです。そして先日、ついに今年最後のフェスを終え、ひとつの区切りを迎えました。
そこで今回は、改めてこのキャンペーンを振り返ってみることにしました。どんなフェスが行われたのか、どんな成果があったのか、これからどんな展開が期待できるのか……。「商品の購入の有無に関わらず参加可能である“共成長マーケティング”」として2012年のグッドデザイン賞も受賞した「AQUA SOCIAL FES!!」の軌跡を、まとめてご紹介しましょう!
「AQUA SOCIAL FES!!」は、こんな“フェス”でした!
燃費がよく環境に良いハイブリッドカーAQUAの発売と共に始まった「AQUA SOCIAL FES!!」は、クルマに乗らない人でも参加できる、未来をよりよいものにするための参加型プロジェクト。地元のNPOや新聞社と協力して、全国50ヵ所で「水」にまつわる環境を良くする活動を展開していくという、前例のないマーケティング(プロモーション)活動です。
川や海岸のクリーンアップ、在来種を守るのための外来種駆除といった作業から、カヌーやいかだ体験、ホタルやカエルの鳴き声鑑賞といった水辺を楽しむアクティビティまで、その土地の水辺環境に合わせた様々な“フェス”を、2012年3月より約10ヶ月に渡って展開。開催したフェスは、全部で131回、参加者は累計11,533人にのぼり、合い言葉のとおり、“みんな”を巻き込む大規模キャンペーンとなりました。
→「AQUA SOCIAL FES!!」公式ページ
→greenz.jpでの紹介記事
そしてgreenz.jpでは、このキャンペーンのスピンオフ企画として、これからの社会を担う学生のみなさんと一緒に、「AQUA SOCIAL FES!! Student Camp」と「AQUA SOCIAL FES!! Student Report」を展開しました。
AQUA SOCIAL FES!! Student Camp
3月初旬、各都道府県から学生のみなさんを東京に招待し、“自分たちの望む未来を、自分たちの手でつくるためのプロジェクト” =「マイプロジェクト」の企画方法や実践方法について学ぶ1泊2日のワークショップ「AQUA SOCIAL FES!! Student Camp」を開催しました。会場には、全国からこれからの社会を良くしようと本気で考えている105名の学生が集結。夜を徹した議論を重ねた末、全25チームがマイプロジェクトのアイデアをカタチにし、プレゼンテーションを行いました。
→当日のレポート記事はこちら
→当日発表された全アイデアはこちら
AQUA SOCIAL FES!! Student Report
そして、Student Campに参加した学生が大活躍したのが、「AQUA SOCIAL FES!! Student Report」。全国の「AQUA SOCIAL FES!! 」に学生レポーターとして参加し、その様子を臨場感溢れる写真と文章で届けてくれました。届いたレポートは、全部で54本。それぞれの場所でそれぞれの気付きを得た学生のみなさんの等身大のレポートは、読者のみなさんからも共感を集めました。
→AQUA SOCIAL FES!! Student Report
→学生レポート「ベスト5」紹介記事はこちら
具体的には、どんなフェスが行われたの?
でも実際、各地でどんなフェスが行われていたのか、気になりますよね。ここからは、学生レポーターから寄せられた記事を元に、各地のフェスの様子を一部、ご紹介します。フェスに参加した学生のみなさんが、“自分ごと”として環境について考えている様子も、ぜひ感じてみてください。
自然の楽しさと怖さを体感!「AQUAレンジャー」養成フェス
まずは「水」を思う存分体感したフェスから。“AQUAレンジャーを育てよう”というテーマで、本格的な1泊2日間のアクティビティが行われたのが、岩手県・宮城県の「みんなの北上川流域再生プロジェクト」です。当日は、ロープワークを学んだり、身をもって危険を体験したり、川下りをしたり、と、川の楽しさと怖さの両面を体感し、学生レポーターの服部拓也さん(東北大学)は、自分の果たすべき役割を感じた様子です。
近年は、「川は危険」と言われ、川で遊ぶ子供が少なくなっています。また、様々な要因による環境汚染、外来種の持ち込み等により川の生態系が壊れていく、といった現状があります。
こうした状況を変えるためには、まず川への関心を高めなければいけません。イベントなどを開催し、川で遊ぶ楽しさを子供に伝えることで、川に興味を持ってもらえるのではないでしょうか。そのための人材を育成するのが、今回のフェスの目的です。(レポート本文より)
川、そして自然に触れ合った2日間。自然の怖さを体感しつつ、それに勝る楽しさを経験しました。さぁ、これからはレンジャーが子供たちに伝える番。Aquaレンジャーにとっての本番です。これからどんな活動をしていくのでしょうか!?(レポート本文より)
外来種のカメを捕獲せよ!水生生物の宝庫を取り戻すフェス
そして、生き物の視点から水について見つめ直したのは、佐賀県の「佐賀城公園お濠のハス再生運動」。水生生物の宝庫である佐賀城のお堀には、ニッポンバラタナゴという珍しい魚が生息しています。しかし近年、外来生物ミシシッピアカミミガメがニッポンバラタナゴのエサであるハスを食い荒らしてしまうという問題が発生。フェスでは、このカメを捕獲することでハスのある美しい佐賀のお堀を取り戻すプロジェクトに取り組みました。学生レポーターの持木麻里さん(佐賀大学)は活動を通し、人間の“身勝手”について考えさせられたようです。
活動の結果、大小4匹のミシシッピアカミミガメが捕獲されました。3月はまだ水温が低いためにカメが捕獲できるかどうか、といったところでしたが、無事(?) 捕獲に成功。実際に捕獲したカメを見て、みんな嬉しそうです。(レポート本文より)
ミシシッピアカミミガメは外来種。本来は、日本、あるいは佐賀にいるはずのないカメです。人間の身勝手が、カメの運命やその他佐賀の在来種の運命を変えました。私たちが理想とする「自然」は、確かに私たち自身のために守っていく必要があります。しかし、人間の「身勝手」が様々な生き物の運命を変えているという事実を忘れてはいけないのだと思いました。(レポート本文より)
東京にもこんなに豊かな自然が!大都会の生態系を守るフェス
もちろん、大都会の東京や大阪でもフェスが開催されました。東京では「みんなでよくする東京湾2012」と題し、普段は立ち入りの禁止されている「鳥の島」の海辺の清掃活動を実施。学生レポーターの福岡沙美さん(立教大学)は、ゴミの多さ以上に、生態系の豊かさに驚いたようです。
「鳥の島」は様々な鳥たちの憩いの場であり、その鳥たちは東京湾の魚介類を食べています。しかし、東京湾に捨てられているゴミを間違って食べてしまう鳥たちもおり、ゴミが原因でこれらの生態系を壊しかねない状況です。
今回のフェスは、実際に海辺の清掃活動を行うと共に、そんな東京湾の豊かな生態系の輪を身近に感じることも、大切な目的のひとつです。(レポート本文より)
今回のフェスに参加して、こんな大都会の東京にも生態系が存在していることに、正直驚きました。そして、東京湾の魚介類を食べて生きている鳥たちが、もっと生きやすい素敵な場所になれば良いな、と個人的に感じました。そのためにも、東京湾をもっと綺麗にしていく活動に参加していきたいと思います。(レポート本文より)
以上、54のうち3つのレポートから、フェスの様子を少しだけ覗いてみましたが、いかがでしたでしょうか?
都道府県ごとに様々な表情を見せる「水」の環境、そして、そこに潜む問題を、楽しみながら顧みることができた「AQUA SOCIAL FES!! 」。体感を通しての学びは、参加者のみなさんのそれぞれの「気付き」のきっかけになったことは間違いないようです。
【速報】AQUA SOCIAL FES!! Student Campで
生まれたプロジェクトが始動しています!
そして、もうひとつ気になるのが、「AQUA SOCIAL FES!! Student Camp」で生まれた25のプロジェクトのその後。どれもユニークなアイデアだっただけに、プレゼンテーションだけで終わってしまっては、もったいないですよね。実はgreenz.jpには、参加した学生のみなさんから、その後の活動の報告や相談が続々と寄せられています。今回は、見事「折戸賞」と「学生賞」の2冠を達成したプロジェクト「シャッタークエスト」のその後についてご紹介しましょう。
「シャッタークエスト」とは?
シャッター通りのシャッターをそのまま活かしてまちなかを活性化させようという企画。新聞受けを「覗き穴」に見たて、そこにメモや動画を仕込み、コミュニケーションのきっかけを生み出すという斬新なアイデアです。「穴があいていたら除きたくなる」というシンプルで人の欲求を見事に捉えたアイデアが審査員や学生にも評価され、「AQUA SOCIAL FES!! Student Camp」では見事2冠を達成しました!
企画実現に向けて「まえばしシャッタークエスト」始動!
Student Camp終了後、「シャッタークエスト」を提案したメンバーのひとり、竹内躍人さんの地元・群馬県前橋市を舞台に、「まえばしシャッタークエスト」を実現することを決定。7月には商店街のシャッターを借りることができ、企画が一気に動き始めました。メンバー7名が集結し、まずは「のぞき見」の面白さをみんなに体験してもらおうと、9月にはまちの人の協力も得てイベント「まえばしシャッタークエスト Stage.0」を実施しました。
当日は、「試覗会」と称したのぞき見体験の他、まちのシャッターを数える「まえばしシャッターカウントウォーク」や、のぞき見の技を披露する「のぞき見オリンピック」、シャッター前のパーティ「シャッターフロントパーティ」などを開催し、20名以上の人が参加。メンバーのみなさんは、イベント成功で手応えを得るとともに、今後の仕組みづくりやイベントへの気持ちを新たにしたようです。
このイベント開催を受けて「まえばしシャッタークエスト」は、「いいね!JAPAN ソーシャルアワード」にエントリーされ、なんと最終選考まで残るという快挙も成し遂げました。本人たち曰く「実績1割・可能性9割」とのことですが、多くの人々の期待と注目を集めていることは間違いありません。
キーワードは「まちを変えるのぞき見」。12月以降、イベントも定期的に開催していくとのことなので、今後の動きにも注目です!
総括ページでAQUA SOCIAL FES!!の
「これまで」と「これから」を感じてみよう!
10ヶ月に渡り、全国にムーブメントを巻き起こしてきた「AQUA SOCIAL FES!!」。先日、その総括とも言えるページ「 AQUA SOCIAL FES!! 2012 活動記録」がオープンしました。
これまでのフェスのアーカイブ、参加人数、活動全体のゴミ総量、植樹数など、このフェスの成果を表すイラストと数字がわかりやすく紹介されているので、ぜひこちらもチェックしてみてください。学生のみなさんとは違う視点から書かれた各地のフェスレポートも必読です!
最後に、「AQUA SOCIAL FES!!」の現地の団体とのコーディネーションを行い、Student Campにも講師として参加した上田壮一さん(Think the Earthプロジェクト)と、greenz.jp発行人でStudent Campの講師も務めた鈴木菜央から届いたコメントをご紹介します。
AQUA SOCIAL FES!!は1年前はまだ机上の企画でした。でも1年が経って、全国50カ所で130回以上、リアルに人が集まり、みんなで何かを成し遂げる時間があり、多くの人たちの心に火がつきました。学生たちのReportからもそれは強く伝わってきますし、Student Campで出たアイデアが実現するなんてステキなことも起きています。僕自身、現場で一緒に汗を流し、自分でも驚くほどたくさんのことを感じ、学びました。トヨタはこの試みを「共成長マーケティング」と呼んでいます。これからも参加した全ての人が共に成長できる場であることを大切にしながら、2年目に向けて新たなチャレンジをしていきたいと思っています。(上田壮一さん)
AQUA SOCIAL FES!!に関わり、そして参加した皆様に、「お疲れ様!」ではなく、「おめでとうございます!」と言いたいです。考えてみれば、新型のクルマの発売キャンペーンなのだけれども、そこにはとどまらず、多くの人が関わり、つながり、笑顔になりました。そして、広告のあり方、企業のあり方という点でも、社会への新しい提案になりました。参加者、企業、広告代理店、NGO、メディアなどがつながり、全体として、まさに「あしたのいいね!をつくろう」という動きになっていたように思います。みんなで新しい時代の流れをつくれた、と言えるのではないでしょうか?そこに参加できたことを、嬉しく思います。(鈴木菜央)
フェスはこれで一旦区切りとなりましたが、「AQUA SOCIAL FES!!」は「継続」することを前提としているとのこと。また2013年以降もどんな展開を見せてくれるのか、今後のムーブメントの醸成に期待したいと思います!
2012年のAQUA SOCIAL FES!! を振り返ろう!
関連記事をチェックしよう!