ふわふわと光り輝く美しい凧。夏の夜にぴったりのとても幻想的な風景ですが、実はこれ、大気汚染の調査中なのです!今回は、この美しい凧を用いて北京の大気汚染を可視化する、大学生二人が立ち上げたプロジェクト「FLOAT Beijing」を紹介します!
世界でもっとも大気汚染が深刻とされている都市のひとつが中国の首都、北京。立ちこめる濃厚なスモッグにより視界を遮られ、飛行機は欠航、高速道路が通行止めになる事態もしばしば。スモッグに混じる粉塵が含む有害物質が、深刻な健康被害を引き起こすと懸念されており、北京の人々にとって外出時のマスクは必須アイテムに。
大気汚染は、グローバリゼーションにおける急速な発展とそれに伴う排出量の増加が原因だと言われています。毎日1,500台の新車が売られ、400万台もの自動車を有する北京。
中国のあるニュースでは「30年前、わたしが子どもの頃は外に出て星を数えていました。今は、全く見えない」と北京で生まれ育った方の悲痛な声も。しかし、北京市環境保護局の調査によると「ますます綺麗になっている」とのこと。そこへ在中米国大使館が独自の調査で異なる結果を提示し、大論争になっています。
そんな状況の中で「正確なデータを得るために、自分たちの手で計測しよう!」と声を上げたのは、なんと現役の大学生のXiaowei Wangさん(ハーバード大学院)とDeren Gulerさん(カーネギーメロン大学)。
フランスで行なわれた気球で大気汚染を計る「BALOON AiR DE PARiS」にインスピレーションを受け、始まったプロジェクトが「FLOAT Beijing」なのです。
凧をあげると、大気の汚染レベルに応じてLEDの色が赤、黄、青に変わり、位置情報と共に無線で送られます。その数値を用いて、大気汚染を可視化するマップを作成するというプロジェクトなのです。参加者自身が凧を作り、みんなで一斉に計測するワークショップは、今夏、北京各地で人々を巻き込み開催中です。
これまでの北京の人々は、問題意識を持っていても、正確なデータも提示されず、得られるのはインターネット上の曖昧な情報のみという、とても不安な状況だったそう。しかし、「FLOAT Beijing」によって、誰でも“自分の手”で大気汚染の状況を確認することが出来るようになりました。簡単に作れるよう設計された“最新式”装置に、凧あげという“昔ながら”の遊びを組み合わせた斬新なアイデアがもたらした大きな変化です。
「FLOAT Beijing」がもたらした変化はそれだけではありません。この凧が空一面埋め尽くすと、そこにはきらきら瞬く満点の星空が広がります。電気の明るさとスモッグによって失われてしまった北京の星空をもう一度!という二人の想いが込められた凧が、ひとびとの想いと重なり、幻想的な星空を生み出しているのです。
世界一深刻な大気汚染問題に対し、“自分たちの手で” 愛する街を守りたいと始まった「FLOAT Beijing」。現在は、Kickstarterにて4,500ドル(約36万円)以上の資金調達に成功し、北京のNPOや北京出身の凧職人の協力も得て、活動はどんどん広がっています。
どんな大きな問題でも、まずは小さなところから“自分たちの手で“変えていく!。その強い意志に、これからの草の根活動の可能性を感じたアイデアでした。
(Text : 鳥居真樹)
[via : Co.Exist]