川岸の木にぶら下がる”少年ターザン”、水中でゴキゲンな笑顔の男の子、欄干を超えて川へと果敢に飛び込む少年たち —。楽しく元気に川遊びする子どもの姿に、いつかどこかで見た日本の夏の風景が自然とよみがえってきます。
2012年7月23日、福井市呉服町の文化創造塾「FLAT」では、このフォト作品の生みの親であるフォトエコロジストの村山嘉昭さんによる「『川ガキのいるところ移動写真展』&トークショー」が開催されました。
”川ガキ”とは、川で元気よく遊ぶ子どものこと。かつては、日本のいたるところに生息していた”川ガキ”たちも、いつしか、絶滅すら危惧される存在となってきました。
村山嘉昭さんは、水質汚染や河川開発だけでなく、人々の川に対する無関心が、子どもが元気に遊ぶかつての川の風景を失わせているのではないかと考え、ライフワークとして、2000年頃から日本各地を巡り、”川ガキ”たちのリアルな姿を撮影。また、2003年からは、川遊びの魅力を広く伝え、人々の水辺への意識や関心を蘇らせようと、全国の公園や河原、水族館などで”移動写真展”を開催しています。
川辺川(熊本県)・四万十川(高知県)・郡上八幡(岐阜県)など、日本各地の川で、水を得た魚のように生き生きと遊ぶ”川ガキ”たち。タイヤチューブで川下りをしたり、橋の上から川に飛び込んだり、川にもぐって水生生物を穫ったりと、ワイルドな子どもたちの姿に、自身の子ども時代の思い出を重ね、ノスタルジーに浸る大人も多いそうです。
もちろん、彼ら”川ガキ”が安全に川で遊べるのは、他ならぬ、地域コミュニティのサポートがあってこそ。手作りの浮標で子どもが安全に楽しめる川遊びエリアを設けたり、保護者やボランティアの地域住民・学生らが交代で子どもの見守りをするなど、地域ぐるみで子どもの川遊びを支えています。
村山さんは、”川ガキ”たちが地域にもたらす影響について、次のように述べています。
子どもが川で遊びはじめれば、親たちが川に関心を持ち、次第に地域全体が川を意識するようになる。「川で遊ぶ子どもたちのために、川をキレイにしよう。自然を守ろう」という気持ちが芽生えてくる。
川遊びをする子どもがきっかけで、保護者や地域住民が連携し合うようになり、さらには、水辺の環境保全やよりよいコミュニティづくりにもつながる —。地域コミュニティを活性化させる上でも”川ガキ”はとても貴重な存在といえるでしょう。
”川ガキ”の元気な笑顔に、自身の子ども時代の楽しい夏を懐かしみつつ、大人となった今、「次世代を担う子どもたちに、何をすべきなのか?」をふと考えさせられる、奥深いイベントでした。