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トム・ケリーさん、ジョン前田さん、河瀬直美さんらが登場!”広めるに値するアイデア”を18分でシェアできる「TEDxTokyo 2012」 [イベントレポート]

TEDxTokyo

“Where Art Meets Science” (科学とアートが出会う場所)をテーマに、6月30日、渋谷ヒカリエにて「TEDxTokyo 2012」(テデックス・トーキョー)が開かれました。

「TEDx」は米国からはじまった”ideas worth spreading” (広めるに値するアイデア)という精神のもとに世界各地で発足されているコミュニティです。東京をベースとする「TEDxTokyo」は、Patrick Newell (パトリック・ニューウェル)とTodd Porter(トッド・ポーター)によって創立されました。

反響を呼んでいるのは、個性的なスピーカーのアイデアが18分以内のスピーチを通してシェアされ、その講演がオンライン上で見られること。これからご紹介するスピーチも、YouTubeで見ることが出来ます。

今日は34人のスピーチの中から、一部のスピーカーの方のお話をレポートしたいと思います。

トム・ケリーさん「クリエイティビティのスイッチをオンにする」

1人目に、「科学とアート」というテーマに最初に触れるのに相応しいイノベーションの伝道者、作家のトム・ケリーさんのスピーチをご紹介します。

トムさんは「クリエイティビティを発揮したいと決める」というアイデアを提案しました。イェール大学に在籍する心理学者のロバート・スタンバーグさんによると、 クリエイティビティの高い人たちには共通点があり、それはある時、あるタイミングで「クリエイティビティを発揮したい」と決めていることだそうです。

普通の成人の脳は、そのスイッチがオンになっていないので、クリエイティビティに自信をつける為に「発揮したい」と決めることが必要で、 トムさんいわく「クリエイティビティを選ぶか選ばないか、それは皆さんの自由です」とのこと。このアイデアはトムさんによる5つのアイデアのうちの1つです。2つ目からはもう少し具体的な提案がありますので、続きは動画でどうぞ。

加藤登紀子さん「 ”Smile Revolution” で世界を変える」

2人目は、先日の首相官邸前の大規模デモが記憶に新しい反原発のテーマについて語られたシンガーソングライター、環境活動家の加藤登紀子さんのスピーチから。

加藤さんは詩の朗読の中で

生きることがどこかで破壊や破滅につながる生き方ではなく、限りない喜びにつながる生き方を見つけたい。生きることに素直に向き合い、真剣に取り組み、微笑みながら生きることで世界を変えていきたい

と語り、大飯原発の再稼働が決定したことや、最近になって改訂された原子力基本法に「我が国の安全保障に資する」という文が加えられ核の軍事的利用を示しているという話をあげて反原発を訴えました。

加藤さんの「今、本当に重要な転換期に来ている」という言葉は心に残り、一人一人が自分の意見を持って声をあげていきたいと思いました。

小室 淑恵さん「ワークライフバランスが日本の未来をつくる」

今日本は少子化と言われていますが、その原因はどんなことなのでしょうか?お子さんを育てながら社会起業家として働く小室さんは、「私は夫の長時間労働が真の少子化の原因だと思っています」と言います。

以前は、毎日深夜に帰宅をしていた旦那さんが働き方を変えて育児・家事を手伝ってくれるようになってから、小室さんの気持ちもがらっと変わって安心できるようになり、現在はお腹に2人目のお子さんがいらっしゃるそうです。

さらに、小室さんのアイデアは、少子化だけでなく、うつ病、介護、財政難や年金の問題も解決するというもの。それは長時間労働が負のスパイラルを生み続けるのに対して、短時間労働で働く被雇用者が増えることが社会全体の豊かさにつながっていくという、明解なロジックでした。

もし、今の女性が子どもを持ちたくないと思っている理由の多くが社会環境によるものだとしたら、それは悲しいことだし、少しづつでも変えていければと思いました。 子どもが欲しいと思っている方も、家庭や社会の問題を変えたいと思っている方も、知って損はないアイデアです。

とても面白いフリーダイビングのお話しをしてくれたギネス世界記録保持者 二木 あいさんとパトリック・ニューウェルさん
とても面白いフリーダイビングのお話しをしてくれたギネス世界記録保持者の二木 あいさんと、パトリック・ニューウェルさん

ここでちょっと「TEDxTokyo」発起人のパトリック・ニューウェルさんのこともご紹介したいと思います。東京インターナショナルスクールの創立者でもあるパトリックさんは、世界を旅する中で、教育分野において行われている様々なテクノロジーやデザイン、脳基本の学習法や成果方法などの恊働モデルを取り入れ、行く先々でそれらを広める事に助力されています。

会場は終始リラックスした雰囲気でしたが、司会をつとめていたパトリックさんの力も大きかったと思います。

TEDxTokyo イベント中にも、実況や撮影、アップロードに向けての作業が進みます。 TEDxには沢山のボランティアの助力があり、この日の為に何ヶ月も費やされてきました。
TEDxTokyoイベント中にも、実況や撮影、アップロードに向けての作業が進みます。TEDxには沢山のボランティアの助力があり、この日の為に何ヶ月も費やされてきました。

前田ジョン「芸術科専攻の全ての者たちよ、どこにいても元気を出せ」

元MIT(マサチューセッツ工科大学)の教授、そしてロードアイランドデザイン美術大学学長でアーティスト、コンピューター科学者でもある前田ジョンさんは、教育の根幹 = STEM(サイエンス・テクノロジー・エンジニアリング・数学)にアートも取り込もう、というSTEAM運動を進め、芸術教育を推進しています。

アートと科学は一見別のことのように思えるけれども、今は全てのことが融合できる時代になっている。その二つは、実は人の頭の中で分断されてしまっているのですから、頭の中で融合することも出来るんです。

アメリカに豆腐屋さんの息子として生まれ、コンピュータを親友のようにして育ったという前田さんのお話しは痛快で、会場を大いに盛り上げていました。その世界観はデザイン、アート、国境などのさまざまな壁を越えて私たちの視点をすくい上げ、高みへと連れて行ってくれたようでした。

川村真司さん「大事なのは、アイデアを実現すること 」

同じく、日本とアメリカというクロスカルチャーを背景に持つスピーカーに、先日 greenz.jpでもインタビューをさせていただいたクリエイティブ・コミュニケーターの川村真司さんがいました。

川村さんは

どんなに小さくても、良いアイデアだったらつくる価値があると思うし、クリエイティビティのパッションが原動力になる。アイデアに命を吹き込んで実現することが大事なんです。時間や予算がなくても、良いアイデアがあればつくることができる。 それは予算の大きさの問題ではなく、アイデアの大きさの問題です。つくることをはじめましょう。

と、アイデアを持つ人たちを鼓舞してくれました。

また、川村さんの英語のスピーチからは、日本語だけでは伝わってこない説得力がありました。英語、そして同時通訳される言葉を通して、色んな国の人とつながることができるということも、TEDx の醍醐味の1つです。

池上高志さん「複雑さを受け入れ、書を捨てよ、町へ出よう」

TEDxTokyo Takashi Ikegami

今回の科学とアートというテーマに相応しく、学者の方の参加も多く見られました。中でも科学とアートを体現している人は、複雑系や人工生命の研究者でもあり、アーティストでもある池上高志さんではないでしょうか。

池上さんは、心はマッシブ・データから生まれ出ずるものでは?という理論から、複雑な世界をとらえる ”Maximalism” (マキシマリズム) を提唱し、アート作品の解説を通してマシーンでシュミレートされる世界の面白さを垣間見せてくれました。

他にも、ロボット工学と拡張現実の研究者の稲見昌彦さんが目の前にある物を透かしてしまう光学迷彩システムの映像を見せたり、建築家の鈴木エドワードさんが電子核のモデルをつかってプレゼンテーションしたりと、技術の進化に驚かされるスピーチが続きました。

Open Reel Ensemble「古い磁気テープとコンピュータから生まれた新しい音楽」

オープンリールデッキという旧式の録音装置と、コンピュータを使ったライブで会場を湧かせてくれたメディア・アーティストのOpen Reel Ensemble。この日は、オーディエンスの声をその場で録音し、即興で音楽に変えるというパフォーマンスを披露しました。彼らの音楽は、映像で見るのが一番楽しいので、ぜひ映像でその熱狂ぶりをご覧になってみてください。

”テクノディリック・ビジュアル・コメディ次世代型エンタテインメント集団” 白Aの映像とダンスを駆使したパフォーマンスも大人気でした。

河瀬直美さん「名前のある、あなたとつながりたいと思っています」

殯の森』でカンヌ国際映画祭グランプリを受賞した映画監督の河瀬直美さんは、ご自身を育ててくれたおばあちゃんの話から、「映画は時間を巻き戻せるタイムマシーン」という映画への思いを語り、「なら国際映画祭」を主催するに至った経緯をお話ししてくれました。

最後に「皆さん、と言うと誰も読んでいない気がします」と言い、身近な人たちの名前を呼びながらカメラの向こうに語りかけたスピーチは、とても心に残るものでした。

イベントの最後は、一人一人にジャンベが配られ、ドラムカフェジャパン(DCJ)の演奏に合わせて太鼓を叩くというパフォーマンスでしめくくられました。ドラム奏者がリズムを刻み、聴衆が参加するセッションは心と体の調子を整えることが報告されており、DCJは東北を中心に何万もの人々の手助けをしてきたそうです。

ほかにも、たくさんの素晴らしいスピーチがありました。TedxTokyoのチャンネルから、他の方のスピーチも見ることができます。

TEDxTokyo

イベントを通して印象的だったのは、さまざまな人種や年齢の方が集まり、とても暖かい雰囲気だったことです。知力とダイバーシティ(人種の多様性)から生まれた体験は、大きな感動を残してくれました。今回のように多様な人が集まって気持ちを集めることは、何か素晴らしいものを生み出すのかもしれない、ということに気づいたのは大きな発見でした。映像を通して、沢山の方にクリエイティビティや科学、人のつながりから生まれたグルーヴが伝わればと思います。

TEDxTokyo

スピーカー 一覧

セッション 1 「越境」
ジョン・健・ヌッツォ
黒川 清
羽生 善治
二木 あい
稲見 昌彦
キャスリーン・パイク
ホワイ・チェン・チャン
デイビッド・マッコーガン
加藤 登紀子

セッション 2 「展望」
ターンテーブルライダー
トム・ケリー
斉藤 実
小室 淑恵
池上 高志
家森 幸男
藤原 志帆子
川村 真司
エヴァ・ケストナー

セッション 3「縁」
オープンリールアンサンブル
イェスパー・コール
河瀬 直美
宮崎 良文
鈴木 エドワード
大木 洵人
小熊 弥生
稲蔭 正彦
白A

セッション 4 「観」
浅野 瑞穂
ジョン・マエダ
牛場 潤一
柳沢 正和
岡 瑞起
柴崎 亮介
ジョン・フランシス
ドラムカフェジャパン

サイエンス x アートの世界を探求するプロジェクト

リアルに国境を越えたくなったら旅に出るしかないよね!