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イノベーションを学ぶために世界中から生徒が集結!ビジネス、デザイン、文化の間に立つハイブリッド人材を育てるロンドン芸術大学

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社会起業家の発祥地の一つと言われているイギリス。「ソーシャルイノベーション」の分野で常に一歩先を進んでいるこの国には、それを学ぶ場も増えてきているようです。

今日は実際に、ロンドンで「ソーシャルデザイン」をテーマに学んでいる堤惠理さん( @tsutsumalu)のレポートをお届けします。

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ビジネス、デザイン、文化。密接に結びつくこの3つの分野を理解し、新しい変化が生まれる環境をつくりだす。私はいま、そんなことを研究するロンドン芸術大学セントラルセントマーチンズ校の「イノベーションマネージメント」という大学院コースに通っています。

セントマーチンズといえば、ファッションデザイナーのジョンガリアーノや、ステラマッカートニー、アーティストのギルバート&ジョージなど、ファッションやアートの分野で活躍する卒業生を多数輩出していることで知られるアートスクール。この学校で3年前に新たにつくられたのが、この「イノベーションマネージメント」という2年間の大学院コースです。

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セントラルセントマーチンズ校の様子

「イノベーション」という言葉は様々な企業や団体によって使われ、その言葉の意味に疑問を感じる人も多いかと思います。このコースで学ぶ「イノベーション」とは、デザイナーが普段行っている問題解決のプロセス(デザイン思考)を、ビジネス領域で活用していくことで、新たな変化を生み出すことです。

私はもともと広告会社で勤めており、そこで培った経験やスキルをもっと直接世の中の役に立つことに使えないか、という気持ちから「ソーシャルイノベーション」や「ソーシャルデザイン」という分野に興味を持ち、このクラスに入りました。

このコースの特徴は、なんといっても世界中から集まった生徒たち。出身国はコロンビア、ドイツ、スペイン、ノルウェイ、ブルガリア、スイス、ブラジル、ポルトガル、中国、韓国、ロシア、インド、アメリカなど。

またバックグラウンドも、プロダクトデザイナーやグラフィックデザイナー、フォトグラファー、コピーライター、エンジニア、起業家、言語学者、弁護士、マーケティング/ビジネスコンサルタントなど本当に様々です。それぞれの分野で実経験を積んだ十人十色の生徒たちが、新たなビジネス手法を身につけたい、別の業界で自分の力を試してみたい、という目標をもってこのコースに参加しています。

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ポートベロマーケットでのフィールドワーク

1年目はグループワークが中心となり、具体的な課題を通して新しいモノやサービスをつくる基本的なデザインプロセスを身につけていきます。

例えばロンドンのストリートマーケットで観察・調査(フィールドワーク)したり、日常で使い古された言葉を文化・経済・政治といった社会文脈から分析したり、またガーナの大学とコラボレーションして、子どもたちのスポーツプロジェクトをイギリス政府のスポーツ団体に提案する機会もありました。

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ガーナスポーツプロジェクト展示会

そして2年目には、それぞれがリサーチしてみたい業界で実際に働きながら、イノベーションのチャンスを探っていくワークプレースメントが行われます。ワークプレースメントを行う会社は、内容も場所も、自由に選ぶことができます。

そのため、アメリカのファッションデザイナーがグローバルシンクタンクで、スイスのビジネスコンサルタントがイギリスのデザイン会社で、イギリスのプロダクトデザイナーが上海のリサーチ会社で働いたりすることができます。

ルールはただ一つ。その業界で、自分なりのイノベーションのチャンスを探っていくこと。このようなコース内容のため、コース修了後にはまったく違うキャリアへ進む人もいます。

私はロンドンにあるソーシャルデザイン会社「thinkpublic」でワークプレースメントを行い、そこでの仕事を通して現在のソーシャルデザインの課題、自分の経験やスキルの活用方法などについて試してみることができました。

世界中いろんな場所で全く違う仕事をしていた人たちが、ひとつの目標にむかって切磋琢磨し、頭をひねる。これは本当にエキサイティングな経験ですが、中を開けば笑いあり、ケンカあり、涙ありのドタバタ劇が繰り広げられます。しかし、そんな中でもこのコースを通して学べるのは、様々な方向から物事を洞察するクリティカルな視点、そして多様性のあるチーム内での自分のスキルの活用の仕方です。

新しいビジネスアプローチを探している人、グローバルなチームで自分の力を試してみたい人は、ぜひウェブサイトをチェックしてみてください。

(Report by Eri Tsutsumi)

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デザインウィークにて、街角インタビューの様子

教室内での勉強だけでなく、フィールド調査をしたり会社で働きながら学んだりと、かなり実践的なコースですね。そうした経験は卒業後も様々な形で活かせそうです。

6月14日〜23日には卒業制作発表、そして19日にはイノベーションに興味のある色々な業界の方を学校に招待して、コンフェレンスを行う予定だそう。この様子は日本からでもライブストリームで見ることもできるので、興味のある方はぜひ!