こんにちは!greenz.jp編集長のYOSHです。
グリーンズ初の編著本『ソーシャルデザイン』に続き、共著で『クリエイティブ・コミュニティ・デザイン』という本が5月末に出版されました!コミュニティデザインをより自分ごとにするための、大切なエッセンスが詰まった一冊に仕上がっています。その中から今回は、出版社のフィルムアート社から特別に掲載許可をいただいたコラムをお届けしたいと思います。
何より、共著者のラインナップが豪華!green school Tokyo の講師もお願いした紫牟田伸子さんをはじめ、グリーンズでもご紹介したミラツク西村勇也さん、OCICAの友廣裕一さん、いえつくなどお世話になった方々のほか、成瀬猪熊建築事務所、田北雅裕さん、アサダワタルさん、大和田順子さん、マエキタミヤコさんなど、錚々たる顔ぶれ。
僕もこちらのコラム「コミュニティの温度を保ち続けるために」をはじめ、「コミュニティにおける成功とは?」など、3本ほど書き下ろしています。他にも示唆に富むコラムがまとまった貴重な(奇跡の?)一冊なので、ぜひ一度お手にとっていただけると嬉しいです!
また、今年から来年にかけては、おかげさまで出版ラッシュが続きそう。『ソーシャルデザイン』の続編をはじめ、グリーンズの周辺で起こっていること、そこから見えてくた未来をつくるためのヒントを、書籍というかたちでみなさんにお届けし、オープンに共有してゆきたいと思っています。どうぞ、お楽しみに!
編集とコミュニティデザイン
ここではウェブマガジン「greenz . jp」での経験から、コミュニティデザインについての考えを整理したいと思います。とはいえウェブマガジンの編集長がコミュニティデザインの話をすることに、違和感がある方もいるかもしれません。しかし僕の仕事の大半は、「コミュニティの温度をあったかくすること」、つまりコミュニティデザインなのです。
雑誌の黄金期に代表されるように、かつてはスター編集長の時代でした。先見性と卓越したセンスで、「時代の気分をつくること」が仕事という華やかな現場。
しかしソーシャルメディアの登場以降、事情が一変します。編集の現場が民主化され、誰でもマイメディアの編集長になることができるようになったのです。それぞれがユニークな個性と紆余曲折のストーリーを持ち、面白いことを仕掛けようとウズウズしている。そんな当たり前のことにようやく気付くことができた幸運な時代に、僕たちは生きています。
面白いもので、誰もができるようになればなるほど、それを専門としてきた人たちの圧倒的なクオリティに驚かされることがあります。すぐには追いつけないスター編集長の領域に少しでも近づくために、半人前の僕がとった戦略がコミュニティデザインなのです。
主役はグリーンズに関わってくれるメンバー一人ひとり。彼らの自発的な意欲、貢献したいという意志を引き出すことで、他のメディアにはないユニークな読後感をつくれるのではないか?
もはやひとりがスター編集長である必要はありません。さまざまなご縁でグリーンズという銀河系に惹き寄せられてきたメンバーがそれぞれ、そこにいながらにしてスターであり、僕は時々に応じて、星々をつなげて美しい星座に見立てていく。それが、僕の考える〝これからの編集〞であり、コミュニティデザインなのです。
三つの「つくる」
コミュニティの成功の鍵を握るのは、コミュニティの温度です。普段から”温度”が温まっているからこそ、いざというときの積極的な参加が期待できる。では、どのように温度を温めればいいのでしょうか?
グリーンズの場合、僕が意識しているのは三つの「つくる」です。
一つ目の「つくる」は、「らしさ」です。リーダーの最初の仕事は、コミュニティに”いのち”を吹き込むこと。「このコミュニティが何のために存在するのか」という核となる部分を、リーダー本人の言葉で言語化することからコミュニティがはじまります。
例えばグリーンズのミッションは「自分たちの手で自分たちの未来をつくる人たちを応援する」こと。このようなミッションに共感する人たちが集まることで次第に「らしさ」がつくりあげられていくのです。
「らしさをつくる」とは、同時に明確な線引きをすることでもあります。自発的なアクションを歓迎するプロジェクト型コミュニティの場合は、能動的な提案をどんどん受け入れていく方が健やかです。そのために、どこまでがOKで、どこからがNGなのか、あらかじめ目安となるラインをひいてあげましょう。
二つ目の「つくる」は、「可能性」です。 コミュニティが賑わうひとつの契機は、予想外の広がりを見せたとき。「らしさ」がそれまで暗黙で了解されてきたことを見える化すること、つまり過去の整理だとすれば、「可能性」は未来に関わるのです。
グリーンズも読者インタビューを繰り返しながら、まだ届いていない層へアプローチするために、さまざまなコラボレーションを仕掛けています。常にコミュニティの伸びしろを意識しながら、ひとつひとつ丁寧に接点を広げてゆくのもリーダーの仕事です。
三つ目の「つくる」は、「居場所」です。メンバーにとって「ここにいてもいいんだ」と思えるような安心の場があって初めて、自発的な行動が生まれてきます。 コミュニティを育むという意味では、ここがもっとも大切なポイントといえるでしょう。
信頼と貢献にあふれる居心地のよい場所をつくるために、グリーンズでは「学びの共有」に力を入れています。それは、それぞれの興味関心だけでなく、ライフステージに合わせた成長曲線も共有し、お互いの挑戦を当事者として支え合うような仕組みです。
具体的にはメンバーと定期的に面談し、その人の強い問題意識から始めるプロジェクト(マイプロジェクト)を一つ持ってもらいます。ここでは失敗に見えるようなことも、他のメンバーへの気づきとして尊重されます。共に成長を経験することで自分を内省し、自分を生かせる場所が多層に見つかってくるのです。
ここで忘れてはいけないのは、”卒業”のタイミングをしっかり用意すること。人生の転機は、ときに突然やってきます。それはリーダーも含めてです。グリーンズの大切にしている哲学は、さまざまな変化がトレードオフにならない関係づくりです。戻りたかったらいつでも戻ってこれるような「卒業生」というポジションも、きっと立派な居場所になるはずです。
「コミュニティ・マッピング」と「要項」
最後に具体的な手法を二つご紹介したいと思います。
(1) 関係性を可視化する「コミュニティ・マッピング」
コミュニティが広がるほど、どんなメンバーが関わってくれているのか把握しづらくなります。人の記憶のキャパシティに限界があるとすれば、それを手助けするツールが必要です。そのために「コミュニティ・マッピング」という図を作りました。
内容はいたってシンプルです。グリーンズの場合、NPO法人の「会員」コミュニティ、記事を執筆する「ライター」コミュニティ、行政や企業に企画を提案する「プロデューサー」コミュニティなどコアなコミュニティがあります。「サポーター」コミュニティやスクールの「同窓会」コミュニティ、「卒業生」コミュニティなども合わせると、数百人という単位です。「コミュニティ・マッピング」は、それらの全景を一望するための見取り図なのです。
コミュニティ・マッピングの例
(2) 小さな疑問を解消するための「要項」
各コミュニティでの振るまい方を規定するのが「要項」です。中身はウェルカムメッセージから請求書のやりとりまで多岐にわたりますが、要はFAQをまとめたものです。新しいメンバーがコミュニティに入るときは、必ず読み合わせをしています。
要項で大切なのはリスペクトです。例えばグリーンズでは「はじめに」というところでこんなことを書いています。
このコミュニティの中にいるのは、価値観は多様ながらも”グリーンズ”的な思いを共有している方々です。志を同じくしているからこそ、”管理”よりもひとりひとりを信頼し、その方の決断を尊重してゆきたいと思っています。
誰もがそのコミュニティにとって、かけがえのない存在である。そんなことを普段から伝え合えるような健やかなコミュニティでありたいと思っています。
「コミュニティ・マッピング」も「要項」も、一度作ったら完成というものではありません。生物さながらに絶えず進化していくものです。この成長の実感が、コミュニティデザインの醍醐味といっても過言ではありません。
そのためにはリーダー自身が定期的に内省する時間をしっかり持つことが大切です。コミュニティの光源は、リーダーであるあなたです。まずはあなたがたくさんのものを受け取り、自分自身を温めておくことを忘れないで下さい。
ここまで読んでいただきありがとうございます!編集とコミュニティデザインの関係についてのコラム、いかがでしたでしょうか?僕としてもこれを機に最近考えていることをまとめることができ、改めて編集者の二橋さんに感謝です。
「コミュニティデザインは誰でもできる仕事」と山崎亮さんもおっしゃっていますが、コミュニティデザインはこれから当たり前のスキルとなると同時に、いかに”クリエイティブに”、持続するコミュニティをつくっていくのか、コミュニティの質が問われてくると思います。
僕が書いたことも2012春までの気付きを整理したもの。グリーンズもNPO法人し、「グリーンズ会員制度(正式版)」を一緒に考える「グリーンズ会員β」など、これからますますコミュニティとして変化&進化していくと思っています。
ぜひみなさんのご意見やアドバイスもお待ちしています!引き続きどうぞ、宜しくお願い致します。
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コミュニティデザインについてもっと知ろう