“科学”と聞くと、ついつい専門的で難しいイメージを抱くかもしれません。
アインシュタインの相対性理論も、ニュートンの万有引力の法則も、名前となんとなくの仕組みは言えても、きちんと説明しようとすると何だかあやふや・・・きっと自分の暮らしの中で、科学との接点ってほとんどないかも?という方も多いのでは?
でもちょっと待って下さい。科学って実はとっても面白いんです!難しくてわからない?そんなあなたでも大丈夫!そんな専門家だけのものと思われている”科学”の世界を、美しいビジュアルとスマートな構成で伝えようという試みがあるんです。今回はそんな科学の面白さをハイセンスに伝える「SYNAPSE Project」をご紹介します。
科学は専門家だけのもの?
そもそも”科学”って何なんでしょう?脳科学、物理学、地質学、生物学、自然科学・・・色々な分野がそれぞれの専門性をもっています。これらを総称して科学と言っているのですが、わかりやすく言えば小学校などで習っていた理科みたいなものですね。
そんな多彩な専門分野で、専門家同士が日夜研究に明け暮れて議論を繰り広げているんです。飛び交う専門用語で、白熱する議論。科学者を虜にして、一生研究に没頭してしまう程に魅力的な科学の世界。もしもきっかけさえあれば、私たちにも楽しむチャンスはあるのかもしれません。
科学者×編集者×デザイナーで生み出す新しいメディア
そのきっかけをつくろうというのが「SYNAPSE Project」です。大きな柱の1つがこちらのフリーペーパーで、発行元は東京大学となっています。
日本でもトップクラスの教育機関であり、研究機関でもある大学の科学情報誌・・・と聞いてしまうと、ちょっと腰が引けてしまいますが、オープンキャンパス向けに作られたとの事で、冊子の形も独特でファッション誌やカルチャー誌と言われても納得してしまいそうなセンスの良い風貌です。斬新なエディトリアルデザインは、デザイン事務所NOSIGNERが担当しています。
開いてみると・・・大写しのヴィジュアルが大きく掲載されています。こちらに掲載されている写真はなんと太陽系最古の火成岩の拡大写真。最古の、と聞くとなんだかとても貴重に思えますが、まるでグラフィティアートのような一目でわかるおもしろさがあります。
第一号のテーマは「パターン・カタチ・リズム」。先ほどの隕石などこちらで取り上げられているものは、“あなたの研究の中で最も美しいカタチを教えてください”という内容で取材したものなのです。
科学を紹介するメディアなのに、専門誌のものでも入門書でもないまったく別の切口をとっている「SYNAPSE Project」。不思議なその魅力の秘密を、編集者でコーディネーターの塚田有那さんにお伺いしました。
「学問って1つのカルチャーなんです。」
塚田有那さん
科学ってとっても面白いんですよ!でも、面白い最先端の研究ほど、なかなか表に出て来ないんです。メディアに取り上げられる“科学”は、わかりやすく誇張されたものばかりで、真の魅力を伝えきれていないと感じています。科学に興味がない人でも、別の角度で体験できれば、それぞれが面白さを発見できると思うんです。
科学は専門家の領域であるというイメージは確かにあります。しかし、科学者ではない塚田さんが何故このプロジェクトを始めようと思ったのでしょうか?
きっかけは、科学未来館で開催された「サイエンスアゴラ」というイベントです。科学をわかりやすく伝える”サイエンスコミュニケーション”という活動を進めている大学時代の先輩に誘われて参加しました。当時の私はアートやデザインを扱う雑誌社で働いていて、科学者の方のお話はよくわからないと思い込んでいたんです。
しかしそのイベントは、アーティストの高木正勝さんと脳科学者の坂井克之さんの対談があったり、私にとっても身近なものでした。坂井先生のお話が本当に面白くて。それならこんなにおもしろいサイエンスと、アートやデザインなどの他ジャンルをかけあわせたらどうなるんだろう?と思ったんです。
塚田有那さん
最初の半年くらいは、「何をするかも決まっておらず情報交換を繰り返す日々」だったそう。そんな時にちょうど東京大学広報室の方との出会いがあり、“アカデミック・グルーブ”という“学問の面白さを伝えていく”ことを目指す運動と、私達が探っていた新しいサイエンスコミュニケーションの方法論が合致し、新たなメンバーを交えてSYNAPSEが誕生したのです。それから、フリーペーパーの発行やワークショップの開催につながっていきました。
学術の世界って、実はこんなにおもしろい!?
アートやデザインへの造詣があり、編集者という情報を扱う技術をもっていた塚田さん。フリーペーパーの発行に始まり、ワークショップやウェブサイトへと「SYNAPSE Project」の活動は広がっています。
問題意識から始まることもあるかもしれませんが、私の場合は興味を持ったことにまずはとりかかってみた、という感じです。わかりやすい答えばかりだと魅力的なものが見えなくなってしまう。「SYNAPSE Project」では、そういう本当の面白さにちゃんと目が届く機会をつくりたいと思っています。
科学や学術と言うとむずかしくて専門的なイメージですが、夕日の美しさに感動するような、普段の暮らしの中にも接点があるんですね。きれいな景色の写真を見たり、おもしろい小説や、心に響く詩を読むような、そんな気持ちで科学にも触れてみると、今まで知らなかった世界が見つかるかも?
SYNAPSEprojectのWEBサイトでワクワクする学術の世界を見てみよう
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