greenz people限定『生きる、を耕す本』が完成!今入会すると「いかしあうデザインカード」もプレゼント!→

greenz people ロゴ

民宿のIT化で村を訪れるファンを増やせ!Facebookで地域をサポートする「ヤドノマド」

greenz/グリーンズ ヤドノマド 利賀村

みなさん、国内を旅行する時、どこに泊まりますか?

高級ホテル、ビジネスホテル、温泉旅館、民宿、ゲストハウス、ユースホステル、国民宿舎…色々選択肢はありますが、いわゆる観光地ではない田舎で泊まるときは民宿という方が多いのではないでしょうか?しかも民宿に泊まると地元の情報お教えてもらえたりその地域のことをよく知る機会にもなります。

でも、いざ民宿を探そうとするとなかなか情報が見つからなかったり、見つかってもなかなか電話が繋がらなかったりしたという経験はないでしょうか?ほとんどの民宿はじゃらんや楽天トラベルで予約できないのはもちろん、ホームページもありません。そんな民宿の不便を解消しようというサービスがあります。

小さな宿のIT化をすすめるマイプロジェクト

それは「ヤドノマド」というもの。このサービスは地方の民宿のホームページやFacebookページを作ることでこれまで知られていなかった小さな宿と全国の人々を繋ぐというプロボノ活動で、現在、富山県の利賀村というところで活動を行なっています。

今回はこのヤドノマドをマイプロジェクトとしてはじめたリーダーのひとり長山悦子さんにお話をうかがいました。

長山さんは勤務するサイボウズ社ではgreenz.jpもお世話になっているサイボウズLiveを担当、仕事でもマイプロジェクトをサポートし、週末は自分のマイプロジェクトに携わるという忙しい毎日を送っているとのこと。仕事とプロジェクトをどう両立しているのか、そのあたりも聞いてきました!

リーダーの長山悦子さんのインタビュー!

長山悦子さん
ヤドノマド 長山悦子さん

石村 これまでのヤドノマドの活動を教えて下さい。

長山 まず、利賀乃家民宿いなくぼという2軒の民宿のホームページ作成を支援し、民宿ポータルサイトを制作しました。

また、プロモーションとして利賀村フォトコンテンストを実施して、このキャンペーン期間中には利賀村のFacebookページのファンが200名以上増えました。

村ではFacebookセミナーを開催して、今では人口670の村で70人以上がFacebookをつかっています。他にも、メンバーが実際に民宿に泊まって、地方民宿の良さを伝えるワークショップを開催しました。ここでは女将さんのモチベーションアップにつながりました。

greenz/グリーンズ ヤドノマド

石村 長山さんがこのプロジェクトを始めようと思ったきっかけから教えて下さい。

長山 もともと地域貢献には興味があって、学生の頃お世話になった農家民宿が限界集落にあり、こんな素敵な場所がみんなに知られないままなくなってしまうのは残念だと思っていました。サイボウズに入ってから直島の民宿に泊まった時には、予約の内容が上手く伝わっていないということで夫婦喧嘩になってしまってITを使ってこういう悩みも解決できるんじゃないかと思っていました。

そんな時にセミナーでもう一人のリーダーの野本さんと出会って、彼女のやりたいことを実現したいし、やったら自分も楽しいだろうなと思って始めたんです。

石村 なるほど。実際にやってみてどうですか?

長山 なんといっても楽しいです。自然体験も楽しいし、人の話も面白いし、新しいことにもチャレンジできるし、友だちと一緒に深くていい旅をしつつボランティアもして民宿も支援するというような感覚でやってます。

石村 利賀村の方たちの反応はどうなんでしょう?

長山 利賀村はもともと志がある所で、商工会も協力的だったのでスムーズに入ることが出来ました。その中で実際にお手伝いした民宿の方などは、「ホームページを見ました」という反応に効果を実感しているようで、Facebookをはじめた村の方もアップした写真に「いいね」がついたりすることが張り合いになっているみたいです。

ウェブの情報発信で今まで観てもらえなかった人に見てもらえるとか、Facebookでいいねがつくとかそういうリアクションって人を元気にするんです。ウェブを自分から勉強しようという方向にはなかなか行きませんが、情報が外に発信されていると思うだけで、もっと良くしていこうとかその人達なりにできることを積極的にやっていこうっていう発想につながっていると思います。

仕事とマイプロジェクトの両立は?

石村 仕事との両立は大変だと思いますが、それでも続けているのはどうしてでしょうか。

長山 はじめたからにはやめられないというのもありますけど、村のために何かをするというよりは、自分がいいと思っているものを人に薦めるためにやっているという思いが強いからでしょうか。

自分の団体を大きくしたいとか事業化して成功したいというよりは、同じような思いを持って地域なり民宿の役に立ちたいという若いネットワークで情報を共有してやっていこうという方向性を持っているのがつづけられている理由かもしれません。

石村 仲間を増やすことが大事だということですね。

長山 仲間ができれば、例えばおじいちゃんが雪降ろしできなくて困ってたらその中の誰かが手伝いに行って、行った人は楽しい時を過ごして帰る、そんなことが起きるかもしれない。そんな関係が作れればいいと思っています。

それを続けていくことでファンが増えて自律的にプロジェクトが回っていくようになればさらにいいですよね。そうしたら私もたまに遊びに行くだけでいいかなと思っています。

石村 それはいいですね。マイプロジェクトからマイビジネスへ、という流れもありますが、今後の展開も教えて下さい。

長山 利賀村から他の地域に広げたいとは思っています。一緒に地域のことを考えて行動してくれる人、伴走者のような人を増やせば観光客が増えるといった結果が伴わなくても村の人たちのモチベーションは上がるので、それで村の人たちが自律的に動けるような仕組みを作っていければいいと思っています。

社会起業家になりたいとか、ビジネスで成功して一旗揚げたいとかは思いません。ただ自分がやりたい事をやれればいいと思っていて、趣味に近いんだと思います。

石村 仕事で得たスキルを生かして楽しめる範囲でやっていく…ということですか?

長山 というよりは、私の中では仕事もこの活動も実はつながっていて、どちらもインターネットというツールを使って人と人が協力しあって何かを解決したりとか、前向きに活動できるような基盤を作るというところに向かっていると思っています。そのためのツールや仕組みを作るためにサイボウズで働いているし、そのための人が出会う機会を作る実験としてヤドノマドに携わっているんです。

企業だけでできることもないし、行政だけでできることもないし、地方だけでできることもない。だからどれもやろうとするとこうなってしまう、多分欲張りなんです。

石村 なるほど、仕事とマイプロジェクトが深い所でつながっているんですね。ありがとうございました!



地域活性という大きな問題を扱うマイプロジェクトをやりながらも、もっと大きな枠組みの中でその活動をとらえることで、いい意味で力が抜けている長山さん。

そのように取り組むことで、単に課題を解決することではなく、その先につながる関係づくりを重視する姿勢が非常に印象的でした。ITを通じて地方と都市をつないでいくヤドノマド活動に今後も注目です!

みんなどんなマイプロジェクトをやってるの?
「マイプロSHOWCASE」をみてみよう!