ほっこりとした、思わず手に取りたくなる柔らかいまるい積み木。青森の特産物であるりんごをイメージし、地元の木工職人さんたちが、青森の計画伐採されたスギを使って作った「りんごつみき」です。
青森の子育て環境の充実や林業の保護を目的としたブランド「森トイプロジェクト」から生まれたこのローカルなおもちゃは、八戸のポータルミュージアムなどを手がける、青森県のデザインカンパニー「tecoLLC.」が一貫してプロデュース。社名の由来は、「てこの原理のように、小さな市民の力で大きなもの(=社会)を動かす」なんだそう。
こちらのブランドを発見したのは、2月8・9・10日に東京ビッグサイトで行われた「第73回東京インターナショナル・ギフト・ショー春2012」。
このように、まだ広く世に出ていない、けれど新しい要素のつまった新進気鋭のブランドやプロダクトが一挙に集まるのが、ギフト・ショーの「ACTIVE CREATORSブース」です。
生まれたばかりのブランドが数多くお目見え!「ACTIVE CREATORS」ブース
ギフト・ショーは今年で37年目。出展ブースは常連の会社も多く、申し込みだけで定数に達してしまうのですが、ここ『ACTIVE CREATORS』ブースだけは、“ぜひマーケットに広げてゆきたい。応援したい!”と私たちが思うような新進気鋭のクリエイターさんにこちらからお声がけし、場を作っている、ギフト・ショーの中では特例のブースなんです。(ビジネスガイド社 ACTIVE CREATORSブース担当・正田さん)
来場者であるバイヤーさんたちに、毎年なにかしらのオドロキを与えられる場所にしようと、40ブース中の約半数は新規(展示会自体が初めてだったり、そのブランドの発表自体が初めてである、など)のブランドを誘致しています。
冒頭で紹介した「森トイプロジェクト」のように、地方ならではの特性や技術とデザインの力を融合した、アイデアブランドを数多く発見することができました。今回はその中から2つご紹介します。
エコバッグっぽくない、けど“ちゃんと環境にやさしい”「kna plus」
「kna plus」は福井県あわら市発、トウモロコシからできた植物性100%の天然素材で、土に還るエコバッグ。土の中で自然に分解し、有毒ガスも発しません。
福井県はもともと繊維産業が盛んな地域。knaplusを制作した金津繊維も、もともと資材用の繊維を扱う会社でした。繊維にまつわる高い技術と、自然豊かな福井の環境を活かしながら、新しいものを生みだしたい!という思いからこのエコバッグを作ったそうです。
ちまたで見かけるエコバッグは、麻布などを使ったアースカラーの素朴なものが多くて、デザインの選択肢は多くありません。それがいやで、パーティー帰りや、きちんとした服装にも似合うようなおしゃれなカラーとデザインのエコバッグを開発しました。
あと、わたしたちはズボラなので(笑)、コンビニのビニール袋みたいに、くるくるとまるめてそのままカバンに放り込んでもしわくちゃにならないよう、プリーツを採用しました。
ズボラな私としては、なんとも共感できる開発秘話です!繊維工業の技術に、使い手側の素朴なニーズを織り込んだ、アイデア・プロダクトです。
横浜市内の障害者施設とアーティストのコラボレーション「スローレーベル」
こちらは、「横浜ランデヴープロジェクト」から生まれたブランド「スローレーベル」です。
「横浜ランデヴープロジェクト」は、青山の文化複合施設「スパイラル」なども手がける「ワコールアートセンター」が行う、横浜市内の障害者施設や企業と国内外で活躍するアーティストをつなげ、特色を活かしたものづくりを行うプロジェクト。
(なんと!あのオシャレな「スパイラル」がワコールと関連があるって、みなさん知ってました?!)
16組もの多彩なアーティストやクリエイターが関わり、商品は横浜市の障害者施設の方々が手作業により作られています。ステーショナリーやアクセサリーなど、多岐に渡る商品を生み出しています。
驚いたのは、この「点字新聞のステーショナリー」!
皆さん、視覚障害者の方用に毎週発行される点字の新聞があることをご存知でしたか?点字加工を施すために、しっかりした上質な紙を使っているのにも関わらず、新聞であるゆえに読まれたら捨てられていました。
それはもったいない!ということで、封筒として再利用することに。so+baというスイス出身のグラフィックデザイナーと、Veronika Schapeasというドイツ人のブックアーティストがコラボし、「tactile」(触覚)というシリーズに仕上げました。すべて、障害者施設の方の手作りの一点モノです。
この封筒、触ってみると、びっくりするほど良い紙質で手触りもいいんです。点字の感触も新鮮で、ずっと触っていたくなります。届いた瞬間から、相手に驚きをプレゼントできそう。
「挑戦するクリエイターさんが、具体的にステップアップできる場所にしたい。」
ギフト・ショーは、来場者数が20万人を越える大規模な展示会です。そのため大手メーカーさんや老舗企業の出展が多いはずなのですが、なぜこんな“とがった”ブースを設けることになったのでしょうか?
ギフト・ショーは、メーカーとバイヤーのための具体的な商談の場。そのため大手メーカーの出展が多く、まったく新しいブランドを立ち上げた方や、異業種から参入されたクリエイターさんがブースを構えるには、どうしてもハードルの高い展示会でした。
そういったしがらみを無くし、新しいことを仕掛けようとしているクリエイターさんたちを応援するために5年前に作ったのがこの「ACTIVE CREATORS」なのです。
今までは、おしゃれなセレクトショップやミュージアムショップにしか並ばなかったような、とがったデザインのブランドさんでも、地方から足を運んだバイヤーさんと出会うことで意外な販路の開拓につながることもあります。(正田さん)
地方で生まれたばかりのブランドにとっても、ここに出展することで認知度も高まり、具体的なステップアップが見込めるんですね。
クリエイターさんからも「いい反応をもらえた」という声を多く聞きます。たとえば出展したクリエイターさんと高級アパレルブランドとのタイアップの話が開催期間中に出るなど、何か新しいことが生まれる、大きな飛躍につながる場にしたい。チャレンジするクリエイターさんたちにとって、手応えのある、熱のある場所にしたいと思っています。
自分の地元にも、新しいチャレンジに取り組むブランドがあったんだ!と、思わずアツくなってしまいそうな、驚きのつまったACTIVE CREATORSブース。バイヤー以外にも楽しめる場所です。次回開催が本当に楽しみですね!