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怒りでもなく、無関心でもない選択肢を、みんなに。原発の歴史を知り、未来を見つめるきっかけを作る「原発絵本プロジェクト」、元気玉プロジェクトに登場! [CAMPFIRE]

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あの事故から1年。日本人にとって「原発」は、特別な存在になりました。みなさんは、原発の問題をどのように捉え、周りの人とどのように話していますか? 中には、「触れ難い話題」として、避けてしまっている人もいるかもしれません。

今日ご紹介したいのは、原発に正面から向き合い、学び、悩み、そして伝えようとしている、普通の女の子たちのお話。彼女たちは今、「絵本」という形で、多くの人に原発について考えるきっかけを届けようとしています。

本日、マイクロパトロンプラットフォーム「CAMPFIRE」内の、震災関連プロジェクトに特化した「元気玉プロジェクト」にも登場した「原発絵本プロジェクト」をご紹介します。

「原発絵本プロジェクト」とは?

今までの、そしてこれからの、
この国の「ひかり」との付き合いかたを考えるために。

原発絵本プロジェクト」は、日本に原発がつくられていった歴史を分かりやすく絵本で表現することにより、大人も子どもも、すべての人がこの問題について考えるきっかけをつくるプロジェクト。ライター、イラストレーター、ウェブクリエイター等の有志のメンバーが集結し、現在、ストーリーとイラストの制作を進めています。最終目標は、もちろん、絵本の出版! そのために、まずは電子書籍版の完成を目指し、「元気玉プロジェクト」にて支援を呼びかけ始めました。

元気玉プロジェクトに登場!

元気玉プロジェクトに登場!

では、制作中の絵本をちょっとだけ覗いてみましょう。

主人公の龍と男の子

主人公の龍と男の子

物語の主人公は、7色の不思議な光を放つ龍(りゅう)と、小さな男の子。光を欲しがる大人たちの考えが絡み合ううち、龍のある重大な秘密が明かされていく、というストーリーです。

お分かりの通り、「光」は「電気」を、「りゅう」は「原発」を、表すたとえ。さらに読み進めるとかわいらしい王様(政府)と一緒に、なぜか猫の姿で描かれた大臣が登場したりもします。

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このような親しみやすいキャラクターと、やわらかいタッチのイラストで構成されているこの絵本には、専門用語が一切登場しません。専門用語どころか、「原発」という言葉さえもどこにも見当たらないのです。「原発の絵本」と聞いて、教材のような小難しいものを想像した方もいると思いますが、それとは全く違うものになることは、間違いなさそうです。

絵本らしいファンタジーの世界に浸りながら、複雑で難しい原発の歴史を、頭で考えるのではなく、心で感じることができる。それが、絵本『この国にひかりが満ちるまで』の魅力と言えるでしょう。

葛藤から生まれた「やさしいストーリーにする」という答え

3月に原発事故が起きて、私がずっと生活してきた東京にも放射能の影響があるという情報が流れて、ウェブ上には怒りが満ちあふれていて……そんな中、私はこの問題をどのように自分ごととして腹落ちさせたらいいのか分からず、悩んでいたんです。

そう話すのは、「原発絵本プロジェクト」代表であり、greenz.jpライターの小野美由紀さん。葛藤の中からも、小野さんは自分の得意分野である「表現すること」で何かできないかと考え始めます。

「原発絵本プロジェクト」代表の小野美由紀さん

「原発絵本プロジェクト」代表の小野美由紀さん

怒りから「反原発」と叫んで東電や政府を責めるのは、私のやり方ではない気がしていたんです。でも、この問題に取り組みたい気持ちはあって、ある時ふと、絵本をつくろう、と思ったんです。自分が理解するために、ただ勉強するのではなく、自分の中で消化して「やさしいストーリーにする」というのが私の中のひとつの答えでした。

だから最初はどちらかと言うと、自分のために始めたものだったんです。でも、たぶんそれを必要としているのは自分だけではない、とも感じていました。あの時は、何が起きたのか分からなくて、小さな子どものいるお母さんたちは不安を抱えていて……。自分で情報収集できるタイプではないけれど「知りたい」と思っている人にとっては必要なことかもしれない、と思いました。

4月下旬頃、小野さんが絵本のことをTwitterでつぶやき、イラストを描いてくれる人を募集したところ、すぐに何人かの方が名乗り出てくれました。そこから、プロジェクトは少しずつ動き始めたのです。

歴史の中に、これからの原発との付き合い方のヒントがあるはず

小野さんがまず、始めたのは原発に関する勉強です。原発の専門家の方にアドバイスをもらい、浜岡原発の見学ツアーに参加したりしながら学びを深めていくうち、ますますこの問題の難しさを感じるようになったと言います。

「原発は悪い」という主張ばかりが聞こえてきますが、事実を知れば知るほど、この問題は、だれか一人を悪者にすれば済むような単純な話ではなく、怒りから来る批判だけでは意味が無いと感じました。原発の技術そのものだって、1950年代には夢のような技術だと思われていました。もちろん、事故後の東電や政府の対応については批判されるべき所もたくさんあったと思いますが、事故以前に関わった方々は「事故を起こそう」と思っていたわけではないのです。

でも、今起きていることは報道で伝えられていても、このような複雑な歴史はなかなか知る機会がない。だったら、これまでの歴史を簡単なストーリーで伝えれば、そこにこれからの原発との付き合い方のヒントがあるのではないかな、と思いました。

こうしてストーリーは少しずつできあがり、昨年8月と10月には展示会も開催しました。今年に入り、趣旨に共感してくれたイラストレーターの「ひだかきょうこ」さんと出会い、協力してくれる仲間も集まり始め、現在は電子書籍版の完成に向けて、大忙しの毎日を送っています。

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私は100%原発撤廃派ではないし、これは原発を批判する絵本ではありません

でも、このプロジェクトに対する周囲の反応は、決して好意的なものばかりではありませんでした。「反原発派なんですね」という声や、この話題をシャットアウトしてしまうような方もいたそうです。これに対し、小野さんは「No」と言います。

このプロジェクトに関わっていると「反原発派」だと思われますが、原発の恐ろしさを訴えたり、100%の廃止を主張したいわけではありません。「理想は、100%即脱原発! でも現実には、超限定条件付き原発容認派」とでも言いましょうか。不要な原発はもちろん無くしていくべきだと思うし、被害を受けた方への補償はされるべきです。でも、悪いのは原発の技術そのものではなく、「それに対する私たちの態度が問題だった」というのが私の考えです。

そのことが重要なのは、これから原発が他の発電方法に変わっても、同じだと思います。「原発の祀り方」を変えるということが大事で、そのために市民レベルでできることを考えていきたい、という立場です。

さらに小野さんは、現在の日本における原発の議論のされ方にも疑問を感じています。

世の中は「脱原発」か「無関心」かの2択のようになっていますが、安全規制をヨーロッパに倣って整備したり、多様な電力プランを作ることでエネルギー需要を減らすなど、やり方はたくさんあるはず。もっと立体的な議論ができるといいな、と思っています。

だからこの絵本では、だれか一人を「悪者」にするつもりはありませんし、ストーリーも、原発に対する祈りや供養のようなつもりで書いています。ストーリーの最後は、これからの日本を予感させる希望を感じられるようにして、壊れてしまった原発を抱きしめるような絵本にしたいと思っています。

ひだかさんも、

私はまだまだ勉強不足なのですが、私のできることで何か力になることができれば、という気持ちで絵を描いています。絵本で何か解決できる訳ではないのですが、この問題について考えるきっかけになれば、と思います。

と言います。小野さんが等身大で生み出すストーリーと、ひだかさんの描くやさしくて強いイラストが一緒になったこの絵本は、決して原発に対して「モノ申す」というものではなく、みんなに考えるためのきっかけを与えるためのもの。それは同時に、「脱原発」か「無関心」だけではなく、その間の選択肢もある、ということを私たちに伝えてくれています。

ライターの小野美由紀さん(左)と、イラストレーターの ひだかきょうこ さん(右)

ライターの小野美由紀さん(左)と、イラストレーターの ひだかきょうこ さん(右)

世界へ、そして次の世代へ。「出版」で長く続く支援を

「日本国内だけではもったいない」という小野さんの思いから、電子書籍は、英語、フランス語、ドイツ語の3カ国語での制作を予定。さらに、紙の絵本が完成したら、全国の幼稚園で読み聞かせキャラバンを行い、次の世代にも伝えていく構想を描いています。

「原発のことについて、子どもにどう話したらいいかわからない」というお母さんたちの声をよく聞きます。そういうお母さんたちが子どもと一緒に読んで、このことについて一緒に話し合うきっかけになればいいな、と思います。原発の絵本とは知らずに手に取ってもらえるようになれば一番いいですね。

売上は、最低限の運営費を除いたすべてを「子供たちを放射能から守る福島ネットワーク」に寄付する予定です。これから、震災に対して寄付する人はどんどん減っていってしまうと思いますが、ロングセラーになれば、細々とでも長く寄付を続けることができる。そのためにも、電子書籍や紙の絵本で、きちんと収益を上げたいと考えています。

絵本を世に出すことにより、ずっとずっと支援を続けていくこと。これも、このプロジェクトの大きな目的です。

「元気玉プロジェクト」で支援者募集中!

今回、「CAMPFIRE」内の「元気玉プロジェクト」では、電子書籍化に向けた資金集めのため、このプロジェクトを支援するパトロンを募集しています。こちらのプロモーションビデオを見てピンときた方、そして、なんとなく原発についてもやもやしている感情を持っている方も、ぜひ詳細ページへアクセスしてみてください。

原発の専門家ではない、普通の女性の思いから始まった「原発絵本プロジェクト」は、活動家じゃなくても、専門家じゃなくても、この問題に対してできることがあるということを教えてくれます。それに、このようなクリエイティブの力を活かしたプロジェクトは、1年経った今だからこそ大きな意味を持つと言えるでしょう。

今こそ、原発の問題を、みんなの手で、みんなのものに。
あなたにもできること、きっとまだまだたくさんあるはずですね。

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