調味料を計量スプーンで量ったり、野菜の皮をむいたり、熱した鍋に食材を入れたり…。普段、あまり意識することはないかもしれませんが、料理のプロセスでは、視覚に頼る場面が多くあり、目の不自由な人が安全かつ快適に料理をするためは、彼らの視覚をサポートすることが必要です。そこで、これをキッチンアイテムとしてカタチにしたのが、「sento tactile cookware」です。
このキッチンアイテムは、イスラエル・エルサレム「Hadassah College」のインクルーシブデザイン学科の学生Neora Ziglerさんが卒業プロジェクトとして取り組んだもの。目の不自由なユーザが安全に料理ができるよう、様々な工夫が施されています。たとえば、シリコン素材の鍋用補助カバーを使えば、このカバーに触れることで鍋のサイズや位置を知ることができ、食材を鍋に入れたり、かき混ぜたりしやすくなります。また、先端にデコボコをつけ、“満タン”な状態を指で触って認識できる計量スプーンや計量カップは、求める機能をシンプルなデザインで実現しているという点でも秀逸です。
「sento tactile cookware」は、目の不自由な人が、火事ややけどなどの危険にさらされることなく、安全にクッキングを楽しめる画期的なツール。また、一方で、“触れて感じる”という料理プロセスの新しい楽しみ方を、すべてのユーザに提案するアイテムでもあります。「目隠しの向こう側に、見えるものがある」というブラインドサッカーのように、とかく視覚に依存しがちな日常をシャットダウンして、触覚や嗅覚といったカラダの感覚をもとに料理してみると、これまで気づかなかった発見があるかもしれません。
スマートフォンのカメラが認識したものを読み上げるというスマートフォンアプリ「LookTel」や、様々なものを識別し、音声で教えてくれるスマートフォン端末「VOIM」など、ユーザの視覚をサポートするデジタルガジェットが進化しつつありますが、同様に、「sento tactile cookware」のようなプロダクトが増えることで、目の不自由な人々が、より安全かつ快適に楽しめる日常生活の幅がますます広がっていくことでしょう。
[via Fast Co.Design]
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