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「都市について考える」BMW Guggenheim Labが行う世界移動式ワークショップに参加してきて思うこと

この記事は「Media Think」主宰、江口晋太朗氏に寄稿していただいています。

BMW Guggenheim Lab(BMWグッゲンハイムラボ)が、6年という長期で全世界をまわり、都市の公共性やサステナビリティなどについてのワークショップを行う移動式ラボが8月からNYでオープンしているという話を聞いたのでぜひ参加してみたい、と思い参加してきました。

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BMW Guggenheim Labは、シンクタンク、公共フォーラム、コミュニティセンターの機能を組み合わせたもので、「現在都市が抱えている様々な問題や未来への課題についての意見交換の場所をつくる」というテーマのもと、全プログラムを無料で誰でも参加でき(open public free)、100以上ものワークショップなどを実験的に展開する新しく、そして大規模な試みです。

また、移動式のラボとなっており、6年間かけて3サイクル世界9都市をラボがまわり、その都市それぞれにおける課題をフォーカスすると同時に、都市の新たな挑戦の重要性を喚起し、それぞれの都市のこれからにおける持続可能な解決策を考えていく、というもの。

このラボのワークショップは、2012年にベルリン、2013年にムンバイに移動しワークショップを行い、その後一度NYにあるグッゲンハイム美術館にてラボの活動の結果とそれらに関する展示を行い、これをもって1サイクル終了とするとのことです。

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サイトにあるカレンダーを見ると毎日ワークショップが行われており、どのワークショップに参加してもどれも趣向を凝らしたりと有意義な企画が目白押しだろうと思います。”ラボ”と銘打っているだけあって、カレンダーも、どこか大学か施設のシラバスやスケジュールカレンダーみたいになっているのも特徴的です。
イベントによってはゲストも登場したりと、多くの人がこの企画に賛同していることがわかります。

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また、スタートとなるNYのラボでは、「Confronting Comfort(安らぎへの取り組み)」をテーマにワークショップ、実験、討論会、上映会、屋外ツアーなど多数のプログラムを予定していて、ただの講義などだけでなく、参加者同士が意見を述べ合ったりグループを作って作業をするなどの企画が予定されています。

そして、ラボに併設されているカフェは、オーガニックなどをメインに取り扱ったレストランが企画参加するなどしており、ちょっとした休憩ついでに参加することも可能でした。

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このBMW Guggenheim Labの最初のサイクルで使用する移動式ラボ施設を建設したのは、日本人の塚本由晴と貝島桃代によるAtelier Bow-Wow(アトリエ・ワン)が設計担当し、軽量でコンパクトな二階建てのまさしく「移動式の道具箱」をイメージした施設になっています。

100以上ものイベントやプログラムに対応することができる構造になっており、プログラムに合わせて施設上部で二重の半透明なメッシュに覆われた道具をあげさげしたりして収納可能になるという施設全体のデザイン自体にも興味がわきました。また、骨組みにカーボンファイバーが使用されているなど、建築物としてもかなり評価されるものだと思います。ラボ施設の建築の様子の動画も必見です。

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ちょうど僕が行ったときも、講義形式のイベントが開催され、都市の温暖化などについて話していました。講義もそこそこに、質問や議論が飛び交うなど、参加している人も真剣に話を聞いたり意見を述べたりしていました。

こういう何気ない企画や、知らない人同士でも集まれば意見がばんばんでてくるのはさすがだなと思うし、みんな相手の意見をきき、そして自分の意見を述べ、いい意味でディスカッションを行う姿は、それぞれがきちんと参加して考えているのだと実感しました。

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この講義形式のイベントが終了したあと、奥にあるオブジェを使った「Urbanology」というロールプレイングゲームワークショップに参加することができました。

「Urbanology」は、それぞれが考える都市のあり方について、「住居」「持続可能性」「交通機関」など8つの項目のうち5つをピックアップし、選ばれた項目にそったシナリオに対応する質問に対して「Yes」「No」で答え、その結果を多数決で決定し、その決定に対して5つピックアップされた項目が順次変化していき、それぞれが実体験をもって都市のあり方を体験する、というもの。

僕らのときは、
「Affordability」「Livability」「Sustainability」「Transportation」「Wealth」
の5つをもとに質問が組まれました。
他に「Health」「Lifestyle」「Innovation」があり、5つに選ばれた項目によって質問が変化するのだと思います。

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この床においてあるオブジェを、質問が終わるたびにその結果に応じてマス目にそって動かす。デジタル的なものとちょっとアナログなものとの融合も楽しいものだなと思います。

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真ん中にいるお兄さんが企画のファシリテーター。正面図上にある質問が書かれたディスプレイに対して、参加者に「Yes?No?」「なんでYesなの?」と議論の呼び水を生み出すようなファシリテーションを行っています。

決して、Yesが正しいとか、Noが正しいというものはなく、質問に対して自分がなぜYesなのか、なぜNoなのか、その理由と参加者同士でその意見を交換していくことが目的で、質問自体も、「街の持続と街の文化を共存させるためには」というような内容の質問や、「街に大企業を誘致するが街の残りの企業がダメになる可能性があることに対してYesかNoか」というような、実際の都市に起きうる問題やどちらが実際に現実として良いか悪いかのジャッジができないような絶妙な質問を用意していました。

もちろん、目的な参加者同士の議論や、自分だったら最終的にどっちを取るか、ということを問う質問なのだが、その自分のジャッジとまわりの人との多数決で最終的に結果がでる、というのも、民主主義を踏まえた上でのワークショップの構成の仕方だと思います。

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質問に対してみんなで議論しているところです。みんなYes、Noどちらも難しい問題に最初は頭を悩ませていましたが、ある程度時間たち、Yes,Noを尋ねられるときちんとYes,Noと応えていました。そして、それに対してファシリテーターが疑問を投げかけ、参加者同士が自分がなぜYesか、Noかを相手とディスカッションしていました。

最初は5人くらいでやっていたのに、気づいたらまわりが10人くらいの人だかりになっていて、飛び込みできたおじさんや若い兄ちゃんなども企画に参加するなど、Open Freeな感覚が自然になっているなと感じました。

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Yes,Noを最終的に答えると、集計されディスプレイに掲示されます。今回のメンバーの集計結果と同時に、これまでのグループの統計の履歴も掲示されており、どの質問も4:6や5;5など、拮抗した回答結果にほとんどがなっているなど、どの質問も難しく、だからこそ、議論のしがいがあるんだろうと思います。

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最終的にYes,Noになった結果をもとに各項目のグラフが変化していきます。その結果に応じて、足元にあるオブジェを前に後ろに動かして結果が随時変化していきます。もちろん、オブジェを動かすのも参加者自身ですので、自身の選択の結果で+になったりーになることをまさに身をもって体験していくワークショップでした。

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写真のように、各項目ばらつきがあり、全部がプラスになることがあるかどうかわかりませんが、やはり、こちらをとったら別の項目が下がり、別の項目を下げればこちらの項目が上がるなど、きちんと連動した結果になっていて、すべてが全部プラスになる、というようなものでなく、きちんと現実に沿った動きをしているのでしょう。

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最終的に8つの質問が終了し、僕らのグループが選択した都市の結果がこちらでした。
自分たちが選択した結果の都市の状態がこうですよ、ということをきちんと数字とビジュアルで示していました。最後に、各項目の数字をもとに実際の世界の都市と照らし合わせ、「Wealth」はメキシコシティ、「Transpotation」はヒューストンという具合に、実際に自分たちが選択した擬似都市を、現実世界の様子と合わせて表現していました。

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そして、最後にでるメッセージが「Your city may be the future of all city」(あなたたちが選択した都市は、すべての都市の将来の可能性がある)と締めくくり、ここで選択した都市の可能性は、将来自分たちがいる都市の可能性が高いことを示していました。文字通り、選択した結果が良いかどうかは、選択したあなたたちによって創られる、というメッセージでした。

このワークショップは、BMW Guggenheim labの中でもかなりメインなワークショップで、ほぼ毎日体験することができます。また、オンラインでも体験することが可能で、自分が選択した結果によって都市がどう変わるかを身を持って体験することができます。

その他のワークショップの様子などの写真や最新情報などは、各ソーシャルメディアで発信しているということで、ソーシャル連携まわりにも注目です。

BMWが主催ということで、モータリゼーションを謳っているかというとそうではない。
きちんと都市について僕らで考え、そして自分たちで決定し創り上げていくということがこの企画のメッセージから伝わってきます。

都市のあり方に正解はない。

もちろん、完璧な都市なんて存在しないわけで、自分たちのコミュニティを自分たちの手で考え、議論し、その意思決定をする、ということをもっと身近に感じることができたら、もっと政治は楽しくなるし、もっと都市を暮らすことをみんな真剣に考えると思う。

相手の意見を否定するのではなく、自分はどう思うか、どう決定するか、そして相手の意見とどう違うのか、そして相手とどう議論するか。いまの日本にかけている部分も見えてくると思います。

まずは一緒に考えてみること。
そして自分の意見をもつこと。
そして相手と自分の意見を交換すること。

そこからまずは始まると思います。

正解がない世界を生き、そして自分たちが決定したことに対して責任をもつということ。都市をつくるということ、コミュニティをつくるということ、国をつくるということ。その多くに共通すると思います。

少しでも多くの人が都市や自分たちのまわりのことについて考えたり議論できる場をつくっていければと思います。そして、少しでも世の中が良い方向に進む努力と、そのための活動をしていけたらいいなと思います。

今後、ラボはベルリン、ムンバイと移動するのですが、調べてもその後の移動先がまだ見つからないので、どうにかして日本に来れないものかと考えています。誘致とかできるんでしょうか?NYでは8月3日から10月16日まで開催されています。場所やイベント詳細などは、公式サイトを参照ください。

みなさんは、どんな都市にしていきたいと考えますか?
ぜひ、ご意見をもらえればと思います。

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※この記事は「MediaThinkな日々」からの寄稿記事です。