「子どもを産んでも仕事を続けたい!」
そう言っていたのに、いざその時になると会社を辞めてしまう人、案外多いですよね。実際、日本では女性の約70%は出産や結婚を機に退職しているというデータもあり、この数字は中小企業でさらに大きくなる傾向にあります。もちろん自らの意志でその道を選ぶ方もいますが、「仕事と子育ての両立が難しい」というネガティブな理由で辞めてしまう方も、実はとても多いのが現状。これは、本人が希望するにもかかわらず、続けられる環境がないという日本の企業の現実を表しています。
「ないなら、続けられる環境を創ればいい。」
こんなシンプルな想いから、ひとりの女性がマイプロジェクトを立ち上げました。
中小企業向け『産休 Thank you!』プログラムって?
今年5月にNPO法人化したばかりの「Arrow Arrow」。長年の女性の悩みを解決するため、中小企業向け産育休取得のコンサルティング事業を開始しました。大企業に比べ、中小企業では産育休の制度が整っておらず、取得事例がないことも多々あります。前例がないために会社に戻ることを諦めてしまう女性もいるでしょうし、現実問題として「一人抜けてしまったら仕事が回らないから、後任をすぐ探さなきゃ!」なんて状況の組織も多いのでは? そんな女性の妊娠発覚から会社に戻るまでの期間を全面的にサポートするため、Arrow Arrowが提供するのは『産休 Thank you!』プログラムです。
このプログラムでは、妊娠発覚から業務を引き継ぎ、産休に入るまで(前半)、そして、育休取得後職場に戻る前から、戻って業務に就くまで(後半)のあらゆる過程において、「戻って来るために何をするか」を明確化し、企業に提案します。例えば、業務における課題の洗い出しと両立施策、引き継ぎのための業務マニュアルの作成、出産後職場に戻ってきやすい面談の設計、育休中のコンタクトの取り方など、時にはクライアント企業に常駐して徹底的に業務分析を行い、現状を把握した上で適宜アドバイスを行っていきます。代表の堀江由香里さんの、キャリアコンサルタントやNPO法人でのチームマネージメントの経験を活かしたプログラムは、本格的かつ実践的。これによって産育休取得時だけじゃなく、業務全体の問題点まで改善されてしまう、なんてこともありそうです。
「コンサルティングの予算なんてない!」なんて企業の方もご安心を。このプログラムでは、育休者が出るともらえる中小企業子育て支援助成金の取得アドバイスもしてくれます。助成金の存在さえも知らなかった企業も多いのではないでしょうか? なかなか手が回らない煩雑な申請作業もArrow Arrowが強い味方となってくれるので、中小企業でも時間的・金銭的に大きな負担を負うことなくプログラムが導入できるのです。
意識が変わり、組織が変わる。
実際に、このプログラムを導入した企業の成果や反応はどうなのでしょう。「Arrow Arrow」代表理事の堀江さんにお話を伺いました。
現在は2社で実施中なのですが、想像以上に社員の方に変化があるんです。これまで産育休の実績がない会社の上司が「オススメの書籍を教えてくれ」と言ってきたり、女性社員からは「友達にうらやましいと言われた」という声が聞こえてきたり。先日出産した女性社員が、安心して「戻ってきます」と高らかに宣言してくれたのはもちろんうれしかったのですが、周囲の変化もすごく大きな成果です。
ひとりの女性社員の産育休取得をきっかけに、他の社員や組織の意識改革にもつながっている様子。現在担当している企業からは、一度プログラムが終了したのに、「全社的に広げて行きたい」と、継続契約の申し出をもらったのだとか。産育休を取得する社員が在籍する組織のみならず、「誰でも当たり前に取得できるようにしよう」という流れになってきたことは、堀江さんにとっても想像以上の成果だったようです。
いくら私が努力しても、実績を見て組織が「変わろう」という気持ちをもってくれないとどうしようもないことなので、組織が覚悟を決めてくれたのは本当に良かったな、と思います。実際、会社が本気で産育休について考えるようになるのは、優秀な女性社員が産休に入り、「戻りたい」と言い出したタイミング。そのときの成功体験で、組織は変わって行くと思うので、例えば自社で対象の女性がいなかったとしても、実績を他社にも見てもらい、仮想でも成功体験を積んでもらえるようなプログラムが組めたら、もっと波及して行くのかな、と思っています。
普段出会えない人に出会える“気付き”の勉強会
一方でこの問題は、会社だけでなく、働く女性本人の意識改革も欠かせません。
女性の意識改革としては、「企業人としてどうキャリアを積んでいきたいか」を考えることと、「いかにロールモデルをみつけるか」がポイントだと思います。ベンチャーで働いていたりすると、子どもを産んで短時間で帰るようなスタイルって全く想像できないんですよね。これではダメで、企業を変えると同時に、一人一人の女性が、どういうスタンスで生きて行きたいか、をどこかで考えなきゃいけないし、「あの人みたいに生きて行きたい」と思えるシチュエーションをどうしたら作れるかな、と思っていて。
企業というよりも“個人”として考える必要がある女性の生き方について考えるきっかけを作るため、Arrow Arrowでは、女性と、そのパートナーを対象にした勉強会も始めました。
例えば中小企業ではよくあるのですが、男性ばかりに囲まれた環境にいたりすると、仕事のやりがいと、女性として生きることが同時につかめないですよね。これは望ましくないな、と思うんです。勉強会での出会いからお互いの経験を共有して学び、そこから得たヒントで女性自身も成功体験を積み、会社が必要とする人材となるような意識改革のきっかけになればと思っています。
7月初旬に行われた勉強会のワークショップでは、妊娠中、産褥期、育児期、それぞれのフェーズで、どんな心配事があるのか、それに対してどのようなアプローチができるのか、など、お題に沿ってワークシートを埋め、グループで議論。ビジネスウーマン、ワーキングマザー、学生など様々な方が、それぞれの立場から意見を交わし、参加者も多くの気付きを得た様子です。
次回の勉強会は7月24日(日)。「ゆるりと未来を考える」をコンセプトに、任意団体tadaima!とのコラボレーションで、カップルで参加できるセミナーになるそうです。これから結婚を考えているカップルや、結婚をしてこれからの家族のことを考えているご夫婦、パートナーと結婚・出産・育児についてじっくり考えたい方、などなど。ふたりのライフスタイルを考えるきっかけに、参加してみてはいかがでしょうか。(セミナー詳細はこちらをご覧ください。)
選択肢あふれる社会へ
Arrow Arrowが目指すのは、自分が選びたい未来を選択できる社会。堀江さんは、「全ての女性が働き続けるべき」という考えではなく、「主婦業に専念する」という選択も含めて、選択肢が溢れる未来を描いています。
今問題だと思っているのは、「選べない」ということだと思っています。今の社会って、選ぶことも選ばないこともパワーがいるんですよね。仕事を辞めるという選択にも傷ついたり葛藤したり、自信をなくしてしまっている女性もいます。当たり前に仕事が続けられる社会になれば、選択してもしなくてもそんなストレスを感じなくなるはず。「女性だから」の前に「堀江由香里だから」この道を選ぶんだ、って当たり前に言えるような状況を作っていきたいです。男性ももちろんそうです。女性が選べれば、男性も主夫の道だって選べるはずですから。実際私よりも家事に向いているんじゃないかって思うような男性はたくさんいますしね。(笑)
この記事の冒頭で紹介したロゴマークには、よく見ると矢印がいっぱいあります。これはArrow Arrowの「Arrow(矢)」を、堀江さんがコンセプトを表現するために、なんとPowerPointのオートシェイプ機能で描いたものなのだとか。一直線じゃなく、たくさんの方向を向いた矢印でできた笑顔のロゴが、堀江さんの想いと生き方を表しているようです。
あなたには、この先の人生の選択肢が見えますか?
もし見えないなら、その原因は?
Arrow Arrowと一緒に、自分と、自分の家族の未来を考えてみてはいかがでしょう。
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