アウトドアブランドpatagoniaの創業者イヴォン・シュイナードは企業の経営者というだけでなく、持続可能な社会に向けたさまざまな活動でも注目を集めています。そのイヴォンと若い頃からの親友だというのがTHE NORTH FACEの創業者ダグ・トンプキンス。ダグはパタゴニアに広大な自然保護区を所有しています。このふたりが自然保護に力を注ぐきっかけとなったのは30年以上前の旅でした。『180°SOUTH/ワンエイティ・サウス』はその旅を追体験しようとする若者の旅の記録と、当時の記録映像をミックスしたドキュメンタリーです。
この映画の最大の魅力はなんと言っても映像。海と山という雄大な自然の映像が本当に美しいのです。それは単に撮影した素材がいいというだけでなく、この物語だからこそ生まれえた美しさでもあります。イヴォンとダグとジェフ、3人の冒険がその風景をさらに輝かせるのです。
サーフィンとクライミングを愛する若者ジェフは数年前にイヴォンとダグのパタゴニアの旅の記録映像を観て感銘を受けます。そして、長い準備期間をついに経てその旅路を追いかける旅に出るのです。イヴォンたちは車でパタゴニアへと向かいましたが、ジェフはヨットにクルーとして乗る旅を選択します。
イヴォンとダグはジェフについて「自分たちの若い頃を見るようだ」と語ります。3人に共通するのはもちろんサーフィンやクライミングですが、それ以上に重要な共通点が「冒険心」です。パタゴニアにイヴォンとダグが車で向かったのも、ジェフがヨットで向かったのも、より困難な状況に自分を置くという冒険心の賜物、ジェフの冒険心は彼を行くはずではなかったイースター島へと誘い、そこで素晴らしい経験をします。
イヴォンとダグは山登りという冒険のために登山用具を作る工房を始め、そこから彼らのものづくりが始まりました。実は、patagoniaもTHE NORTH FACEも彼らの冒険心から生まれたものだったわけです。ジェフは、今はまだ旅をしサーフィンをし山に登っているだけですが、その冒険心はいつかクリエイティブなものを生み出すことにつながるはずです。
私たちが見ているのはジェフの冒険を追った映像です。その映像はそこにあるものを写すだけでなく、ジェフの感じる感覚をも切り取ります。たとえばサーフィンをするシーンの爽快感、断崖に上ったときのスケール感、そのような感覚が伝わってくることでその風景が観る者に迫ってくるのです。
きっとこの映画を観た人のほとんどは旅に出たくなるでしょう。それも単なる旅行ではなくちょっとした冒険の旅に。ジェフのように何ヶ月もかかる困難な旅でなくとも、行ったことのないしかも自然が豊かな場所に旅したいと思うでしょう。この映画は見る人の冒険心をくすぐる映画なのです。
この映画は“自然保護”という点については少し距離を置きます。ダグと奥さんは私財を投じてパタゴニアに自然保護区を作っているわけですが、その自然保護活動を褒め称えるものでも、それに対するサポートを呼びかけるものでもありません。それよりも人が冒険心を持ち、自然に挑んで、その雄大さに敬服するようになれば自然と自然を大切にするという気持ちが生まれてくるはずだ。というような発想がここにはあるように思えます。
すぐパタゴニアに行くのは無理だとしても、知床くらいは行ってみたい。サーフィンもちょっとやってみたい。個人的にはそんな好奇心がむくむくとわいてきた、そんな映画でした。
皆さんもぜひ冒険心を刺激されてください!
1/22(土)より、渋谷・シネクイントにて【20日間限定】ロードショー!ほか全国順次公開!
配給 : グラッシィ、スタイルジャム
180°SOUTH/ワンエイティ・サウスの予告編はこちら!
イヴォン・シュイナードへのインタビュー映像を見る
パタゴニアに行っちゃおう!