早稲田大学の学生が運営する「02カフェ」。大学のすぐ近く、多くの学生でにぎわうこのお店のスイーツメニューが、まもなく一斉に「紫色」に染まるそうです。
いったいなぜでしょう?
この謎を解くカギは、その色にあります。
ーー紫色。
これが何を象徴する色か、ご存知でしょうか。
答えは「女性に対する暴力」の根絶運動。あまり知られていませんが、世界的に共通なシンボルカラーがこの、紫色なのです。乳がん早期発見の啓発活動「ピンクリボン運動」と同様に、アメリカで始まった「International Purple Ribbon Project」という世界的ネットワークも存在しています。日本でもつい先日、内閣府主唱の「女性に対する暴力をなくす運動」期間(11月12日〜25日)の最終日に、東京タワーなど全国のタワーが一斉に紫色に点灯しました。色鮮やかな各地のタワーをニュースなどでご欄になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
女性に対する暴力は性犯罪、セクハラ、ストーカーなど様々ですが、中でも深刻なのはDV(Domestic Violence)の問題。結婚したことのある日本人女性のうち、3人に1人が何らかの被害を受けているという報告もあります。夫婦や恋人など、親密な関係の間に起こる悲しい暴力。DVは、立派な犯罪行為です。でもまだまだ日本での認知や問題意識は低いのが現状。あまり身近に感じられなかったり、実はDV被害を受けているのに、“危険性”や“危機感”を覚えることなく、それを“DV被害”と思っていない人もいるのだそうです。
そこで立ち上がったのが「パープルアイズ」という任意団体。馴染みのないDV問題をもっと身近なものに感じてもらうため、紫色をキーカラーとしたクリエイティブなDV啓発活動を行っています。
そのひとつが、紫色のものばかりを販売する「むらさき屋」。目印は紫色の暖簾(最上部写真)です。これまで、主にイベントへの出店を手がけてきましたが、今回は学生への認知を目的として「02カフェ」と協同でメニューを開発し、売り上げの一部をDV被害者支援団体に寄付する「むらさき屋カフェ」の企画が実現しました。
「02カフェ」では、12月13日(月)〜22日(水)の期間、通常のメニューに加えて3種類のスイーツメニューを展開します。『むらさき白玉のスチームミルクぜんざい』、『スイートポテトクリームと紫芋のパープルパフェ』、『特製スコーン むらさきチーズムース添え』(写真左から、メニュー名は仮)。全て紫色がキーカラーとなっており、味はもちろん、ご覧のとおり目にもおいしい一品となっています。
カフェの入口にはむらさき色の暖簾、壁には東京タワーライトアップの写真を展示、と、この期間、カフェはまさに紫づくし。思わず「何で紫色なんだろう?」と、気になってしまいますよね。
パープルアイズの理事でプロデューサーの山阪佳彦さんは、今回の取り組みについて、「DV問題の無関心層への働きかけとして、まずは話のきっかけになれば」と話します。02カフェで働く早稲田大学商学部2年生の依田萌さんは、はじめこの話を聞いた時、DV問題について、「自分ごとではなく、遠いイメージだった」と言い、メニュー開発についても悩んでしまったとのこと。でもパープルアイズとの打ち合わせを重ね、最後には色で考えるメニュー開発を楽しみ、「納得のいくメニューに仕上がった」と満足げな様子。そして、今では紫色のものを見ると「気になってしまう」ようになったのだとか。
この「楽しめた」そして「気になってしまう」という感覚が、“色”というクリエイティブが持つ啓発力ではないでしょうか。いきなり難しい問題を語り始めるより、まずはクリエイティブによって「気になる」をつくることから始めて種明かしをする方が、より自然で、その後の継続した「意識」につながるのは確実です。
「環境問題以上にDV問題はまだまだ認知が足りない。でも、入口さえあれば、人々は立ち上がるモチベーションを持っていると感じています。クリエイティブの力を借りて、そのきっかけ作りを続けていきます」(山阪さん)
12月9日(木)〜11日(土)には、慶応大学の近くにあるラウンジスペース「三田の家」でもワークショップや販売会を行うなど、形を変え、場所を変え、今後も「むらさき屋」の展開は広がっていきそうです。
いつものお店に突然「紫色」が登場したら、ちょっとだけこの記事を思い出してください。もしかするとそれは、「むらさき屋」の仕業かもしれません。
02カフェに行って紫色スイーツを味わってみよう!
実は映画や絵本のプロジェクトも進行中!「パープルアイズ」のホームページをチェック!