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合言葉はAloha !ハワイからはじまる持続可能な社会づくり、ゼロエミッション会議レポート

Some rights reserved by simpson391

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こんにちは、松原広美です。少しずつ風が冷たくなり、冬の到来を感じる季節になってきたところですが、今日は常夏ハワイのお話です。

夏休みを兼ねて訪れたオアフ島ホノルルで、9月に開催されたゼロエミッションカンファレンスの様子と、ハワイ島プナ地区のサステナブルコミュニティの視察を、全2回のレポートでご紹介します。

ハワイといえば観光地の定番ですが、昨今の経済不況により、主要な収入源である観光産業が落ち込んでいます。また、太平洋のど真ん中に位置するハワイ諸島は、さまざまな物資を輸入に頼っており、食料とエネルギーの自給自足の実現が、ハワイ州におけるサステナビリティを考えるうえで急務になっています。

そんななか、ハワイの豊かな自然環境をいかし、より持続可能な経済、暮らしを実現しようとしている人たちがいました。観光に支えられた”Island of Adventure”から持続可能な社会のロールモデルとしての ”Island of Innovation”へ。

ハワイレポートの第1回は、ゼロエミッションカンファレンスに集まった世界のイノベーターたちを紹介していきます。

ゼロエミッションカンファレンスは、かの有名な廃棄物までリンクした経済のモデル、ゼロエミッションを提唱し、エコ洗剤の代名詞的存在であるエコベール社の創設者であるグンター・パウリ氏の新著 「ブルー・エコノミー」の発表を兼ねて開催されました。

greenz.jp にて以前 ブルーシンキングの記事を紹介しましたが、グリーンを超えたブルーエコノミーの原則では、サステナブルな社会とは、「人間が地球の資源や自然を破壊、搾取する時代は終わり、バイオミミクリーのように自然界のシンプルでエレガントな原理原則からインスパイアされたイノベーションによって、人間の基本的なニーズが満たされている状況」をさします。

グンター氏は、自然からヒントを得て生まれたイノベーション100件を今後2年かけてウェブサイトで紹介しつつ、新しい持続可能な経済モデルをつくり、10年間で1億人!の雇用を目指しているとか!(ブルー・エコノミーについては、green TV の映像がよくまとまっています) 

会場となったのは、ホノルル市の中心にある Hawaii Convention Center.

HCC

グンター氏の基調講演でキックオフしたカンファレンス会場を見渡すと、前評判の1000人規模!の期待とは裏腹に、200人程度の参加者・・・。少しさみしい印象はありましたが、逆に参加者の少なさが濃密なディスカッションをうみ、ゆったりとしたアロハスピリットと相まって、とてもアットホームな雰囲気でした。

gunter

一日の流れとしては、基調講演の後に、ネイバーアイランド((オアフ、マウイ、ハワイ、モロカイ、カウアイなど)のアントレプレナーたちによるパネルディスカッション。こちらのパネラーたちは、各島にて再生可能エネルギーの普及を目指す社会起業家たち。モデレーターを務めたのは、大規模な集光型太陽熱発電を手がけるソポジーのダレン・キムラ氏。2010年12月期の売り上げ3000万ドル(約25億5000万円)を見込む、ハワイを代表する再生可能エネルギー企業の創業者です。(ディスカッションの動画は、コチラからどうぞ)

panel
首にかけられたレイがハワイらしい。右から2人目がダレン・キムラ氏。

石油依存度が90%(、そのうち71%はアメリカ国外から輸入した石油。これは全米の中でも最も高い数字)を超えるハワイイ州では、2008年10月ハワイクリーンエネルギーイニティアティブ(HCEI)によって、「2030年までに州内で使用するエネルギーの70%を、化石燃料から再生可能エネルギーによる供給に移行する案」にハワイ州とハワイ電力が合意しました。現在、ハワイ島の地熱発電やマウイ島の風力発電及びバイオマス発電(風力は州内最大の30メガワット、バイオマスは16メガワットの発電量により島内のエネルギー需要の20%を既に再生可能エネルギーで賄っています)など、各島々のポテンシャルが見直され、その特徴を生かしたエネルギービジネスのアイデアが共有されました。

また、このカンファレンスでは、最先端のテクノロジーやビジネスイノベーションの話しばかりでなく、ハワイの先住民たちによって古から継承されてきた伝統的な暮らし、農法、自然や土地に対する価値観、考え方(=Kuleana Living)が紹介されました。

kauai house
カウアイ島にて、電気も食料も水も全て自給自足しているCarlos Andrade氏(左端)の自宅写真

会期中にふるまわれた食事は、100%地産地消を掲げ、近郊農家から取り寄せた新鮮な食材をベースに色鮮やかなハワイアンフードがふるまわれ、

lunch
ハワイの伝統料理のひとつで、ポーク、チキン、魚などをタロイモの葉などでくるみ、蒸し焼きにしたラウラウとタロイモ。

ステージ上では、メローなエンターテイメントが披露され、会場のムードは常にピースフルな感じでした。

hawaiian songs

展示会場では、ゼロエミッションをコンセプトに掲げたエネルギー関連企業やNGO団体のブース出展、電気自動車の展示などがありました。

booth
Pacific Diesel 社は、エネルギーの地産地消として、使用済み油や植物油などのバイオ燃料の開発、製造を目指す会社です。

カンファレンスは大人たちだけのためにあるものじゃなく、たくさんの中高生が授業の一環で参加していました。オバマ大統領の出身校プナホウスクールの学生たちには人気だったのは、電気自動車。

EV

今回は、ハワイ諸島の課題とソリューションを世界に向けて発信すると同時に、世界の取り組みから学ぼうということで、スウェーデン、日本、ブータン、スペインからもスピーカーが招聘されました。今日では普通に使われるようになった「環境に優しい建築=グリーンビルディング」という概念を1967年!から提唱してきたスウェーデンのデザイン会社、Ecocycle Design社CEO, Anders Nyquis氏 からは、建築、都市設計、コミュニティデザインにおけるシステムシンキングを取りいれたプロジェクトの紹介がありました。


映像は3部にわかれています。第2部第3部

スペインからは、Javier Moralesが登壇し、自然エネルギー100%自給を目指す El Hierro プロジェクトの紹介がありました。エルヒエロ島はカナリア諸島に位置し、面積276k㎡、人口約1万人の島で、その豊かな生物多様性から200年、UNESCOによって保護区に指定されています。スペイン大陸との送電線のつながりはなく、電力供給はディーゼル火力によって行われていますが、年々増大する電力需要に対応するため、カナリア諸島政府の政治支援などを受け、自然エネルギーで100%のエネルギー需要を満たす計画を進めています。また島では、、生物多様性の保護の観点から、農業や漁業の一次産業においても持続可能な開発(sustainable development )に積極的に取り組んでいます。

日本からは、NPO法人ガイア・イニシアティブ代表理事、野中ともよさん!三洋電機の会長時代に掲げた「Think GAIA」という環境コーポレートビジョンを通して企業としての社会的責任、21世紀型の持続可能なビジネスモデルについて、ウィットを交えてチャーミングなスピーチに会場は聞きいっていましたね。会期中は一緒に食事をしたり、大変お世話になりました!

そして、個人的に、今回のカンファレンスのハイライトは、ブータン王国文部大臣 Lyonpo Thakur S. Powdyel 氏による、GNH=国民総幸福論のおはなし!

powdyel
Powdyel 氏(右)と本カンファレンスの立役者であり事務局長 Mark McGuffie氏(左)

人間の最大の欲求は、幸福を楽しむことです。幸福とは、物質的、身体的なものではなく、もっと社会的、感情的、文化的、精神的なものです。幸福とは、追求するものではなく、幸福だと感じられる環境をつくっていく過程に感じるものです。そして、その環境を整えることこそが、国の役目、政府の責任です。今回、このハワイの土地にやって来て、みなさんからの暖かいアロハの精神を感じて、このアロハこそ、国民総幸福論の根底にある考え方と同じだと気付いたのです。

アロハは日常的には挨拶として使われていますが、実は、その綴りには深い意味があることを知っていましたか?

A – Akahai (上品さ、優しさ)
L – Lokahi (調和)
O – Olu’olu (思いやり)
H – Ha’aha’a (謙虚さ)
A – Ahonui (忍耐)

より持続可能な社会を築くために、ビジネスのありかたを根本から変え、、新しいパラダイムを創っていくことは大事です。でも、Powdyel 氏の話を受けて、いつの時代も、その変化の中心にいて、新しい道を切り開いていく人間が、変化の荒波にもまれながらも忘れてはならない、大切にすべき本当の価値、ヒトとしての生き方と責任を改めて問いかけてくれた気がしました。観光産業に依存した消費文化を代表するようなるオアフ島(ホノルル)だからこそ、新しいビジネスやテクノロジー、イノベーションの話しだけでなく、アロハという言葉に象徴されるような、本来人間に備わっている本質的な道徳観がさまざまな局面で体現されていたことは、とても意義があるように思いました。

カンファレンスは、5日間続き(私は残念ながら後半2日間は出席できず)、最終日には、【アロハ・アコード】とよばれる協定書を採択して終了しました。このカンファレンスでシェアされたアイデア、リソースが、離島におけるエネルギー問題解決の糸口となり、ハワイ諸島のような場所がスマートグリッドの実験場として注目をあび、今後どんな新しいビジネスがうまれてくるのか、期待したいですね!(既に、日米両国は、ハワイと沖縄において離島における持続可能なクリーンエネルギーモデルを開発し、世界に発信することを目指しています)。

以上、かなり長文となりましたが、ゼロエミッションカンファレンスのまとめでした!ハワイレポート第2段は、都会の喧噪を離れ、まるでアバターの世界に迷い込んだような、ハワイ島ディープジャングルに潜むコミュニティの様子をお届けします!お楽しみに。