「ことな」という響きを聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろうか?
子ども?大人?それとも、その中間??
実はこの言葉、子どもをキーワードに幅広く活動する学生団体コトナが作るリトルプレス「ことな」の中に出てくる言葉なのだ。
「もうこどもじゃないんだから」と親に言われたかと思うと、中学の同級生にこどもが出来たという風の便りが届く。自分もそのうち結婚して親になるのかなぁなんて思う。
(ことなより抜粋)
このように、親になる前の若者=プレ親の世代を、この本の中で「ことな世代」と呼ぶ。「ことな」は、これから親になることな世代と子どもを結びつけ、子どもについて考えるための本なのだ。コンセプトは、「こどものわたしとわたしのこども」。この言葉には「自分の子ども時代を振り返ることによって、自分の(未来の)子どものことを考える」という意味が込められている。でも、一体どんな内容なのだろうか?今回はこの2つの「こども」をカギに展開していく不思議な本、「ことな」の魅力を紹介していきたい。
核家族化や地域との関わりの希薄化により、すっかり切り離されてしまった「子ども」と「大人」の関係。子どもについて知る機会といったら、児童虐待や少子化、受験戦争など、ニュースで扱うようなものばかりだ。今のことな世代は、近所の子の面倒をみたり、家でお産をして赤ちゃんが生まれたりという経験が無く、人が育つという命のサイクルからずいぶんと離れてしまったように感じる。近い将来親になるであろう彼らにとって、これは重要な問題だ。
ことな編集長の渡辺龍彦さんも、ことな世代ど真ん中。渡辺さんは「ことな」についてこう語る。
「一人一人が自分自身の『子育て観』をしっかりと持って子育てができる社会をつくりたい、その最初の一歩として『ことな』を作りました。そもそも、親になってから初めて子どもの事を考える今の日本人のスタイルには以前から疑問を感じていました。すでに親になった世代へはもちろん、まずは親になる前のことな世代に対して、子どもについて考えるアプローチが必要だと思ったのです。『子どもと関わることの少ないことな世代が、少しでも自分自身にひきつけて子どもの事を考えられるように』という想いから生まれたのが、『こどものわたしとわたしのこども』というコンセプトなんです」。
ターゲットはことな世代。子どもに興味がない若者でも普通の読み物として手に取ってくれるよう、内容とデザインにはかなりのこだわりがあると言う。
本の中で書かれているのは、仏像が大好きな歩くん(6歳)の将来の夢や、新卒ママのおっぱいの悲劇、泥だんご先生の講義など、ユニークな話ばかり。読み物としても完成度が高く、読んでいるうちに「ことな」独特の世界観にどんどん引き込まれて行く。特に、子どもとのすっとんきょうなやりとりには、ついこちらまで口元が緩んでしまう。子ども心、親心、ゆれ動くことな世代の気持ち、仕事への想い……さまざまな心模様が等身大で表現されており、読み応え十分だ。
デザインの面では、「こどもの頃の感覚を思い出してもらえるように」という想いを込め、小学校の教科書を連想させる大きめのフォントを採用したり、文章にルビをふったり、一つ一つのディテールにとことんこだわった。全体的に絵や写真が多くカラフルで、子どもと一緒に読んでも楽しめそうだ。
子どもと触れ合う事の少ない「ことな世代」にしてみれば、子どもって完全に未知の存在じゃないだろうか。でも、思い出してほしい。大人だって、昔はみんな子どもだったのだ。子どもについて考えたことのない人も、この本を読みながら、まずは自分の子ども時代から思い返して考えてみるのはどうだろう。子どもの頃自分が大切にしていた事は何だったろうか?とゆっくり考える時間こそが、一人一人の子育て観を育んでくれるのだ。ことな世代も、ことな世代だった人にもぜひ読んでもらいたい一冊だ。
さて、気になる「ことな」の今後だが、学生団体コトナとしてではなく、これからは渡辺さん個人のライフワークとして冊子の発行を続けていくという。テーマはまだはっきりとは決まっていないが、彼が面白いと思った子どもに関するトピックを取り上げていくつもりだそうだ。ことな世代を生きる彼が、これからどんな子ども達の姿を見せてくれるのか、次回作が待ち遠しい。
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