トヨタ自動車の新型ハイブリッドカー「SAI」、日産自動車が2010年に発売予定の「リーフ」、本田技研工業の「HELLO!(Honda Electric mobility Loop)」プロジェクトなど、2009年の東京モーターショーは、さながら次世代型エコカーショーの様相だったそう。しかし、環境に優しい自動車づくりは、我々の想像以上にまだまだ多彩だ。そんな一例、チョコで走る世界初のレーシングカーをご紹介しよう。
英ウォーリック国立大学(University of Warwick)を中心とするプロジェクト「World First Racing」は、チョコレートの原料・カカオバターを燃料として走るレーシングカーを開発した。1ガロン(約3.8キログラム)あたり35マイル(約56キロメートル)走行でき、最高速度はなんと135mph(時速約217キロメートル)。各性能は、エンジン燃料を除きF3レーシングカーの基準を満たしており、世界初の持続可能型レーシングカーとして注目されている。それでは、以下の動画でその華麗な走りをご覧あれ。
このレーシングカーは、カカオ豆というバイオ燃料を使用していることで、従来のガソリンよりも二酸化炭素排出量を軽減する効果が期待されているそうだ。化石燃料の枯渇に備え、代替エネルギーの一方策として、他の分野にも応用する余地があるだろう。また、この車は、燃料のみならず、ボディも環境に優しいつくりになっている。ニンジン・ジャガイモなどの有機物や使用済のペットボトルといった廃材を原料としており、全体の95%が生物分解が可能。廃棄プロセスにおける環境負荷の軽減にも十分配慮されているのだ。
Front of World First Racing: Copyright(C)2009 International Manufacturing Centre, All rights reserved.
「World First Racing」のメンバーのひとり、Kirwan博士はこの取り組みについて次のように述べている。
持続可能で環境に優しいことと、カッコよくて、楽しくて、速いことは両立できると思うんです。このプロジェクトを通じて、環境に優しいカーレースという新しい未来のひとつを示していきたいです。
環境負荷を軽減することは持続可能な未来に向けて不可欠なことだが、それは必ずしも”我慢すること”、”退屈なこと”とは限らない。彼らの取り組みは、「カーレース」、「チョコレート」、「持続可能性」という一見関連性の薄そうなキーワードを見事に具現化し、環境に優しいながらもカーレースというひとつの楽しみを実現するカタチを示している。
いまやバイオ燃料の代名詞になりつつある大豆やトウモロコシにおいて発生している問題と同様、カカオ豆が新たなバイオ燃料となることで、さらなる環境破壊や一部の国での労働力搾取といった新たな課題が生まれることは好ましいことではない。彼らの取り組みが持続可能な未来に向かう、健全な代替エネルギーのモデルケースとなってくれることを願っている。