第22回を迎え恒例行事となった東京国際映画祭、今年も六本木ヒルズを中心に行われるが、昨年から“環境”を意識したさまざまな取り組みが行われている。たとえば上映にはグリーン電力を利用、セレブが歩くカーペットはレッドではなくグリーン、「自然と人間の共生」をテーマにしたnatural TIFF部門を企画などだ。まあとってつけた感は否めなくもないが、日本最大の映画祭がせっかく“環境”をうたっているんだからのってあげようじゃないか!ということで、greenz読者なら何を見に行くべきかを軽~く解説しよう。
まず、ネイチャー映像が好きな方はオープニングの『オーシャンズ』を観に行こう。この作品は『WATARIDORI』のジャック・ペラン監督が空から海中へと活躍の場を変え、海の生き物の姿を大迫力で映し出した大スペクタクルドキュメンタリー映画だ。『WATARIDORI』はもちろんのこと『アース』や『ディープ・ブルー』なんかが好きな方にはオススメ。しかもワールド・プレミアということなので、世界でもいち早くこの作品を目にすることができるチャンスだ。
環境などについてじっくりと考えたいという方にはやはりnatural TIFF部門の各作品。中でも私が注目したいのは『石油プラットフォーム』という作品。この作品はスターリン時代にカスピ海のど真ん中に作られた石油採掘基地を映したドキュメンタリーだ。この基地は住宅、公園などが備えられた都市であり、設置から60年がたった今も操業を続けている。石油をめぐるさまざまな問題を考えるにはもってこいの素材だ。
癒される作品が見たいなら『心の森』だ。この作品は3人の映画撮影クルーが愛犬とともにスウェーデンの森の中にツリーハウスを作る過程を追ったもの。ツリーハウスを建てる過程で触れ合うことになる自然と地域の人々が都会人の心を癒し、“心の森”への扉を開く。
刺激的な作品が見たいなら『牛は語らない/ボーダー』がオススメ。この作品はアゼルバイジャンとの紛争直後のアルメニアのある村が舞台。その村に連れてこられた牛の視線から戦争に疲れ、身も心も荒みきった人々を捉えたドラマだ。視線は牛に固定され、セリフは一切なしという実験的な構成、牛の目から見た人間の姿とは一体どのようなものか、観客は自らの獣性と向き合うことになるのではないかと思う。
『ザ・コーヴ』より ©2009 Oceanic Preservation Society
刺激的な作品といえば、急遽追加上映が決まった『ザ・コーヴ』も注目だ。この作品はイルカの保護活動家として知られるリチャード・オバリーが和歌山県太地町のイルカ漁に対する抗議行動を撮影した作品。もちろんイルカ漁反対という立場に立った作品だが、その問題の所在を考えるという意味で見るに値する作品だ。
これ以外にも本当にたくさんの作品が上映されるので、まず足を運んでピンと来た作品をとりあえず見てみる、これが映画祭の正しい楽しみ方だ。
耳寄りな情報としては、提携企画としてイタリア文化会館でエルマンノ・オルミ監督『テッラ・マードレ‐母なる大地』が上映される。こちらは『スローフードの奇跡 おいしい、きれい、ただしい』翻訳出版記念で著者カルロ・ペトリーニ(スローフードインターナショナル会長)のトークもあわせて行われ、しかも無料!ということなのでスローフードに興味のある方はぜひどうぞ。