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【Blog Action Day 2009】高速道路の無料化、温暖化にはどう影響する?

Creative Commons, Some Rights Reserved, Photo by sinkdd

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鳩山内閣が進める高速道路の無料化。他国の状況を見てみると、たとえば欧米では、高速道路といえば無料なのが一般的。その一方で、高速道路ではない道路の有料化が、近年広がりを見せている。

この制度、ロードプライシングまたはコンジェスチョン(混雑)・チャージ(課金)と呼ばれている。対象となるのは、ラッシュ時の混雑がひどい都心部の道路。ロンドンやストックホルム、ミラノ、シンガポールの事例がよく知られている。アメリカでは、まだ導入例はないものの、サンフランシスコ市が導入を検討中だ。

さて、このロードプライシングまたはコンジェスチョン・チャージ、どんな役割を果たすものなのだろう?

タイムリーにも、この疑問にこたえてくれる調査報告書が発表されたばかり。報告書を発表したのは、環境先進国スウェーデンの首都ストックホルム市の交通局。同市では、渋滞緩和策として、2006年に都心部の道路でコンジェスチョン・チャージが導入された。今回の報告書は、その制度の経済的・社会的・環境的影響を教えてくれる。

ストックホルム市のコンジェスチョン・チャージのしくみ

調査報告書の内容に入る前に、ストックホルム市のコンジェスチョン・チャージのしくみをざっと紹介しよう。

約24平方キロメートル(東京都品川区の面積とほぼ同じ)の有料ゾーンには、18のゲートが設置されている。各ゲートに取り付けられたレーザー装置が、ゲートを通過する車両を特定する。通行料金は月ごとに請求される。集められた通行料金は、ストックホルム市郊外の道路整備に充てられる

greenz/グリーンズ controlgatemap
Swedish Transport Agency
点線で囲まれた範囲が有料ゾーン。赤点がゲート。有料ゾーンの面積は、欧州ナンバーワンの大きさ。

通行料金は日時によって異なる。平日の通勤ラッシュ時は、最も高い20SEK(約270円)。1台当たりの1日最大料金は、60SEK(約810円)。渋滞のない夜間から早朝にかけての時間、そして週末や祝日、祝日前日は、無料。ちょっと面白いのは、夏休み休暇の7月も無料となっていること。日本とは違って、スウェーデンでは夏休みを取らない人はあまりいないようだ。

greenz/グリーンズ congestion tax
Swedish Transport Agency
有料ゾーンのゲート(Betalstation)と有料道路(betalväg)脇には標識が。その時々の料金は、Betalstationに設置された電光掲示板に掲示される。

それから、電気自動車、メタノール自動車、圧縮天然ガス自動車、ハイブリッド自動車など低公害車と認定された車両※は、日時に関係なく、通行料無料。さすが環境先進都市スウェーデン!
(※通行料金を免除される車種について詳しい説明はコチラ。)

さて、それではいよいよ、ストックホルム市におけるコンジェスチョン・チャージの効果を見てみよう。

コンジェスチョン・チャージの効果(1) 渋滞緩和

調査報告書によると、ストックホルム都心部の渋滞は、道路有料化によってだいぶ緩和された。交通量は約2割減少。朝のラッシュ時の車での移動時間は、有料化前と比べて、なんと半減した。

コンジェスチョン・チャージの効果(2) CO2削減

交通量減少と渋滞緩和で、ストックホルム都心部のCO2排出量は、14%~18%削減された。

コンジェスチョン・チャージの効果(3) よりエコな移動手段への移行

道路の有料化によって交通量が減ったということは、人々が他の移動手段へシフトしたということ。公共交通機関の充実に力を入れているストックホルム市だけあって、多くの人々が公共交通機関を使うようになった。1日当たりの乗客数は、約6万人増加(7%増)!

通行料が免除されるエコカーにシフトした人も多い。ストックホルム市によると、市内のエコカー台数は3倍増。調査データは、同市民がエコカー購入を決める一番の要素は有料道路であることを示しているとのこと。

ロードプライシングの効果(4) 地域経済は悪化せず

中心街に入ってくる車の台数が減ったとなると、地元ビジネスへの悪影響を心配するかもしれない。でもご安心を。報告書によると、中心街の小売業への悪影響は見受けられなかったそうだ。

以上、ストックホルムの経験から、ロードプライシングが、交通量を抑えて渋滞を緩和し、CO2排出量を削減し、公共交通機関の利用を促進する効果があることが分かった。車両の排出量に応じて通行料金の支払義務を緩和すれば、エコカー利用も促進できることも。

ロンドンのコンジェスチョンチャージ※も、同じような効果をあげている
(※ストックホルムの場合、コンジェスチョン・チャージによる収入は、郊外の道路整備に充てられている。一方、ロンドンでは、公共交通機関の整備に充てられており、公共交通機関の利用をさらに促進している。)

高速道路の無料化について考える

民主党のマニフェストでは、高速道路の無料化の目的の一つとして、温暖化対策(渋滞の解消・緩和、CO2の発生抑制など)が挙げられている。

ただ、たとえばETC割引対象日が拡大された今年のお盆の時期に渋滞発生回数が前年を大きく上回ったことを考えると、高速道路の無料化が温暖化を深刻化させてしまう可能性もありそうだ。実際、そういう試算を発表したシンクタンクもある。

小沢鋭仁環境相は先日、環境省で高速道路を無料化した場合のCO2排出量を試算する調査がスタートしたと発言した

国土交通省は無料化によってCO2排出量は減るとし、NGO(非政府組織)は増えるとしている。環境省としてできるだけ公平公正に(データを)持っておきたい。

とのこと。

高速道路の無料化が温暖化にどう影響するのか、また新しい見解が生まれるかもしれない。