カンヌ国際広告祭、クリオ賞と並び世界三大広告祭のひとつとされる“One Show”は、広告主ではなく広告クリエイターに賞を与え、その審査も広告クリエイターが行う。このことから、クリエイターにとっては最も栄誉あるともいわれるこの賞に、環境部門の大賞にあたる“Green Pencil”が今年から創設された。
“One Show”の受賞者に与えられるトロフィーは鉛筆の形をしていて“Pencil”と呼ばれる。部門ごとにGold、Silver、Bronzeの3種類があるが、今回これに加えて新たに全部門を対象とした特別賞として“Green Pencil”が創設されたのだ。さて、そんな栄えある賞を獲得したのは…
最初の緑鉛筆を獲得したのは広告会社Goodby, Silverstein and Partnersがハーゲンダッツのために展開した“Help the Honey Bees”というキャンペーンである。これは単一のCM動画や広告ポスターといったものではなく、キャンペーン全体が対象となる統合ブランディング・キャンペーン部門にエントリーされて栄誉をつかんだ。
Goodby, Silverstein and Partnersがまとめている、この“Help the Honey Bees”キャンペーンに含まれるコンテンツを見ると、まずTV ”Opera”と題された動画のクオリティがめちゃくちゃ高い。
CGの質もさることながらハチがまさに受粉しようというその瞬間に画面が暗転し、字幕でメッセージが流れるという編集が見る者に強く訴えかけてくる。また、ウェブサイトにはミツバチが危機にある現状から、ハーゲンダッツは何をしているのか、私たちは何をすればいいのか、など細かくわかりやすい記事がたくさん載っている。サイトデザインのクオリティももちろん高い。
そしてハーゲンダッツが自然の原料をつかい、そのためにミツバチが必要であること(ミツバチがいなくなったらバニラも実らなくなってしまう)をさらりと書く。ミツバチを守ろうというキャンペーンとブランドイメージの向上を両立させているわけだ。これにはさすがとうなるしかない。
さて、この“One Show”にはさまざまな広告を対象にした賞に加え、One Show Interactive、One Show Design、One Show Entertainmentという各部門がある。そのOne Show DesignにあるEnvironmental DesignやPublic Service/Non-Profit/Educationalという部門はgreenz的にも注目せずにはいられないところだ。
“GARBAGE BAG ART WORK”はゴミ袋をデザインしてゴミ置き場をアートにしようというプロジェクト、東京のMAQ inc.が広告を手がけ、Environmental Designで佳作にあたる“Merit Award”に選ばれた。
greenzで以前取り上げた「ゴミがたまっていく広告」、ニューイングランドのとあるバス停に設置され、周囲に捨てられるゴミが増えていく様子を示すことでポイ捨てを止めるよう促したこの広告も同じくEnvironmental Designで“Merit Award”に選ばれた。
大手広告代理店Ogilvy & Matherが手がけたWWF-Indiaのポスター、葉の繁った木に見えるが、よくみると葉に見えたものは鳥で、生物共生へのメッセージが強く打ち出されている。コチラはPublic Service/Non-Profit/Educational部門で“Silver Pencil”に輝いた。
広告は社会を映す鏡とも言われる。これだけ質の高い環境広告が次々と生まれるというのは社会が環境を重視するようになって来たということ。これからも環境広告に注視して、その広告が訴えてくるメッセージに耳を傾けようじゃないか! いい広告にはそんなことを思わせてくれる力がある。まずはハーゲンダッツのアイスを食べようかな。
まぎらわしい”グリーン・ウォッシュ”にはくれぐれもご注意を