風力発電機を初めてみたのは、数年前に北欧を旅した時の列車の車窓からだった。平坦な草地の向こうの海沿いに林立する近代風車は、見慣れないながらも、どこか未来の匂いを感じさせてくれた。
しかし、良いイメージでとらえられがちな風力発電にも、発電効率やコスト、立地など課題は多い。特に立地は、いくらグリーンエネルギーといえども、自分の土地や地域に巨大な構築物が立ち並ぶことを歓迎するひとたちは少ない。いわゆる、NIMBY(Not In My Back Yard:私の裏庭ではやめてくれ)問題といわれるものだ。風力発電施設に限らず、ゴミ処理施設しかり、原子力発電施設しかり、大型の産業施設には常についてまわる問題だ。それならば、人目のつかない場所へと、最近は海に立てられる風力発電も増えている。
しかし、ここでもうひとつの問題がでてくる。深さ数百メートルを超える海底にポールを打ち込むのは、コストがかかりすぎるのだ。たとえば、300メートルの深度があれば、風力発電機のポール長さは、東京タワーに迫る長さになる。想像するだに、滑稽だ。
ならば、風車ごと浮かべてみればいいのではないか。ということで、アメリカやヨーロッパ、日本など、数カ国で開発が進められているのが、海の上に浮かぶ、フローティング方式の風力発電だ。外洋は大陸よりも強い風が吹いているから、効率のより高い発電が可能になる。人目につかず、発電効率をあげられ、一石二鳥だ。
どうやら、先手をとっているのはヨーロッパのよう。この6月に、ノルウェーで、この方式の風力発電の大規模な実証実験がはじまった。このフローティング方式の風力発電施設は”Hywind”と名付けられ、ノルウェーの電力大手のStatoiHydroとドイツのSiemensの共同開発で、ノルウェイのカルモイの12キロメートル沖に設置された。タービンは、ジーメンス製のもので、StatoiHydroはフローティング構造のデザインを手がけている。そして、両社が共同で、発電を効率化させるコントロールシステムを開発した。この実験は2年間の予定で行われる。
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簡単に構造を説明すると、ポールの海上部分が80メートで、海中部分が120メートになる。鉄製の「浮き」が、海底から延びる3つのアンカーワイヤーで留められている形になる。Hywindは、120メートルから700メートルの深度で設置可能になるそうだ。
実際の設置方法について、HywindのウェブサイトやYouTubeでみることができる。
ちょうど、この記事をまとめていたら、日本でも、東京大学と東京電力が、千葉県の銚子沖3キロの海上に実験タワーを設置するというニュースがでてきた。風の強さや向き、波のデータを取り、数年後には発電施設を設置するそうだ。
近い未来には、海の上でフローティング方式の風力発電機が林立する光景も身近なものになるかもしれない。広大な海をエネルギー源にできるとしたら、それはものすごいことだ。フローティング風力発電の有用性のみならず、海や生態系への影響など、充分な調査と準備をして、プロジェクトすすめてほしい。
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最後の写真は、銚子の海。
市民風車について調べてみよう。