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世界中が注目する南フランスの小さな村の奇跡。食にまつわるドキュメンタリー映画「未来の食卓」

フランス南部の自然豊かな小さな村バルジャック村。この村の村長がある決断をした。それは「村の小学校の給食を全てオーガニックにする」ということ。はじめは戸惑う小学校の子どもたちや大人たちだが、だんだんと「オーガニック」がもたらす小さな奇跡に気が付きはじめるー。

このバルジャック村が変わっていく様子を1年間追い続けたドキュメンタリー映画がこの「未来の食卓」だ。

2008年11月にフランスで公開された「未来の食卓」は20館の上映から始まった。その後、インターネット上を中心に映画を観た人たちの間で話題になり、現在56館までに拡大。ドキュメンタリー映画としては異例のヒットとなった。さらに、この映画をきっかけにパリでオーガニックのキャンペーンが行われたり、食堂をオーガニック化した大学があらわれるなど、社会的なムーブメントにも影響を与えている。

映画『未来の食卓』

ファッションや映画などおしゃれで都会的なイメージが強いフランスだが、実はEUの中でもトップクラスの農業大国。映画の中では2006年にユネスコ・パリ本部で開催された「ガンと環境汚染」についてのシンポジウムのシーンで「フランスの殺虫剤使用量は欧州最多で世界で2~3番目です。フランスの農業で農薬の約90%が殺虫剤で占めており、驚くべき依存率です」という驚きの真実が語られている。

この映画には、先ほどの2006年にユネスコ・パリ本部で開催された「ガンと環境汚染」についてのシンポジウムから、村の小学校に作られた有機野菜の畑ではしゃぐ子どもたちの様子、村人たちが開催するオーガニックマーケットの場面、生まれてくる命と消えてしまった命のその瞬間などを映したさまざまなシーンが登場する。そして、その一つ一つの場面から単純に健康によいから、また地球環境によいからオーガニックがいいんだという意味を超えた命の尊さともろさを教えてくれる。

ここで、この映画を観る前に知っておいて欲しいデータをご紹介したいと思う。

フランスと日本の農業

フランスはEUの農業総生産の21.3%を占め、農産物輸出額も米国に次いで世界2位。1960年に農家は全人口の22.5%、425万3000名だったが、2005年の時点では70万5000名でそのほとんどが専業農家。一方日本は専業農家が43万戸弱。また、2003年には食糧自給率は先進国の中で最下位の40%となってしまった。純輸出入額の4兆600億円は世界ダントツの一位である。
(データ:未来の食卓のパンフレットより)

世界のオーガニック事情

有機農家数が一番多い国はイタリアで5万6440戸、日本の有機農家は4636戸(※重量ベース)。オーガニック生産国第一はアメリカで、農家への援助を政府を行っていることや、農薬の表示を義務化などが普及を助けている。
(データ:未来の食卓のパンフレットより)

食品添加物について

日本で定められている食品添加物の種類は、約1500種類。食品添加物の国内での生産量から判断すると、平均的日本人は1日約10g、1年間で平均3.6gの食品添加物を採っている。
(データ:未来の食卓のパンフレットより)

農薬について

地球全体で年間1億4000万トンの化学肥料が散布されている。
(データ:国連食糧農業機関(FAQ))

食糧問題について

有機農法の方針に従えば、地上における耕作可能な土地全てを利用することで全人類に食糧を提供することが可能である。
(データ:国連食糧農業機関による2007年5月3日の報告:国連食糧農業機関(FAQ))

映画『未来の食卓』

小学校の給食から子どもが食のあり方を知り、それが親へと伝わり、そして周りの大人が持続可能な村のあり方に気づいていく。私たちは与えられることに慣れすぎ、ものごとの本質に気づくことを怠っているのかもしれない。バルジャック村が抱える問題は地球全体の、そして日本の問題ともいえるものだが、この映画が私たちにも問題を解決する「気づき」を与えてくれるはずだ。

最後にジャン=ポール・ジョー監督の言葉で締めくくりたいと思う。

環境問題を考えたとき、世界を変えていくには子ども達とそして、母親の役割が大きいと思います。(中略)この作品を作るにあたって、私は最後に必ず希望を残したかった。今、すぐに行動すれば希望は失われないという希望です。

ロシアの文豪、ドエトフスキーは「美こそ世界を救う」という言葉を残しています。この作品は、自然の美しさへのオマージュでもあります。美しさを守る事こそ、子ども達の未来を守ることだと私は信じています。

『未来の食卓』

監督:ジャン=ポール・ジョー
プロデューサー:ベアトリス・カムラ・ジョー
出演:エドゥアール・ショーレ、ぺリコ・ルガッス ほか
撮影:ジョエル・ピエロン、アマル・アラブ
音楽:ガブリエル・ヤレド(『ベティ・ブルー』、『イングリッシュ・ペイシェント』)
8月8日(土)よりシネスイッチ銀座、ほか全国順次公開
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