日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
おいしそうなプリンと不似合いな憲法の条文、このふたつを結びつけるのは「9条スプーン」。それって一体なに…?
9条スプーンは2006年6月にスプーン蒐集者9条の会が作ったスプーン。おもて側には9型の穴があき、NO WARの刻印があり、うら側ではP型の穴となって、PEACEの刻印がある。そして商品には憲法9条全文とアピールを和文・英文で印刷したカードがついている。
この商品には、スプーンという生活に密着したものと憲法9条をつなげることで9条が生活を守っているんだということを考えさせるという意図がある。基本的には「9条を守ろう」というアピールなのだけれど、「憲法改悪反対」と声高に叫ぶゴリゴリの護憲派とは違うやわらかいアプローチがそこに見て取れる。
上の条文を見てもらえればわかるが、9条自体は法律だけあって非常に硬い。でもこの条文が求める本質は“平和”である。解釈の仕様がさまざまあるとはいえその本質には誰も異論がないはずだ。しかし平和を語ることがこんなに堅苦しくていいものか。平和について語るならもっとやわらかく語ってもいいのではなかろうか、この9条スプーンはそんなことを考えさせてくれる。そのような意味でこの9条スプーンは9条を見つめなおすきっかけとして非常にうまく出来た商品だといえるだろう。
さて、9条をやわらかく語るなら「9条マガジン」にも触れておかなければならないだろう。この「9条マガジン」は憲法9条にまつわるさまざまなコラムを掲載したウェブマガジンで、毎週水曜日に更新され、6/3の号で210号を数える。
デザインもポップで親しみやすく、メディア、沖縄、スポーツなどさまざまな話題から9条へとアプローチしているので、読者それぞれが自分の興味を出発点として9条を考えることができる。柔軟な発想で9条を考えさせるやわらかいアプローチだと言っていいだろう。
このように9条にこだわるのは、9条がこのまま維持されるにしろ、改憲という議論が起こるにしろ、条文は維持されたまま解釈だけが変わっていくにしろ、私たち日本人はそれを常に注視していなければならないからだ。
9条は、日本国憲法の三大原則の1つである平和主義を規定する憲法の中でも最も重要な条文の一つだ。それに無関心でいることは自分の生活に、自分の権利に、世界の平和に無関心でいることだ。でも日常生活に忙殺されていると、誰しもそんな無関心に陥りがちだ。1本のスプーンでそれが変わるなら600円は安い買い物ではないだろうか?