カリフォルニア・モントレーのサンセットビーチで、オイルにまみれたラッコが発見された。ラッコは、海洋野生動物の病気療養リサーチセンターによって保護された。オイルまみれのままだと、毛皮に付着したオイルによって体温調節機能が損なわれ、低体温を引き起こし、死に至る可能性もあるのだ。
保護されたラッコは「オリーブ」と名付けられた。名前の由来と関係あるのかどうか定かではないが、ラッコの毛に付いたオイルは、オリーブオイルとお湯と食器用洗剤を繰り返し使うことによって、キレイに落ちるらしい。
6週間のクリーニング&リハビリ期間中に、オリーブのFaceBookページが作られた。(FaceBookは世界中に1億人以上の会員がいるSNSで日本のmixiのようなもの)
FaceBookでは、約900人のファンがオリーブのページにフレンド登録し(いわゆるマイミク)、彼女の経過を観察しながら、早く良くなるようにとメッセージを送ったそう。ファンの一人であるDave Jessupは「オリーブはすごい患者だよ。彼女は私たちに、ラッコが直面している海の汚染問題についてだけでなく、もっと多くのことを教えてくれた。」と言っている。
FaceBookには、オリーブが良くなっていく様子が写真や動画でアップされていたので、野生動物の生命力の強さや、自然に生きることの素晴らしさを教えてくれたということもあるだろう。
また、カリフォルニアの野生のラッコは生息地の環境汚染やストレスなどが原因で、現在2,800頭しか生息していない。ラッコというのは自然界のキーストーン種に指定されている動物で、ラッコの数が減少すると、ラッコの餌であるウニが増えることになり、ウニが増えるとウニの餌である海草類が減少することになり、生態系のバランスが崩れてしまうらしいのだ。自然に生きていれば、どんな動物でも生態系の一部になるだろうが、種の個体数の増減が極端に環境に影響を及ぼすものは、特にキーストーン種と呼ばれるらしい。これも、オリーブがFaceBookにページを開設しなければ、広く知られなかったことかもしれない。
完全復活を遂げたオリーブは、4月上旬に太平洋の海に無事戻された。オリーブのFaceBookページは、彼女が海に帰ってからもフレンドが増え続けた。フレンドの最新のコメントには「14歳の娘がいる父親のように、成長というものはなんて早いのかと思い知らされた。私は馬鹿だった。オリーブはボーイフレンドを作るにはまだ早すぎるんじゃないか?お願いだから、彼女を海に帰すのはあと1週間待ってくれないか。」なんてものもあったそう。
猫も杓子もならぬ、大統領もラッコもFaceBookを使う時代。オンラインサービスは、当初予想もしなかった(と思われる)新しい使われ方をされ、新しいコミュニケーションや関係性を生み始めている。近い将来私たちは、誰とどんな風にコミュニケーションしているのだろう?相手は人間だけとは限らないものね。
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