この流線型のオシャレな船は、長さ31m、幅15mの世界最大級のソーラー船だ。現在、ドイツの北部の町Kielで設計中のこの船は、2010年、ソーラー船として世界で初めて、世界一周の旅に出る。
地球温暖化防止と再生可能エネルギーの活用推進を世の中に訴えようと、スイス人のRaphaël Domjanとフランス人冒険家Gérard d’Abovilleが2006年から取り組んでいるのが、この「PlanetSolar」プロジェクト。2010年、ソーラー船による世界初の世界一周を実現すべく、彼らの志に賛同する技術者や研究者からの協力を受け、現在、太陽光で稼動する船を設計中だ。以下のデモ動画でもわかるように、甲板には470㎡もの太陽光パネルが貼り巡らされており、発電能力は103.4W。平均速度10ノット(時速約18.5キロ)で航行できるよう、改良を進めている。
彼らが目指す世界一周の旅は、地中海から大西洋を出て、パナマ運河を経由し、太平洋、インド洋を渡ってスエズ運河から地中海に戻るという総距離4万km超のルートを120日間で航行するというもの。モナコ、ニューヨーク、上海など、主な停泊地ではイベントの開催も企画中だ。また、この旅の様子はハムラジオを通じて、世界中でリアルタイムに共有される見込みである。
「PlanetSolar」の発案者であるRaphaël Domjanは、プロジェクトの目的について、こう述べている。
エネルギー効率の向上や再生可能エネルギーの推進に向けて技術や知恵を使うことが、持続可能な世界への一歩につながると考えています。このプロジェクトを通して、エネルギー危機や環境破壊といった現在の状況を自分たちは変えられるんだということ、課題への解決策は確かに存在し、そのために行動するにはまだ遅くないんだということを示したいです。
平成18年国土交通省海事局の統計によると、日本の海運による輸送量は7.9億トン。島国である日本では、特に外国との輸送手段として船舶がまだ多く用いられている。一方、海運業界は、再生可能エネルギーへのシフトが遅れている分野でもあり、いまだにディーゼルエンジンに依存している状況だ。2008年国連の調査によると、年間の商業船舶の二酸化炭素排出量は12億トンで、主な温暖化ガスの約4.5%。これは、空輸による排気量の約2倍に相当する。
「PlanetSolar」は初の世界一周という大規模なチャレンジを行うことで、一般の人々に再生可能エネルギーの有用性を改めて示すとともに、持続可能な世界づくりへの実質的な手段として、船舶分野における太陽光エネルギーの活用に関する技術の開発を推進している。太陽光エネルギーの船舶への実用化に向けては導入コストが高すぎるなどの課題はあるが、「PlanetSolar」の取り組みを機に、この分野での研究開発がさらに推進されるだろう。
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