ギリシア、ローマに始まって、ゴシック、ルネサンスにバロックを経て、モダニズム、ポストモダニズムと、歴史とともに、建築は変遷を遂げている。そして、21世紀に入った今、注目を集めているのが、グリーンビルディング(Green Building)だ。
グリーンビルディングとは、使う人に対しても、地球環境に対しても優しい建築物のこと。その特徴と目されるは、次の三つの点だ。
- エネルギーや水、その他の素材を無駄なく効率よく使うこと:省エネ、創エネ(発電装置を備えること)、水の循環システム(雨水を貯める、排水を再利用する)、など
- 人体や環境への負荷を低減すること:化学物質の使用を減らす、廃棄物の量を減らす、など
- 上の二つを、計画・設計段階から施工、運用、修繕、取り壊しに至るまで、建築物の一生に渡って実現すること
中でも特筆すべきは三つ目の特徴で、グリーンビルディングたるもの、使用時の快適性だけではなく、作ったり取り壊したりする際にも、周辺環境に配慮すべし、というわけだ。
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近年、各国でグリーンビルディングの性能評価や認証をするための制度が整いつつある。アメリカのLEED (Leadership in Energy and Environmental Design) 、英国のBREEAM (BRE Environmental Assessment Method) 、日本のCASBEE (Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency) などがそれに当たる。
現に、日本でも川崎市がマンションの環境性能表示のためにCASBEEを導入し、また、多くのディベロッパーがオフィスビルや商業施設の付加価値を高めるためにCASBEEの認証を取得する(※1)など、その利用も着実に広がっている(※2)。
※1 出典:ニッセイ基礎研究所調査資料。P2の「2. グリーンビルディングの現状」とP4の図表-1を参照。
※2 東京都も、一定規模以上のマンションの環境性能を表示しているが、CASBEEではなく、建築関連法規をベースにした独自の環境性能指標を採用している。
このように、グリーンビルディングは、歴史上の建築様式よりも広い概念なので、それらと並べて解することには無理があるかもしれない。だが、環境問題が大きく顕在化する中で、グリーンビルディングの考え方が、次代の建築に大きな影響を与えていくことは間違いないことのように思える。
ところで、建築にさして詳しくない普通の人が“グリーン”と言われて思い浮かべるのは何だろうか?それはきっと、文句なしに植物の緑だろう。
であるならば、“グリーンビルディング”は、その名の通り“緑の建物”を目指すべきではないだろうか?屋上も、壁面も、敷地も、建物の全体を植物の緑が覆っている姿こそ、“緑の建物”の名にふさわしい(※3)。
※3 CASBEEでも、東京都の基準でも、緑化は評価の対象に入っている。
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環境に配慮したオフィスビルで働きたい人、90%近く(※4)。
オフィスビルの環境保護策として緑化を挙げた人、40%近く(※4)。
※4 出典:ニッセイ基礎研究所調査資料。P3の「3. 環境配慮が付加価値になる時代へ」と図表-3、図表-4を参照。
見た目も中身も“グリーン”な建物を求めている人がこれだけ沢山いる。
建物のオーナーさん、これから開発を検討しているディベロッパーさん、21世紀は、“グリーン”な建物が売りになる時代ですよ!