水素燃料で走るバスの導入に向けた公道への実験が現在ヨーロッパ各国を中心にアメリカやブラジルで行われ、一部は実際に導入されてもいる。そして日本でもついに水素燃料バスの公道走行が実現した。バスに水素燃料を導入すると、環境改善に大きな効果が望めるのだ。日本で実現した水素燃料バスと環境改善について詳しく説明しよう。
まず、この水素燃料バス(水素自動車)は燃料電池車とは異なる。後者が水素を利用して電気を起こし、その電気で走行するのに対し、前者は水素を直接燃焼させて走行する。その利点は完全に新たなシステムを開発するのではなく、ガソリン用のエンジンを改良すればすむこと、電池に必要とるレアメタルを必要としないことなどだ。対して問題となるのは、窒素酸化物(NOx)の排出がゼロではないこと、水素燃料の安全性、燃料生産の手段などである。
この水素燃料バスの公道走行を日本で始めて実現したのは公的機関ではなく東京都市大学。武蔵工業大学と東横学園が統合して今年4月に誕生した東京都市大学だが、その前身である武蔵工業大学の内燃機関研究所は30年以上にわたって「水素自動車」の開発に携わってきた。今回、日野自動車と共同で水素燃料バスの実用化に成功、日本自動車研究所の技術審査をパスしてナンバープレートを取得した。近い将来キャンパス間をつなぐシャトルバスとして運行する予定だ。
ドイツやアイスランドでは公的機関による水素バスの公道実験が行われているが、バスに水素燃料が積極的に導入されるのには理由がある。路線バスは基本的に低速で走り、短いサイクルで停車/発車を繰り返す。この停車/発車を繰り返すという走行の仕方は燃料を多く消費し、しかもバスはNOxの排出量が多いディーゼルを燃料としている。そのため環境に与える影響が少なくなかった。
今回開発された水素燃料バスはその排出量を約90分の1に低減、二酸化炭素の排出量はゼロだというから非常に大きな環境改善効果が望めるというわけだ。
さらに、路線バスは高速で走ることがなく、走行範囲も限られている。これは、最高速度があまり高くなく、燃料補給に水素スタンドを必要とするという水素燃料車のデメリットがバスにとってはデメリットにならないことを意味する。また、水素燃料は安全性確保のため、燃料タンクに必要なスペースがガソリンより大きくなる傾向にあるが、バスならば自家用車よりもこのスペースが確保しやすい。
こう書くと言いことずくめのようだが問題もある。それは燃料の問題だ。現在の水素燃料は主に天然ガスから生成されており、結果的に化石燃料を消費し、その過程で温室効果ガスを排出する。しかもコストはディーゼルの5~6倍といわれる。この問題を解決するにはまったく別の方法で水素を生成する方法が必要となるが、東京都市大学では工場からの排ガスに含まれる水素を取り出して燃料に利用する計画を進めているという。
これが実現すれば水素燃料バスは本当に環境対策のヒーローになるだろう。頑張れ東京都市大学!
ハワイで水素エコノミー実現に参加する
東京都市大学での試乗会の様子を動画で見る