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“こどもごころ”増産中!あなたの世界を変えるかもしれない「クラヤミ食堂」の仕掛け人に迫る!

撮影:大久保聡

撮影:大久保聡

目隠しをして、ナプキンをして…この人たち、いったい何をしようとしてるの?

いらっしゃいませ!こちらは“クラヤミ食堂”。目隠しをしたままフルコースのお食事を楽しんでいただきます。

“えっ?そんなの無理に決まってる!”と思った方もご安心を。スタッフの方の優しいナビゲーションや、仲間との協力により、案外普通に食事ができてしまっているらしいですよ。

まず、参加者は会場に入る前に目隠しをされてしまう。スタッフの誘導で席に着くのだが、会場の様子や、周りにいる人、空間の広さなど、何もかも分からない状態。知り合いと参加しても引き離されてしまうので、完全に未知の世界に身をおいた状態だ。

視覚が奪われているので、頼ることができるのは五感のうち残り4つの感覚。人の声やアナウンスを耳で聞き、料理を鼻で嗅ぎ、手で触れて、舌で味わう。その全てを研ぎ澄ませて食事をするうち、次第にイマジネーションが広がり、コミュニケーションも活発になってくる。同席者はもちろん初対面だが、同じ状況に置かれた仲間。この環境では、目で見えていると当たり前で普段は口にしないようなことまで細かく表現してしまい、自然に互いに助け合い、協力し合うようになるのだ。

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撮影:大久保聡

食事の後はネタばらしタイムがあるのだが、それが会場から外に出てからの場合もある。再会できるように、目隠し状態でお互いに暗号を決めて別れ、退場後、再会を喜び合う姿も見られるのだという。中には号泣される方もいるのだとか!

この感覚はいったい何なのだろうか?

刺激されるイマジネーション、広がるコミュニケーション。
クラヤミはただ「見えない」ことから
可能性に満ちた無限の空間になる。

クラヤミの中は、奪われた不自由をカバーするために全ての感覚が研ぎ澄まされる。それは、本来私たちが持っていた感覚を呼び起こすことなのかもしれない。それに「出会い」、新たな自分に「気付く」知的エンターテインメント、それが“クラヤミ食堂”なのだ。

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撮影:大久保聡

クラヤミ食堂を開催しているのは、こどもごころ製作所“こどもごころの価値観で世の中を幸せにしたい”という想いを持ったオトナが立ち上げた活動だ。オトナたちが失ったこどもごころを呼び起こすべく、ワクワクしながら日夜コンテンツやイベントの構想を練っている。

クラヤミ食堂で呼び覚まされた感覚は、まさに“こどもごころ”なのだろう。視覚を奪われるという不自由な状態は、人を弱い立場に追い込む。その環境が、自分をさらけ出し、素直な心で人に助けを求め、また人を受け入れるという行動を自然に導いている。それはまさに、素直に人に心を委ね、感情を表に出すことができた子供の頃の体験に重なるものなのだろう。

その他にも彼らは、もう一度こどもごころを味わえるワークショップを開催中。詳しくはブログの最新情報をチェックしよう。クラヤミ食堂の次回開催情報もここに掲載される予定だ。

さらに、ホームページでもユニークなコンテンツを展開中!トップページで表れる怪しげなボタンから「おとながこどもに相談室」に入ってみると、登場したナイスなおじさまが、大人を代表して子供達に相談を持ちかける。

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こどもごころ製作所「おとながこどもに相談室」

「大人」って、何ができたら大人なのだと思いますか?
いつから「大人」になるのでしょうか?

24歳女性会社員のこの相談に、子供達が自由に答える。

「子供のお世話が上手になったら大人」
「お金の計算とかをすれば大人になれる」
「いっぱい勉強して、子供に聞かれても分かるようになったら」

オトナには思いつきもしない回答に、思わずドキッとしてしまう。

次に訪れたのは、「こどもごころトークリレー」。こどもごころを持ったオトナのインタビューが動画で見られるコンテンツだ。男前豆腐店の社長伊藤信吾氏、NHK「にほんごであそぼ」でお馴染みの漫談師神田山陽さん、京都吉兆の料理長徳岡邦夫さんなど、ユニークな発想の取り組みをしている彼らの発想は、まさに目からウロコ。“こどもごころ”ってなんだろう?という疑問には、人間の数だけの答えがあるんだ、と気付かされるコンテンツだ。

いったいどんなオトナがどんな想いでこれらを仕掛けているのだろうか?こどもごころ製作所の事務所に訪問し、所長の軽部さんにインタビューを試みた。

こどもごころ製作所の提供するイベントやコンテンツは、“きっかけ”でいいと思っています。最初はクラヤミ食堂のエンディングでコンセプトを説明したりしていたんです。でも、この体験は、感覚を呼び起こすきっかけであり、それをどう解釈し、どう行動するかはその人次第で、目的や答えを提示しない方がよいことに気付きました。答えを提示してしまうと、一時期の“ブーム”で終わってしまう。そうではなく、私たちは“ムーブメント”にしたかったんです。

クラヤミ食堂などで味わった感覚は、本来自分が持っていたもので、人から与えられたものではない。当然、自分しか知りえない感覚なのだ。そこに答えなんかないのかもしれないが、もしあるとしたら、自分自身で気付くことからしか、本当の答えは見つからないだろう。

そんな想いから、こどもごころ製作所は立ち上げ後も広告などを打つことなく、地道に口コミでじわじわと世の中に浸透させていったのだが、今ではクラヤミ食堂のチケットが10分で完売するほどの人気となった。参加し、価値を感じた人たちからの口コミだけが広告媒体となって広がったことからも、彼らの活動が一時のブームではなく、ムーブメントになっていることが分かるだろう。

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こどもごころ製作所の事務所。秘密基地のような空間にワクワクする。

実は、こどもごころ製作所は広告会社博報堂の企業内大学HAKUHODO UNIV.の中にある。合計14名の社員が本業と兼務する形式で志願し、製作所の所員としても活動している。本来、クライアントから依頼を受けて広告を作り出す彼らがなぜ、このような取り組みを?

広告っていうものは本来、こどもごころみたいなものがないとできない仕事なんです。クライアントがいなくても、世の中を幸せにするものを産み出したい、そう考えたときに、それは“こどもごころ”の価値観から生まれるものなんじゃないかと思ったんです

greenzでも「すべての子どもに学びを!路上を教室にしちゃった広告。」や「空を見上げれば、救命ボート?!空間をフルに使ったエコ広告」などの記事で広告を紹介してきたが、私たちをワクワクさせてくれる広告クリエイティブは世の中を幸せにする力を確かに持っている。広告会社の得意とするクリエイティブ力を自由に発揮したコンテンツが生まれる場所、それがこどもごころ製作所というわけだ。何の縛りもない自由な環境でどんなコンテンツが生まれるのか、今後もとっても楽しみ!

最近では、逆にこの活動をフォーマットとした広告の依頼を受けるケースも生まれつつあるのだとか。たとえば、ウィスキーメーカーの試飲会をクラヤミ食堂を利用して開催し、ナレーションによりウィスキーの世界観をストーリー化するというコラボレーションが実現した。イマジネーションをメディア化してしまったこの広告は、新たな可能性を感じさせる。さらには、新聞や雑誌などのメディアを絡めてワクワクする仕掛けも製造中とのこと。ますます今後が楽しみだ。

オトナたちの眠ってしまったこどもごころが呼び覚まされれば、きっと未来を変える力になるはず!ワクワクする未来、あなたも一緒に想像してみませんか?

“こどもごころ”あなたも製作してみる?

「クラヤミ食堂」などワークショップ開催情報はこちらから!