来る5月12日は、環境技術の分野で起業を目指すアメリカの大学生にとっては、ちょっとしたビッグ・デイだ。
その日、マサチューセッツ工科大学(MIT)が主催するクリーンエネルギー起業賞を獲得する学生グループが発表される。
開催20年目を迎えるこの賞の目的は、その名のとおり、新しいクリーンエネルギー技術を用いて起業する若者の育成。今年の対象分野はバイオマス、クリーンな炭化水素系燃料、エネルギー効率、再生可能エネルギー、そして交通の計5分野。
起業するための資金として、最優秀チームが手にする賞金は、なんと、約2000万円!
でも、この賞は、単に優秀な学生チームを表彰するにとどまらない。大きな可能性を持つ技術者の卵がビジネス界に乗り込んでいけるような「しくみ」が組み込まれているのだ。
その「しくみ」の一つが、メンター配属。3月5日にセミ・ファイナリストに選ばれた25組の学生チームは、4月30日までに事業計画書と12ページのプレゼン資料を用意し、5月7日にはその資料をベースに審査員の前でプレゼンすることになっている。学生だけで進めるとなると、ずいぶんヘビーな作業だ。そこで頼りになるのが、各チームに配属されるメンターというわけ。
メンターは、起業家や産業専門家、弁護士、コンサルタントなど、産業界のリーダーたち。MITから指名されるのではなく、優秀な学生や産業界リーダーとの出会いを求めて自ら参加する人々だから、積極的にプロセスにかかわってくれそうだ。学生たちは、メンターと共に事業計画やマーケット戦略を練ったり、メンターからプレゼンテーションスキルを伝授してもらったりしながら、自分たちのビジネス・アイデアを詰めていく。楽しみながら、刺激を受けながら、教室や実験室で学んできた技術をビジネスに活かすコツを身につけていけるようになっているのだ。ビジネスに関する知識を得る機会が少ない技術系の学生にとっては、賞金よりも価値のある経験といえるのかもしれない。
ここで、昨年の最優秀賞に選ばれた技術を紹介しよう。
昨年の最優秀賞に輝いたFloDesign Wind Turbine
この風力発電機は、ジェットエンジンの技術を応用したもの。まだ実験段階にあるものの、従来型の風力発電機と比べて、2倍から3倍の出力が期待されているそうだ。
クリーンエネルギー起業賞は、チームメンバーのうち1人がアメリカの大学に在籍する学生であれば、誰でも応募できる。クリーンエネルギーに関するアイデアを温めている人は、facebook の「MIT Clean Energy Prize」グループに参加して、来年のエントリーを目指してネットワーキングしてみよう。
賞に参加しないとしても、クリーンエネルギー起業賞の最新ニュースは充分に価値がある。NSTAR(米国の大手電力・ガス供給会社) 、米国エネルギー省、BP などがスポンサーをしているこの賞は、常に市場のニーズや産業の動向を見据えているからだ。ファイナリストたちのビジネスアイデアをチェックすると、次のクリーンエネルギー技術の波が見えてくるかもしれない。
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