近頃アメリカで、体積の約60倍のCO2を吸収する、新しい化合物「ZIF-69」が発見された。
地球の温暖化対策において、CO2の削減は大きな課題である。CO2を回収するには、CO2の分子を他の分子から選別しなければならず、その技術は極めて難しいとされてきた。今までの技術では、CO2を選別するために熱が必要であり、熱を起こすにはエネルギーが必要となる。結果、CO2を選別するには、かなりのお金が掛かっていたのだ。
今回、効率の良いCO2吸収化合物「ZIF-69」が発見されたということは、今までCO2選別のために掛かっていたコストを減らすことができ、“クリーンな”火力発電がより身近になったのだとも言える。
ただし、驚異的にCO2を吸収してくれる化合物が見つかったからといって、手放しで喜ぶ訳にはいかない。スタンフォード大学の教授であるFranclin Orr氏は、その発見を「潜在的に極めて重要な発見」と言ってはいるが、CO2回収に「ZIF-69」が使われるプロセスや、その詳細の多くはまだ明らかにされていないと忠告している。
もしかしたら、「ZIF-69」を使ったCO2回収のプロセスで何か大きな問題があるかもしれないし、実際に商業的に利用するにあたってのコストが大きく掛かるかもしれない。いずれにせよ、まだまだ検証が必要な段階なのである。
問題はそれだけではない。「ZIF-69」で簡単にCO2を回収できたところで、その集めたCO2はどこに捨てるのかということも残っている。回収されたCO2は、空気中に排出すると温室効果ガスとなってしまうため、空気中以外のどこかに隔離されなければなない。今のところは地中や水中に貯留する方法がとられているが、環境や地質・水質への影響を調べるためにモニタリングしている段階であり、今後継続的に使える方法とは限らないのだ。
私たちは、
(1)地球に今起っている環境問題を解決しなければならない。
(2)その環境問題を解決するために開発・発見された方法や物質が、本当に安全で安心して使えるのか、経済的にもローコストであるかを、検証しなければならない。
根本的な問題の解決には、予測できないほど長い時間が掛かるということを自覚しなければならない。
それまでの間、風力発電や太陽光発電などのクリーンなエネルギーだけで、生活は成り立つか?
また、CO2を排出しないための、一人一人の小さな努力で、現実的な効果は間に合うのか?
さまざまな疑問が出てくるのは仕方がないが、やみくもに悲観的になったり、むやみに楽観的になることが解決方法だとは言えない。まずは、私たち一人ひとりが、現在の生活レベルから一歩踏み出して、環境問題について大きな枠組みで考えてみることが必要なのではないだろうか。