タイトルの○○○○に入る文字、そのヒントは、以下の画像にあります。
このヘンテコなたたずまい建物(?)は何を隠そう、新カリフォルニア・アカデミー・オブ・サイエンス。9月下旬に再オープンしたばかりの世界一グリーンな博物館なのだ。
Creative Commons. Some Rights Reserved. Photo by tom.demeyer
「世界一!」とアピールしているだけあって、グリーンなのはパッと見だけではない。なにしろ、この不景気の中、世界的に有名なイタリア人建築家レンゾ・ピアノに設計を依頼し、約440億円を費やして建てられた施設なのだ。いろいろありすぎて、何から紹介すればいいのか……(汗)。
まずは、もりだくさんのグリーンな特徴の中から主なものを、箇条書きで紹介しよう。
(1) 建築デザイン
・屋根に約21万キロワット時の電力量を発電する計6万PVセルを設置
・屋根を利用して9種の在来植物を育て生態的回廊を形成
・屋根に植えられた植物による断熱効果で冷暖房の需要を減少
・起伏のある屋根のデザインにより建物中央に風を通して空調の需要を減少
・天窓を含む窓の自働開閉により施設内に風を通して空調の需要を減少
・通常利用される施設スペースの約9割に日光が差し込むデザインで照明の需要を減少
・明るさを感知する光センサ付き照明器具を使用
・トイレ施設内に流水時に充電する蛇口を設置
Creative Commons. Some Rights Reserved. Photo by Benjamin Pender
(2) 建築資材
・建築資材の2割以上を施設から800メートル以内から調達
・旧施設解体時に発生した建材9割以上をリサイクルまたは再利用
・木材の半分以上をFSCの森林認証を受けた持続可能な伐採によって入手
・古いジーンズ生地を含むリサイクルされた材料を含んだ断熱材を使用
・火力発電所から出た煤やスラグを練り込んだコンクリートを使用
・低伝熱性ガラスを使用
Creative Commons. Some Rights Reserved. Photo by Derringdos
(3) 空調
・太陽からの熱を床に取り入れることにより5~10%のエネルギー需要量を削減
・換気空調施設から発生する熱を利用して暖房のためのエネルギー需要を減少
Creative Commons. Some Rights Reserved. Photo by Derringdos
(4) 水利用
・屋根に植えられた植物が年間約1,400万リットルの雨水を吸収
・便器洗浄水に再生水を使用して上水利用量を削減
・低水圧蛇口を設置して上水利用量を削減
・水族館の水を太平洋からパイプ輸送して上水利用量を削減
(5) 交通アクセス
・ロック付き自転車置き場を設置
・電気自動車の充電ステーションを設置
・スタッフに対して公共交通機関利用料金を返済
というわけで、すみずみまでグリーンな博物館なのだ。
要素が多すぎて、総合的な環境効果が把握できないが、少なくとも、消費するエネルギーの約1割までを太陽光発電でまかない、同規模の施設に比べて約3割少ないエネルギーを消費し、太陽光発電と煤・スラグ入りコンクリート使用で年間約19万キロのGHG排出量を削減する。
ずいぶん長い記事になってきたので、ここで米国テレビ番組Wired Scienceの動画を見ながらひとやすみ。
博物館のテーマは、生命の誕生とその行方。その二つについて考えるきっかけを、プラネタリウム、熱帯雨林ドーム、アフリカ展示場、水族館などが与えてくれる。展示の詳細は、画像入りフロアプランでどうそ。
それにしても、つくづく大きい博物館だなあ、と思う。それもそのはず、サンフランシスコ最大の在来植物育成地になってしまった屋根『Living Roof』の上の広さは、東京ドームの約5分の1!
せっかくのスペースなので、今後は、持続可能な社会づくりのキーワードの一つである「市民参画」の要素をとりいれて、地元住民のクリエイティブ活動の場としても活用してほしいところだ。
施設の中でも外でも生命の不思議や美しさを体験できるカリフォルニア・アカデミー・オブ・サイエンス。『Living Roof』には、鳥や虫が好んで食べる果実や花の種が多いということで、春は特に楽しめそうだ。
来年の春休みは、サンフランシスコに決まりかも?