Joan Pickは、世界で一番カーボンフットプリントの少ない人間かもしれない。Joanはどこに行くにも自分の足で走って行く。1973年から35年間、彼女は動力を使った移動手段を使わずに、ほとんど自分の足だけで移動しているのだ。
正確には、1992年からの16年間は、飛行機・電車・車などモーター系の乗り物は、ただの一度も使っていない。彼女が最後にそれらの乗り物を使ったのは、母親のお葬式で乗った霊柩車だった。
1973年、Joanはエネルギー産業にアドバイスするコンサル会社に勤めていた。当時の彼女は、この世の中のエネルギーの浪費の仕方は間違っていると確信し、人類の手本となるような「エネルギーを使わない生き方」を体現するために、電車も車も使わないと決めた。それ以来、彼女は愛車をガレージにしまい込み、どこへ行くにも自分の足で歩くか、走ってきた。
Joanは、移動時のエネルギーだけではなく、日常生活でもエネルギーを最小限に抑えるために、家では料理もしないし、ヒーターも使わない。そのため、食事は調理をしないで済む、野菜やナッツのローフードが中心。わずかにエネルギーを使うのは、お湯を沸かす時くらい。
エネルギーに関しては、徹底したストイックな生活。
でも、Joanは
私たちは、限りある地球の資源で生きて行かなければならない。そのためには、根本的に生き方を変えるしかない。
と言う。
ただし、すべての人に彼女と同じような省エネ生活を求めている訳ではない。究極的にエネルギーを使わない生活でも生きて行けることを証明するために、彼女は実験を続けているのだ。
Joanは1日に約12マイル(1マイルは約1.6093km)走る。どこへ行くにも走って行くので、彼女の1日はあっと言う間に終わってしまう。遠くに行くには走る時間が掛かるので、この35年間休暇は一度も取っていない。自分の足で移動できる範囲にしか行かないので、彼女はイギリスのあるエリアから外には出ていないというのだ。
来る日も来る日も走り続けるJoanが、1973年から走った総距離は135,415マイル以上!なんと地球5周半に相当する。
地元でも“どこへでも走って行く女”として有名なJoanは、呼び止められて「がんばって走り続けてね」とか「なんでこんなことをするの?」と声を掛けられる。彼女が走り続ける理由を説明をすると、彼らは「考えさせられますね」なんて言うけれど、それでも車に乗ったままだったりする。
いわゆる普通の感覚では、Joanの生き方は少し極端だと思うかもしれない。でも、彼女のような人が現れるほど、今の地球の状態は異常なのだとも言える。エネルギーが必要な生活をするために、エネルギーを作り出すのではなく、限りあるエネルギーでやりくりするにはどういう生活を送ればいいのか。自分たちの身の丈に合った生活とは何かを考えさせるため、彼女は警鐘を鳴らし続ける。そして、自分の人生を掛けて、これからもどこまでも走り続けるのだろう。