今年で44回目の開催を迎えた写真コンテストがある。ロンドン自然史博物館とBBCワイルドライフ誌が共催する「Wildlife Photographer of the Year」だ。
その名のとおり、野生動・植物のベスト写真を撮ったカメラマンが「今年の野生動・植物カメラマン」として選ばれるほか、特別賞、鳥類部門、哺乳類部門、ポートレート部門、白黒写真部門、ジュニア部門など、計16部門において優秀作品がそれぞれ選ばれる。入選作品は、ロンドン自然史博物館をはじめとする計14カ国の美術館・博物館にて開催される巡回展示会に出展されるだけではなく、BBCワイルドライフ誌から出版される写真集にも記載されるという注目すべきコンテストなのだ。
さて、どんな作品が選ばれたのか!?詳細は下記に。
今年の「Wildlife Photographer of the Year」に選ばれたのは、絶滅危惧種に指定されているユキヒョウの姿を写真に収めたSteve Winter氏。ユキヒョウは、防水性と断熱性に優れた美しい毛皮に覆われていて、40℃からマイナス40℃までの気温に耐えられる。Winter氏の写真は、吹雪の夜、ユキヒョウの背中で溶けることなく、ただ積もり続ける雪が印象的な写真だ。
ジュニア部門の最優秀賞作品に選ばれたのは、Catriona Parfittさんの作品。野生のキリンがライオンに追われているところを遠巻きに眺めているオリックスの後ろ姿。オリックスに自分を重ね、不思議な共感を抱くのは、私だけではないはずだ。
というわけで、今年の最優秀賞はいずれも、自然の中でのびのびと生きている野生動物の姿を収めた作品となったわけだが、入賞作品すべてが自然の美しさに焦点を当てているわけではないのがおもしろいところ。
たとえば、自然界と人間のつながりを示す写真を表彰する「ひとつの地球」部門の入賞作品。「犠牲」というタイトルの最優秀作品は、毛皮のために直火で焼かれているコロブス属のサルの顔をアップに写したショッキングな写真だ。こんな現実があるということを知ってもうためにも、一度見てみてほしい。(本当にショッキングな写真なので、見る際には心づもりの準備を!)同じ部門の次点は、グリーンランドの氷山が溶け続ける様をとらえた作品で、構図や氷の色が美しくはあるものの、地球の将来や私たち人間にたくされたミッションの大きさに不安をいだいてしまう。
「Wildlife Photographer of the Year」は、野生動物のハッとするような美しさを写真に収めた作品の出展者に贈られる賞であってほしいと思う。そのためには、野生動物が人間の活動に脅かされることのない社会を築いていく必要がある。そして、それができるのは、今この社会に生きている私たちなのだ。