ビッグイシューは1991年にロンドンで生まれた、ホームレスの社会復帰を目指して発行された雑誌だ。このビッグイシューの販売がホームレスの仕事となり、売った数だけ収入になるというわけだ。日本の創刊は2003年9月。大阪からはじまり、現在は東京・札幌・京都など日本中で販売されている。発行部数は約3万5千部で、定価は300円。一冊につき160円を販売者の収入になる。greenz読者の中には実際に購入したという人も少なくないと思うが、毎号手の込んだレベルの高い内容になっているので、まだ読んだことがないという人は販売者とのコミュニケーションを楽しみつつ、ぜひ購入してみて欲しい。
ここで間違って解釈してはいけないのは、ビッグイシューは「救済・チャリティ」ではなく「ビジネスの手法で」、「物を与える」のではなく「仕事を提供し自立を応援する」ことを目指しているということだ。
そんなビッグイシューには、サッカーチームがある。その名も「野武士ジャパン」!この野武士ジャパンが誕生する前にビッグイシューで結成されたサッカーチームが「ホームレスワールドカップ」に出場している。このことは以前、greenzでも紹介しているのでコチラからどうぞ。
この大会は、世界各国のホームレスによって作られたサッカーチームが競い合うというもの。世界的な貧困問題への意識の向上を今までとは異なる形でアピールしようというわけだ。日本でも近年問題になっているが、ヨーロッパ諸国や発展途上国では若者のホームレスが多く、ホームレスワールドカップに出場したことがきっかけで、海外サッカーチームからプロ契約を取り、新しい人生を歩む者もいるという。
コペンハーゲンで行われたホームレスワールドカップ2007の様子
2009年の開催地はミラノ。「GO TO MILANO!」と言わんばかりに誕生したのがこのチームというわけだ。2008年の1月20日に結成してから今まで、2週間に一度のペースで練習を積み重ねてきた。
サッカーなんてやる前に働けとか、そういう意見も少なからずあるのですが、彼らホームレスに必要なのは「希望」なんです。
そう語ってくれたのは、ビッグイシューのスタッフ兼この「野武士ジャパン」の練習サポート担当でもある服部広隆さん。
ホームレスになる人は、人生を前向きにとらえることが難しい人が多いのです。自己否定、人間不信などがひどくなった状態であったりもします。人を信じられなくなったということは、誰にでも一度はあることかもしれませんが、彼らが背負っているものはそれとはまた重みが違うように感じます。ビッグイシューでホームレスの方を見ていると、やっぱり前向きに考えられるようになった人から自立ができるみたいなんですよね。希望がなくなった状態であった彼らに、「何かをしたい」とか「何かを変えたい」と思ってもらうことが重要だと思っています。
そんな思いを形にしようと立ち上げたが、ビッグイシュー基金だ。ここでは一般市民や企業から基金を募り、集まったお金をサッカーをはじめとする文化活動や就労応援プログラムなど幅広くホームレスをサポートするために使用している。特に文化活動では、「野武士ジャパン」以外にも、以前greenzでも紹介したダンスチームやビッグバンドがあり、どちらも好評を博している。
練習を行っている参加者たちはみんな笑顔!ホームレスもボランティアもみんな一つになって、ボールを追いかけるのに夢中だ。
右から野武士ジャパンのメンバーである広瀬さん、佐々木さん、藤田さん。COLD PLAYが表紙の最新号が現在発売中だ。カメラを前にみなさん緊張!?
ホームレスにとって仕事を与えること以上に大切なこと。それは、明日があるという希望を持つこと。前に進む意志を持ってもらうことだ。そのために結成されたのがこの「野武士ジャパン」なのだ。
目標はもちろん、ホームレスワールドカップに行くこと!でもそれよりも、みんなが目標というものを持ってくれたら何より嬉しいですね。
さらに、
チームを支援している野武士ジャパンサポーターズには誰でも入れます。もちろん女性も。「やりたい人がいるのなら一緒にやろうよ!」というスタンスなんです。
とのこと。まずは今月28日に、反G8サミットで結成された「 RFC」との練習試合があるので、応援しに行くのはどうだろうか。ボールを蹴りながらこぼれる彼らの笑顔から希望の一つのカタチを見ることができるはずだ。