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リサイクル活動で社会復帰を目指す!

フランスのエコビレッジ、Emmaus
1949年、第二次大戦直後、多くの人が家を失い、貧困が広がる中、フランス人の僧が仮設住宅を建設したことから始まったEmmaus。現在は、社会支援の場として利用されている。

Emmausには何かしらの理由で家や仕事を失った人たちがたくさん集まってくる。ここでは、生活や教育、ワークショップを通じて、ボランティアたちの成長を促し、社会に復帰させることを目的としているのだ。つまり、巣立つための足がかりとなる場所を提供している。そのため、ホームレス出身のボランティアが多いと聞いていたが、私の滞在中は、フランス語を学んでフランスで職に就きたいという東欧や北アフリカからの若者が多く働いていた。ボランティアは滞在費と宿泊費は無料で、1か月以上働くと多少のお金がもらえる。オフィスワークをするメンバーは1名で、彼は「リーダー」と呼ばれていた。

Emmausの主な資金は「リサイクル活動」によって得ている。これは、持続可能なライフスタイルを目指す、アンチ“消費社会”への具体的なアクションでもある。ボランティアの仕事は不用品を衣服、小物、食器、家具などに仕分けることと、週2回ほど行う店頭での販売。敷地内に置かれたトラックの荷台が不要品の回収場所となっていて、町から来た人たちが次から次へと不要品を置いていく。

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トラックの荷台に不用品が集まる

私は古着の仕分けを担当した。古着がたくさんつまった袋から販売できるものとできないものを分ける。販売できないものは再び袋に入れて、その後、別の担当者がそれらを圧縮して、敷地内にある埋め立て地に廃棄する。そこにはリサイクルできなかった古着などが毎日山積みになっていく。以前は焼却されていたが、ボランティアの一人によると、一度焼却中に爆発が起きてから、焼却は禁止された。

ものすごい不用品の数
不用品の仕分けをする場所

宿泊棟の窓から見える、ゴミ袋を荷台に放り投げて去っていく人の後ろ姿と、彼らには見えない、その向こうに広がるゴミの埋め立て地。その光景を目にするたび、私は星新一氏のショートショート『おーいでてこーい』という短編を思い出すのだった。

ある日突然村に大きな穴ができる。村人たちが「おーい」と声をかけても、小石を投げても反応がないため、その穴はとても深い穴だと思われた。そのうち、村人たちがその穴に不要な物を捨てに来るようになる。生ゴミなどの一般ゴミから、人に見られては困るラブレターに放射性廃棄物までありとあらゆるものが投げ込まれた。それから数日後、工事現場の作業員の頭に空から小石が降ってくる。それはいつか村人が大きな穴に投げ入れた小石なのだが、作業員はそれに気がつかない……。

リサイクルできない不用品
ゴミになってしまう衣服
リサイクルできない衣服を圧縮してコンパクトに
敷地内にある埋め立て地

Emmausで残念だったことは、人と人とのつながりが希薄だったこと。ここから巣立ち、社会復帰することが目的だからか、ボランティアの中にはここの活動に関心のない人もいたし、リーダーはオフィスに閉じこもってばかりで、ボランティアたちとは交流しようとはしなかった。ほかのエコビレッジには当たり前のようにあった“他人との連帯感”が、ここにはあまりないように思えた。