イギリス製の虫除けって、どんなの!?
国土のほとんどが日本の稚内よりも北にあるイギリス。虫の出る印象はあまりないかもしれない。十数年イギリスに暮らしたが、実際都会のみならず水辺に行ってさえも蚊に刺されることはほとんどなかった。でもちゃんと、そこら辺の薬局で各種虫除けが売られていて、国内ではまったく不必要というわけではないが、アジア・アフリカ諸国に赴任、あるいはホリデーに行く人たちのために、虫除けスプレー、クリームなどが簡単に手に入るようになっているというわけだ。
もちろん、市販の虫除けのほとんどが「DEET(ディート)」と呼ばれる化学物質バリバリの成分を使用している。参考までに、日本で売られている多くの虫除けも、このディートが忌避成分になっているそう。従来毒性は低いとされてきたこのディートだが、最近の研究により安全性が危惧されている。特に幼児への使用は勧められていない。アメリカ衛生局や国民生活センターでも、その危険性が指摘されている。
一昨年、マラリアの危険性が比較的高い国に行くことになった。担当医に予防接種のほか、できれば非ディート系の虫除けを、ということでいろいろ教えてもらった。一日の終りにシャワーで流してもその排水が環境に及ぼす影響が低く、「赤ちゃんに塗っても大丈夫」な自然派虫除け。ドクターいわく「スプレーよりも強力で、飛散率も低いクリームを選択すべし」。
そこで、なるほどね、コレなら、と思うものをロンドンの大き目の薬局で購入した。「Mosiguard Natural」という虫除けクリームで、ヨークシャーというイギリスでもかなり北部にあり、およそ虫には縁の無さそうな地方で生産されている。そして、なんとこのクリーム、英国熱帯医学の権威であるLondon School of Hygiene and Tropical Medicine認定、推奨品なのだそう。日本円にしておよそ1850円と、安くないのもうなずける。
主成分はCitriodiolで、アロマテラピーの精油としても馴染みのあるレモン・ユーカリ(ユーカリプタス・シトリオドラ)を65%含む、とある。効能を見ると、マラリア、黄熱病のほか、日本脳炎にも効くのだそうだ。しかもナチュラル。虫の嫌がる匂いだそうだがこのレモン・ユーカリ、人間にとってはけっこういい匂いなのである。
効き目のほどは?
そのマラリアの危険性が比較的高い国に滞在した時の話だが、本当に蚊の多い国だった。予防接種してあったので実際にマラリア罹患の可能性は低かったろうが、虫刺されは気持ちのいいものではないし、寝ている間に掻き壊して皮膚だって痛むかもしれない。滞在中、ビーガン(ベジタリアン)の友人は、自然派ものでさえ“虫除け”を使うことを拒んでいた。その友人の、全身虫刺されに覆われた様を見て「この虫除けクリーム本当にいい買い物だったなあ」と、しみじみ思ったものである。
今東京で住んでいる部屋は地上2階だが、虫はほとんど来ない。イギリスの虫除けクリームも爾来使う機会はなさそうだったが、図らずもgreenzオフィスで大活躍することになった。ここのオフィス、地上1階だし、けっこう来るのよ、蚊が。
午後の、「そろそろ蚊が来る時間かな?」に、そこはかとなくさわやかな芳香。子供にも安心の素材で、顔に塗ることだってできる。「って、顔には塗らないでしょう、フツー」とか思いませんでしたか? ここgreenzオフィスでも、顔を刺されたスタッフは一人ではないのですよ。
「で、実際効くの?」
はい、効きます。かなり。一度の塗布で5〜6時間程度効能が持続し、97%の防虫効果というデータもある。塗ったところはまず刺されない。逆に、刺されたところは塗り忘れていた部分だったりして、まさに“虫除けの耳なし芳一”状態になってしまうことすらある。ちなみに、ユーカリ・レモンオイルの蚊が嫌う有効成分はp-menthane-3,8-diol(PMD、和名:p-メンタン-3,8-ジオール)というのだそうで、優しめのメントールのような作用がある。本来の使い方ではないが、刺された跡に塗ってもスーッとして気持ち良かったりもする。
と、いいこと尽くめのようだが、このMosiguard、唯一難点といえば若干値が張ることだろうか。また、現時点では日本国内での販売は予定されていない。
東京のような都会であっても、夏になると蚊には刺されるもの。非科学物質でできている虫除けも、最近ではいろいろな種類がある。煙に有毒性の指摘されている某社蚊取り線香よりも、虫の嫌がる匂いをまとうことで蚊に刺されにくくするのはいかがだろうか?
Mosiguard
http://www.mosiguard.com/