ISSUE ☆日本と世界のソーシャルデザイン

8 months ago - 2015.12.18

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クリエイティブなまちを、僕らがつくる。アイデアソン参加者を募集している渋谷のまちづくりプロジェクト「リブシブ賞」座談会

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渋谷宮下町リアルティ株式会社のまちづくり「渋谷宮下町計画」の工事現場にて。向かって右から、水口さん、小野、宇田川さん

みなさん、「まちづくりに参加したい!」と思ったことはありますか?

まちが変わると、個人の働き方や住み方が変わります。自分の暮らしを豊かにする可能性が、まちづくりには詰まっていますよね。

そんなまちづくりの一つに、渋谷宮下町リアルティ株式会社(東京急行電鉄株式会社、大成建設株式会社、サッポロ不動産開発株式会社、東急建設株式会社が本事業のために設立した会社)が取り組む「渋谷宮下町計画」があります。今「住む渋谷のデザイン」をテーマにしたコンペティション「リブシブ賞」を公募中のまちづくりプロジェクトです。

リブシブ賞は、未来の居住者になるかもしれないクリエイティブな人たちと一緒にコレクティブハウスをつくりたいという想いで企画されました。

そこで今回、リブシブ賞を共催する東京急行電鉄株式会社(以下、東急)の水口貴尋さんと、リブシブ賞を一緒に盛り上げるBAUMの宇田川裕喜さん、グリーンズの小野裕之による座談会をお届けします。

渋谷宮下町計画やリブシブ賞の説明を超えて、クリエイターの新しい働き方、まちに文化が生まれる仕組みが話題にのぼった、知的好奇心をくすぐる内容です。
 
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2015年3月30日から工事が着手された。以前、アパートが建っていた跡地に建設される

クリエイティブな拠点ってなんだろう?

小野 まず東急さんが渋谷区宮下町に新しくビルを建てる「渋谷宮下町計画」を始めたきっかけを、改めて教えてもらえますか?

水口さん 4年前、東京都の公募に応募したことをきっかけにスタートしました。公募内容に「クリエイティブな交流・育成・発信の拠点をつくってほしい」というような項目があり、渋谷でこのお題なら「うちが手を挙げない手はない」と検討をはじめました。

そこでまず、そもそも「クリエイティブな拠点ってなんだろう?」ということから考えました。当社は「渋谷をエンターテインメントシティにしたい」「IT系企業の集積地をつくりたい」というテーマを掲げてきたので、そのテーマとつながったんです。

小野 「エンターテインメントシティ」「IT集積地」というテーマを通して見た、渋谷の現状と課題をどう考えていますか?

水口さん 1990年代後半、渋谷がビットバレーと呼ばれた頃、渋谷にはIT系の面白い会社が集まっていました。ただ、渋谷は彼らの受け皿になりきれず、他のまちに移っていってしまった。もう1回、渋谷に戻ってきて、盛り上げてほしいと思っています。

また、渋谷のまちの特徴に目を向けると「多様性」が考えられます。その多様性が今後も維持されるよう、ニューヨークのようにエンターテインメント要素を詰め込んで、いろんな人が渋谷に集まる状況をつくっていきたいです。
 
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東京急行電鉄株式会社 都市創造本部 開発事業部 渋谷開発二部の水口さん

クリエイターの活動拠点が潜むエリア

小野 宇田川くんにとって、渋谷はどんなまちですか?

宇田川さん 「ザ・集積地」という感じはしないけど、クリエイターがいっぱいいるイメージはあるかな。STREAMER COFFEE COMPANYやON THE CORNER NO.8 BEAR PONDの周辺にある雑居ビルには、うじゃうじゃクリエイターの事務所が入っていて、打ち合わせでよく行くイメージ。潜んでいる感じがあるよね。

あと、10代の頃に通っていた高校が外苑前にあったから、帰り道によく通った場所。渋谷駅まで歩いてた、女の子と。

小野 ははは! 本当に?

宇田川さん ひとりでは歩かないでしょう。1990年代後半はマガジンハウスの『relax』のような雑誌の全盛期で、載っている人たちが渋谷にいた。キャットストリート沿いに深澤直人さんのオフィスがあって(あっ、いる…!)とか。

格好良いクリエイターにたびたび会える、刺激を受けやすいエリアだったかな。
 
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社会や企業の課題を解決するための場を生む会社「BAUM」宇田川さん

一方的に建てない複合施設のつくりかた

小野 そんな背景を踏まえて、渋谷宮下町計画の概要を教えていただけますか?

水口さん ハードの話をすると、どうすれば、クリエイティブな発信ができる施設になるかを考えて、店舗、オフィス、シェアオフィス、80戸の賃貸住宅などが集まる複合施設を建設します。

ただ、デベロッパーが一方的に「建てたので、使ってください」と言ってもダメなんです。だから、施設を使ってもらうクリエイティブな人たちに関わってもらうことを意識しています。

また、いかにつくり込み過ぎないかも大事にしています。デザイン的に言えば「余白を残す」。ハードだけでなく、使われ方や運営の仕方にも余白を残していきたいと思っています。

「飛んだ発想」を生むためにMBAも学ぶこと

小野 日本のまちづくりでは「地域振興」と「クリエイティブ産業振興」というふたつの大きな流れがあると思うんだけど、今のクリエイティブ産業の振興について宇田川くんはどう感じていますか?

宇田川さん そうだなぁ…。需要も供給も形が変わってきていると思う。他国の話であれだけど、例えばアメリカならMBAの人たちがデザインの授業を受けるようになってきていたりする。

今までのビジネスの進め方だと、ゼロイチの部分がプラスチックというか、やり方が決まりすぎていて「飛んだ発想」が生まれづらくなった。MBAの人もそれはダメだと気づいてきたようで、デザインスクールにMBA向けの授業が広がってきているよ。

プロジェクトの初期からクリエイターが入ることは、日本ではまだそんなに多くないけど、草の根的に若い人たちが新しいやり方を生み出そうとしているよね。例えばただロゴをつくるだけじゃなくて、構想段階から関わるチャンスが増えたし、入っていける人材も増えたと思う。

だから、フリーランスや小さな会社が成立しやすくなっているよね。

小野 ぼくらもそういう仕事は増えていて、いきなりデザイナーを同席させると「えっ!?」ってなるから、ワークショップを使うようにしてる。ワークショップなら多様な意見を取り入れる場だから、デザイナーが参加していても「うん、自然だね」という感じになるから。

「こうすれば儲かります」ということではなく、複雑な時代になってきているから、みんなでやらなきゃいけない時にフラットな関係性を築くことができる、とても良い流れが生まれてきているよね。
 
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“ほしい未来”をつくるためのヒントを発信するウェブマガジン「greenz.jp」の小野

「住まい方」を変えるために必要だったこと

小野 水口さんはさきほど、クリエイターと一緒につくるために「余白を残す」とおっしゃいましたが、その象徴になるリブシブ賞で「住む渋谷のデザイン」をテーマにした理由はありますか?

水口さん わたしたちは実際の住まい手ではないから、実際に住んでほしいクリエイティブな人からどんなハードが必要か提案してほしかったんです。

小野 実際、ぼくらも東急さんから声をかけていただいてリブシブ賞に関わっているのですが、最初は意外なお声がけだなと思いました。グリーンズは、住宅のコンペを請け負う会社ではないですし。

水口さん ハードだけでなく「住まい方」も変わっていかなきゃいけないと思ったんです。だとすると、建築デザイナー以外のクリエイティブな人たちにもリブシブ賞を知ってほしかった。グリーンズなら、そんな人たちにアプローチできるんじゃないかと思いました。

リブシブ賞のPRを依頼したのがスタートですよね。

小野 そのお声がけに対して、ぼくが最初にした質問が「なぜ渋谷に高いビルを建てる必要があるんですか?」ということでしたよね。
 
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渋谷宮下町計画で建設予定の複合施設の模型

なぜ渋谷に高いビルを建てる必要があるのか?

小野 ビルを建てる理由を聞いたのは、それが「お金があるから、もう少し稼ぎたい」という動機なら、参加型でつくる大義を感じないと思ったからなんです。

水口さん 少し補足しますと、経済ベースで考えても、高層ビルを建てることで仕組みとして何かできる余白を生み出せるということはあるんですよ。だから、必ずしも高いビルを建てることは悪いわけじゃないんです。

結果として、余白が生まれることにつながるという想いがこめられています。

小野 そうですよね。最近は「田舎を盛り上げる」というテーマに注目が集まっていますが、それは都市が魅力的になることとトレードオフの関係ではないと、ぼくは思っています。だから、日本の都市が魅力的になってチャレンジできるまちになることは良いことだなと思いました。

グリーンズ的な言葉で表現すると「社会的な課題解決の旗振り役になれるまち」は、東京都の中でも数少ない。そのひとつが渋谷なんじゃないか。

だから、今回のこの渋谷宮下町計画は、東急さんをはじめとした事業者だけのチャレンジじゃなくて、日本が抱える難しい課題に渋谷がチャレンジしていると表明してもいいんじゃないか。そこまでいけば、手伝いたくなるというか「ぼくの才能を使ってください」とリブシブ賞に応募したくなる人が現れると思うんです。

グリーンズは、アンチ資本主義に見立てられがちなので、このような機会は少ないんですね。でも「田舎へ戻ろう」だけがすべての人への解だとは思っていません。だからリブシブ賞は、ぼくらにとってもとてもチャレンジングな取り組みです。
 
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まちに文化が生まれる理由

小野 宇田川くんはリブシブ賞のテーマが「住む渋谷のデザイン」だと聞いた時、どんな印象を持った?

宇田川さん シェアハウスをパッとつくらずに、アイデアを募集するというのは面白いと思いました。

ぼくが渋谷を格好良いと思っていたのは、昔、そこに住んでいる人たちが格好良かったから。「こんなところに住んでいる人たちがいるんだ」「デザインがいろいろスゴイ!」という、すぐそこにあるパリとかNYみたいな感じがしていたんだよね。

ただ特にここ数年は、買い物をするだけなら、原宿でもどこかのまちにある商業施設でも買えるものはあまり変わらなくなってきた。昔はここにしかない場があって、渋谷には文化をつくる人たちが住んでいた。昔、渋谷はそういうエリアを持っているまちだった。

失われたのはこの10年くらいのもので、それが観光地としての成熟なのか、経済原理によってなのかはわからないけどそうなった。でも、それを押し返す意味で住み方をデザインすることに意味はあると思うよ。
 
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小野 「文化をつくる人たち」というのは?

宇田川さん ファッションもそう。デザインや映画もそう。クリエイターやアーティスト、その人たちって一人ひとりがオリジナルなんだけど、全体として時代の匂いを醸しているというか。昔あった「渋谷系」なんてまさにそう。

小野 確かに「渋谷系」は本人たちが名乗っているわけじゃきっとなかったんだろうけど、方向性が似通っていて、一緒にいるとシナジーが生まれて、文化になったんだろうね。

今はオンラインの文化が豊かになって、まちよりネットでつながったほうが自由な感じになっているのかもしれない。まちとの接続詞が失われていて、ちょっと管理主義的なまちづくりが大きくなっていってしまったというか。

水口さん まちも、開発が周りとつながろうとしているのか、実際はわかりませんよね。ハード上、境界をしっかりつくって「ここにお城が建ちました」というビルになっていることも多い。渋谷は、そうならないようにしていきたいです。

デベロッパーを含めて、まちとつながるマインドを持つようにしておきたいですね。
 
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住み継ぐために必要なこと

小野 そんな「住む渋谷のデザイン」をテーマにしたリブシブ賞では、12月26日に一度、応募者とぼくらで目線を合わせるワークショップを開催できたらなとも思っています。

呼びかけ人として、東急さんはリブシブ賞にどんなアイデアが集まることを期待していますか?

水口さん わかりやすいところでは、人がつながって何かが醸し出される、住む人たちがゆるくつながれるアイデアを待っています。

もう一つは、いわゆる賃貸住宅だと住み替えの際に原状回復してしまって、人が住んでいた生活文化はリセットされて継承されないんですが、それとは異なる、生活文化の過去と未来をつなげるアイデアもほしいです。

小野 なるほど。住み継ぐということが、ファンタジーではなく、感情的でもなく、合理性を伴って語られていくと文化になっていきそうですよね。

最近はITベンチャーがオフィスを変える時に「使いたい人いない? 大家さん良い人だよ」と呼びかけている光景をSNSでよく見ます。大家さんが良いと、場所を自由に使わせてもらえたり、信頼関係を担保にしてセキュリティを甘くしてもらえたりする。それが働きやすさにつながるんです。

日本のITベンチャーも、シリコンバレーに憧れを持っている人は多いと思うので「次にバトンを渡さなきゃ」と思っている人は多いかもしれない。もしかしたら、住み継ぐことができていないから、渋谷を弱くなっていっているのかもしれませんね。
 
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渋谷宮下町計画のビル模型。1階は緑の多い開かれた空間

暮らしのヒントが芽生えるところ

小野 宇田川くんは、「リブシブ賞」でどんなアイデアを期待しますか?

宇田川さん まちとの接点や関わらせ方が勝手に走っていく構造というか、そんな提案があるといいんじゃないかな。面白そうだと思っても、人は億劫になりがち。そんな時、背中を押す仕組みやタイミングが用意できるといいよね。

小野 ぼくは、暮らしのヒントは暮らし手の中に眠っていると思う。自分の暮らしの小さなこだわりに、もっとこだわることができるようになれば人は勝手に動くのかもしれない。新しいこだわりをインストールすればカンフル剤にはなるけど、日常にまで落ちてこないから。

水口さん あとはサロンのようになったらいいなと思っています。

小野 「サロンのような」というのは?

水口さん 例えば、ある業界の人がよく集まるとか。自然発生的に、ある種の人たちが集まっていて、そこに行けば誰かと会えて、何かが生まれる。単純に仲間がいるから面白いと感じるのでもいい。そんなサロンのような空間に「リブシブ賞」でアイデアを募るコレクティブハウスが育ってくれたらいいなと思っています。

だから、ふつうの住宅ではない、違う切り口でデベロッパーの尻を叩いてくれると嬉しいです。しんどくもなりそうですが(笑)

小野&宇田川 ははは!
 
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水口さん でも「クリエイターはシャイだ」という話もありますよね。だから、あんまり好きこのんでそういう場所を求めていない部分もあるのかもしれません。

宇田川さん ただ、人間の本能として「集いたい」という気持ちはありますよ。シャイだけど、人が嫌いなわけじゃないですから。

だからシャイな人でもふつうにしゃべることができる状況をどうつくるのか。どう壁を取り払うのか。それは内装の話なのか、お酒の力なのか、ファシリテーションをする人なのか。そういうことかもしれませんね。

小野 ぼくの体験でいうと、世田谷ものづくり学校の学び場に通っていたことがあって、その卒業生が渋谷で活躍しているんですね。国連大学前のFarmer’s Market@UNUや表参道のCOMMUNE 246に行けば誰かに会えるんです。

違う知人と行っても、そこで会った他の人と話し込んでしまうというか。そういう場所の中心にあるものが何なのかを考えると、答えっぽいものが見えてくるのかもしれません。
 
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(対談ここまで)

「リブシブ賞」座談会、いかがでしたか?

人と人がつながり、文化を醸し出すアイデア。住み継ぐことを実現して、過去と現在と未来をつなげるアイデア。それは、みなさんのような暮らし手の中にヒントが隠されているのかもしれません。

ピンときたアイデアは、熱いうちに打て! リブシブ賞は、みなさんからの応募をお待ちしています。まずはリブシブ賞の募集要項を見てみませんか? 12月26日のワークショップで会える日を楽しみにしています!

[sponsored by 渋谷宮下町リアルティ株式会社]

12/26(土)「リブシブ賞」のワークショップを開催します!
渋谷が、やろう。住む渋谷をデザインするワークショップを開催! powered by リブシブ賞

writer ライターリスト

新井作文店

新井作文店

greenz シニアライター 日野三中〜日野高〜日本大学芸術学部(文芸学科)卒。白夜書房『中学・高校バスケットボール』出身。東京都杉並区在住。1983年9月生まれ 近著『サッカーのスゴイ話』(ポプラポケット文庫)発売中

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