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2 years ago - 2014.05.07

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木を活かし、東京の森と林業を守る!次の世代のため「SMALL WOOD TOKYO」に取り組む沖倉製材所

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SMALL WOOD TOKYO」は、東京の多摩地区に広がる森と、右肩下がりになってしまった林業を再生するために奮闘する有限会社 沖倉製材所合同会社++(たすたす)との共同プロジェクト。

前回はリトルトーキョーに新オープンするワークショップスペースに、無垢材から作られたフローリングを敷き、以前とは比べものにならないくらいに明るくて気持ちよい空間になりました。(前回の記事は、こちら。

日本は国土の7割が森という緑豊かな国ですが、「SMALL WOOD TOKYO」の取り組みを通じて見えてきたのは、戦後復興の時代以降、伐採されている国産材が使われず、林業の衰退と手入れされない森が増え続けているという危機的な状況です。

今回は東京の森の現状についてさらに詳しく知るため、虎ノ門のリトルトーキョーを飛び出し、東京都あきる野市の沖倉製材所に行ってきました。

植えられた木が使われず、森と林業が衰退


東京の森と林業の再生に取り組む沖倉製材所の沖倉喜彦さん。

都心から電車で西へ。時間とともに車窓の風景がビル街から徐々に鮮やかな緑に移り変わる様子を眺めながらの約90分。迎えてくれたのは沖倉喜彦さん。昭和25年から続く沖倉製材所の2代目です。

幼いころから製材所を遊び場にしていた沖倉さんにとって、木と触れ合い、森の美しさを体全体で感じながら育ったのはとても自然なことでした。その東京の森が、戦後の復興需要を経て危機を迎えています。 

約50年前、国策としてスギとヒノキがたくさん植えられたのに、現在国産材はあまり使われていません。植林しても木が使えるまでに育つのは何十年も後のことなので、その間の戦後復興需要で木材の輸入が自由化され、輸入材との価格勝負になることで国内の林業が衰退してしまいました。

最盛期には東京にも500軒以上の製材所があったのが、今ではわずか18軒程度。出回っている木材も、もっとも多い頃にはその80%以上が輸入材だったほどです。

手頃な価格で流通する輸入材に押され、相対的に高くなっていく国産材。そのためにますます輸入材が入ってくるという悪循環から抜け出せずにいる、森と林業の実情。

気候風土に合った国産材は、丁寧に長く使える

しかし、輸入材ではなく、わたしたちご先祖さまが植えてくれた身近な木を使うこと。これには大きな意味があります。
 

加工される“SMALL WOOD”。もちろん東京で伐られた多摩産材。

切ってから10年間置いておいたものでも、東京の多摩産材は真ん中の成熟部分がほとんど腐らないんです。

日本で育ち、気候風土に合っているから地場の適合能力があり、腐らない。近くで育った木を使うというのはそれだけ意味があるんです。これに匹敵するものは輸入材では無いでしょうね。

いろいろな食べ物を食べられるようになっても、最終的には気候風土に育まれた日本食がわたしたちの体に合うように、生き物である木も環境に調和して育つのだそう。このため、わたしたちの住む近くの木から作られた製品は、長く丁寧に使うことができるのです。

また、「後世の人たちのために」と昔の人たちが植えてくれた木をありがたく使わせていただくことも、世代を超えて思いのバトンを受け取ることにもなるでしょう。

「伐られた木をどう生かすのか。それが我々の仕事。」


作業場では木のことを知り尽くした職人が働いていた。

そして、東京都ではさらに、平成18年から始まった、花粉の出る木を切って花粉の出ない木に植え替えるという花粉対策事業が森へ大きな影響を及ぼしているそう。

花粉対策事業の目的は、文字通り、材を流通させることでなく花粉を減らすこと。このため、材となる木の質を見極めて伐採するということが減ってしまいました。

結果、手入れされていない木が以前よりも市場に多く出回るようになったんです。

一般的に木は、枝打ち(木の成長に応じて枝を切り落とすこと)などの手入れをすることによって成長がゆるやかになり、年輪密度も詰まっていくことで良材となります。しかし、手入れされていない木は生育だけが早くなり、強度の弱い材になってしまうのだそうです。
 

現実として、あまり手入れされていない木がたくさん切られているのは事実です。でも、材なりの活かし方が必ずあるはずだと思うんです。これらをどう活かすかということこそがわたしたちの仕事。「SMALL WOOD TOKYO」の取組みは、その一貫としてスタートしたんです。


左の手入れされている木は年輪密度が詰まり強度が強い。右の木は手入れされておらず年輪密度が詰まっていない。


職人の手仕事の伝承にも力を入れている。菜央さんも穴の空いてしまった節を枝で埋めてみた。

沖倉製材所は、価格のつきにくいこうした木(=SMALL WOOD)にも適正価格を付けて買い取ることで業界全体を支え、そして木を活かすということにかけてものづくりをしています。

「SMALL WOOD TOKYO」の製品「敷くだけフローリング」も、本来なら3m以上ある木材でないとフローリングにならないところを、短い木でも製品になるように活かしたものです。

SMALL WOODのような木を生活の中でもっと使ってもらうことが、森と林業にとってプラスになることだと思い、沖倉製材所でも以前から同様の取組みをしていたんです。でも、合同会社++(たすたす)と組むことで自分たちだけの発信では届かない人にもメッセージを届けられるようになりました。

SMALL WOODの背景となる東京の森のことについて知ってもらい、理解してくれた人が選んでくれるというのはやはりうれしいですね。

次の世代のため、木の魅力を地道に伝えていく


製材所の2階にあるワークショップスペース。ここから東京の森の現状について伝えている。

沖倉製材所でも、2011年から「森の再生塾」と題したワークショップを立ち上げ、伝えるということにも力を入れています。

塾では、手入れされた良材のことがよくわかる“年輪数えワークショップ”や、木で作られたものに囲まれて暮らす心地よさを伝えているそう。

昔に比べて木製の製品を使う人が減り、多くの人が木のことも森のこともを知らなくなってきました。木は使ってみてはじめて良さがわかってくるもの。でも、まずはその魅力について知らなければ手に取ってもらえることもありません。

だからわたしたちは健全な森を次の世代に引継ぐため、“伝えること”を大切にしているんです。

森の未来という遠くを見ながらも、地道な活動を通して木の良さを知る人の裾野を広げていこうとする沖倉さん。

何代も前の人が植えてくれて、たまたまわたしたちの世代が使わせてもらっている木。せっかく植えてくれた木を、接着剤を使った集成材のようなものだけでなく、無垢材からいろいろなものが作れるっていうことを伝えていきたいですね。

東京の製材所はものすごく減ったものの、わたしたちのようなところが踏ん張って、残っていかなくてはと思っています。ここが続いていくことによって、伝える場としても機能することができる。無くなってしまうと、みなさんに伝える場所自体も減ってしまいますから。

その言葉の一つひとつからは、森へ対する深い愛情を感じます。

沖倉さんはまた、「森がしっかりと手入れされていなければ、山崩れが起きたり、保水力が無くなるために洪水の原因になったり、さらには森の生態系が崩れてしまうこともある」とも話してくれました。

10年後、20年後、あるいは100年後、東京の森はどうなっているでしょうか。未来は今のわたしたちの行動にかかっています。

でも、もしかすると昔の人がきっとそうだったように、シンプルに気持ちよく、木に囲まれた生活を選択すること。ただそれだけで、森の未来は今よりもずっと明るくなるのではないでしょうか。

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磯木 淳寛

磯木 淳寛

greenz シニアライター 食と地域を耕す編集者/プランニングディレクター 自然と共生する価値観と地域の可能性をテーマに取材・執筆・企画。2013年から現場に身を投じるべく、海と里山のある千葉県いすみ市に在住。地域の営みを観察し未来をつくる書き手を増やすための合宿型ライター・イン・レジデンス「ローカルライト-地域の物語を編む4日間」を主宰し、全国で開催中。※参加者の原稿はgreenz.jpをはじめ、いくつかの媒体でも掲載されています(開催地域も常時募集中)。石巻市復興まちづくり情報交流館コンテンツ編集デスク。 ライターとしての執筆媒体は、ソトコト、Be-Pal、NORAH、季刊自然栽培ほか。季刊自然栽培「見えないものを見る」連載中。 グリーンズではスクールのファシリテーターも努めています。 【Facebook】磯木淳寛 【WEB】SLOW MODERN FOOD ■『“地方で書いて暮らす”を学ぶ4日間』FBページ ■ライター・イン・レジデンス『ローカルライト』

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